第3話 やっぱり運営はクソ

3話


 『Re:World Online』がリリースされてからおよそ一ヶ月が経った。

 他のプレイヤーがレベル上げに勤しみ、ついに20Lvを突破して新しいスキルを手に入れる事が出来たとか何とか言ってる中で、俺は例に漏れず金稼ぎを続けていた。


 NPCを通さずに直接他のプレイヤーと取引をするというのは俺の金稼ぎの効率を飛躍的に向上させた


 俺は大体数日に一回ショップに来て薬草を販売する。

 その為、日々薬草をよく使う人達はその日を狙ってここに張り込み、大量に薬草を買っていったりしていた。

 それにより、俺の1日の稼ぎは単純に20倍、移動によるタイムロスも減った為更に増え、大体1万リル程稼げるようになっていた。


 こうなると俺の真似をしだすプレイヤーも出てきた。

 しかし、俺と同じような《採取師》の職業を持つプレイヤーが少ない事や、ステータスの補正が無く他のプレイヤーに遅れをとるとしてもまだモンスターを討伐していた方がマシだと思いそっちへとシフトする人達が増え、それにより薬草の格安販売は俺の専売特許となった。


 いやぁ、楽しいわ、このゲーム。

 ただ…………一つ気づいたことがある。


 それは、このゲームの運営はちゃんとクソだという事だ。

 それは薬草があんな値段だった事から分かりきったことではあったが、今回の事で確信した。


 このゲームでスキルのレベルを上げる方法は一般的には1つしかない。

 それは、特定のモンスターから低確率で手に入る上げたいスキルに対応したスキルオーブというものを使用するという事だ。


 例えば、【剣術】のスキルを上げたいのであれば【剣術】のスキルオーブを、【薬草採取】のスキルを上げたいのであれば【薬草採取】のスキルオーブを使う必要がある。

 俺のステータスでモンスターと戦うなんて無謀にも程があるし、そんな事をする気もない。

 しかし、他のプレイヤーから買おうにも、俺が持つスキルのオーブを落とすモンスターは毒などの搦手を使ってくるらしく、討伐難易度が高いのにも関わらず、スキルオーブ以外のドロップアイテムもしょぼく、更に自身のレベルアップの為に必要な経験値も少ない、ということで好き好んで討伐をする物好きは居ない。

 その為、手に入れる事が困難であった。

 

 その為、俺はそのスキルオーブとやらを仕方が無くNPCから購入する事にしたのだ。

 NPCからものを買うというのははっきり言って嫌でしかないが、背に腹はかえられない。


 そういうことで泣く泣く俺がいつも薬草を売ってる真横で顔色一つ変えずに突っ立っているNPCに話しかけた。

 …………そして、そこに書かれている表示に俺は絶句する事となる。

 


・【疲労軽減】×1《10,000リル》



 まぁ、わかる。



・【薬草採取】×1《1,000,000リル》


 

 は?



・【素材鑑定】×1《100,000,000リル》



 は?




 さて、この事からもう分かるだろう。

 うん、多分運営共は俺に喧嘩を売っている。

 いやまぁ、分かるよ? レアアイテムがかなりの高値で取引させるのは当たり前だ。

 うん、だけどこれは…………


 どれくらいやばいかって言うと、参考までに【剣術】のスキルオーブの値段を挙げると…………。



・【剣術】×1《5,000リル》



 これだ。


 うん、どうしてこうなった?

 おかしいってレベルじゃなくないか?


 【剣術】は割と汎用性の高い戦闘用スキルで、筋力などのステータスへの補正や、剣を使用する技能が高まったりするスキルだ。

 《戦士》などの物理で戦う戦闘職ならば大体が取れるスキルなだけあってそこまで莫大な能力を備えている訳では無いが、まぁまぁ使えるスキルである。

 

 さて、それに加えて【素材鑑定】は? えっと……何倍だこれ…………2万倍?

 はぁ? 頭おかしいんじゃねえの?


 まぁ、まぁ、一旦落ち着こう。

 ここでこのNPCに向かって拳を振り下ろしたところで何も変わらない、というか多分負ける。


 運営からしても金になるのは戦闘職だということは分かっている。

 モンスターを倒すと獲得できるドロップアイテム、その中でも魔石と言われるものは現実世界の金にすることが出来るのだ。


 この世界から現実世界へと物を直接運ぶという事は出来ない。

 しかし、エネルギーを運ぶことは出来る。

 そして、そのエネルギーを作る手段というのが魔石なのだ。


 だから、運営は出来る限りモンスターを討伐して欲しいという事なのだろう。

 結局の所、運営からしても戦闘職以外は要らない子って訳だ。


 …………だからなんだって話なんだけどな。


 どれだけ運営がクソだろうと、俺がやる事は変わらない。

 作業を続けるだけだ。

 とはいえ、作業効率を上げられるのであれば上げたい。

 NPCからスキルオーブを買うのは少し現実的では無い。

 

 スキルのレベルアップに使うオーブの数は上げるレベル事に倍になっていく。

 スキルレベルの上限が分からないのでなんとも言えないが、少なくともスキルレベルを10にまで上げようとすると使用するスキルオーブの数は512個、512億リルかかる計算になる。


 永遠と作業を続ければこの境地にも至ることが出来るかもしれないが、普通に考えれば不可能だろう。

 となると、何とかスキルオーブを安く仕入なければいけない。


 ま、やることは決まってるんだけどな。

 やる事は薬草の時と同じだ。

 俺はNPCに薬草を安く買い叩かれるくらいなら他のプレイヤーに直接売った方が良いと考え、それを実行に移した。

 つまり、それの逆をすればいいのだ。


 スキルオーブのプレイヤー間取引は前々から行われてはいる。

 しかし、俺の持っているような戦闘職ではまず所得しないようなスキルオーブはそんな面倒な事はせずにそのままNPCに売り払われてしまうことが殆どだろう。


 俺はまた紙を書い、そこにこう書いた。



 【疲労軽減】のスキルオーブ、高価買取致します



 こうしていつも通りショップに立っていれば俺の求めるものは自ずからやってくるだろう。


 ショップ内を見渡すと、俺の方をチラチラと見る数人のプレイヤーが居た。

 俺が薬草を売り始めるのを待っているのだろう。

 普通に話しかければすぐに売り始めるというのに、変な奴らだ。


 まぁ、いいさ、買ってくれるんだったらなんでもいい、ついでにスキルオーブも売ってくれ。


 そんな思惑を持ちながらいつも通りNPCの横に立つ。

 他のプレイヤーからも見やすいように少し前に台を買ったため、前よりは幾分か話しやすくなっている。


 俺がそこに立つと同時にさっきまで少し距離をとっていたプレイヤー達が次々と俺の周りに集まり始める。


「薬草50個ください」

「まいどー」


 これだけでもかなりの収益になる。

 いつもならこれで終わりだが、それと追加で今回はスキルオーブについても打診しようと思う。


 俺はそいつらにスキルオーブについて聞いてみた。


 …………だが、結果はあまりよろしいものとは言えなかった。


「え、あ、俺、薬師だから…………スキルオーブは持ってない……かな」

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