3-3

「当時はやんちゃだったから、すぐに罰ゲームしたがったんだよな」

罰ゲームはいつも一番の友人がやっていた。

「あいつは少しどんくさかったからな。いつも楽しそうに罰ゲームをしていたっけ」

くっくっと喉の奥からこみ上げる笑いを隠すこと無く、彼は楽しそうに笑った。

エスカレーターのおかげで楽しい思い出が勝手に流れていく。

振り返りたくもなるし、戻りたくもなる。

反対にこの先はどのような思い出があるのかとわくわくし、歩いて行きたい衝動にも駆られる。

しかし、歩くことも走ることも逆走することもエスカレーターでは禁止事項だ。

彼は愉快な気持ちのまま、次の思い出を楽しみに前を向いた。


そこは彼が知っている景色ではなかった。


知らない街並み。

暗く街灯だけが照らすその道を一番の友人が静かに歩いていた。

服装からして学校を卒業した後、地方の大学へ行くために引っ越した先だろう。

「あっ母さん?うん、元気だよ」

歩いたその先、住んでいるだろう建物の一室に入ると、一番の友人は明るい声で実家へと電話をかけた。

「うん。ありがとう。ごめんね、勝手に遠くの大学行きたいとか言ったのに」

床に座り、小さい冷蔵庫から飲み物を取り出すと一番の友人はほっとしたように肩の力を抜いた。

「連絡先聞かれたんだ?どうだった?・・・そっか。適当に誤魔化してくれたんだ。ありがとう」

飲み物を一口、喉を潤せるようにゆっくりと飲み込んでいく。

ひやりとした感覚が喉を過ぎ、お腹の中でぬるくなっていくのを感じながら一番の友人は初めて無表情になった。

電話を切り、机に置かれたノートを数冊、無造作に開いていく。

そこには中学入学当時から高校卒業までの日々を書き綴っていた。


全裸で走らされた、力任せに撫でられ擦り傷ができた、また宿題を代行させられた・・・。

掃除当番を押しつけられた、家に遊びにこられたついでにお小遣いを持っていかれた・・・。

「このどれもが遊びなんだよなー」

ぽつりとそう呟くと一番の友人はノートを床に叩きつけた。

彼と友人達から離れた場所にいるというのに、すぐ側で笑い声が木霊し日々の地獄が迫っているような感覚に陥ってしまう。

「あんな地獄から離れたくて遠くに来たのに」

心が囚われ、感覚が抜け出せず、凶器じみた笑みを浮かべる彼が恐ろしい。

「二度と会いたくもない・・・何が友人だ」


都合の良いサンドバッグの間違いだろ


叫びそうな表情で叫ばず呟く一番の友人の瞳は暗く沈んでいた。

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