第5話 ?????
ダイイングメッセージのことを解決させたあなたは、今度こそ指紋とDNAの隠滅に動き出した。
夏生の家に上がった痕跡を次々と消し去っていく。自分が触れてもおかしくないようなあらゆる物体を掃除する。風呂の排水口に至るまで。可能な限り、入念に。
と、そこであなたははたと気づく。
――夏生の家族構成を何一つ知らないことに。いつ誰が帰ってくるか分かったものではない。
その恐怖はだんだん現実感を帯び、心の澱となってゆく。冷や汗が背中を伝う。
いや、冷静になれ。そうあなたは自身を鼓舞する。
夏生が特に抵抗なく家に招き入れてくれたのは、家族がしばらく帰ってこないからではないか。
その可能性は高い気がしてきたが、絶対とは言えない以上一秒でも早くこの場から逃げ出さなければならない。
あなたは作業を急いだ。
結局一時間以上掛け、家具からキッチン用品に至るまで(包丁以外のキッチン用品に触れたとはとても思えなかったが)あらゆる物体を拭いて回った。それから徹底的に掃除をし、DNA鑑定の材料も消し去る。
そして、ついにやり残したことがないと判断したあなたは帰路についた。
この周辺は辺鄙な田舎町で、監視カメラはほとんどないと言っていい。夏生と降りた最寄り駅にも監視カメラはついていなかった。
あなたは常に周囲に気を配りながら帰宅した。
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あの悪夢のような日から一週間。警察からの音沙汰は不思議なほどになかった。もしやうまく逃げおおせられたのか……?
そう安堵し始めた昼下がり、ついにそのときは訪れた。Zoomで会社の同僚と仕事を進めていると――
ピンポーン。
心臓が跳ねた。あなたはおそるおそるインターホンに近づき、通話をオンにする。
「はい、何かご用ですか」
『あのー、警察の者ですけれども』
みるみる鼓動が早くなる。声が震えないよう注意しながら応対する。
「……はい、今出ます」
外に出ると、そこに立っていたのは団扇で顔を仰いでいるオッサン警官だった。明らかにやる気がない。
……少なくともホンボシとまでは思われていないようだ。あなたはひとまず安心する。
オッサン警官は気だるそうに言った。
「ここんところ残暑が厳しいですなぁ。……ところで少しの時間でいいんですが、どこかでお話しできませんかね。どうにもここでは話しにくい内容でしてね。そこの喫茶店とかいかがでしょ」
オッサン警官は三軒隣の喫茶店「Holly Cafe」を指差した。あそこにはあなたも最近よく通っている。警察の御用達とかではないはずだ。あなたは頭をフル回転させながらゆっくりと頷く。
「分かりました。でも今テレワークに忙しくてですね。五分ほどで済ませることは可能でしょうか?」
「ええ。そのぐらいで済みます」
そこから直接「Holly Cafe」へと向かった。店内に入ると窓際のテーブルへ案内された。
オッサン警官はコーヒーを一杯注文した。
「あなたは何を注文されます?」
ここであなたは思考する。
選べるのは二つの選択肢。状況を推理して今のあなたにとっての最善の選択肢を選べ。
三つ目の運命の分かれ道だ。
①コーヒーを注文する。コーヒーカップに入った温かいブラックコーヒーである。
↓下記URLへ
https://kakuyomu.jp/works/16818792437393207240/episodes/16818792439925525109
②クッキーを注文する。陶器皿に載った五枚のチョコチップクッキーである。
↓下記URLへ
https://kakuyomu.jp/works/16818792437393207240/episodes/16818792439926679895
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