蓮への手紙

こんにちは。お手紙を書くなんて、なんだか少し照れますね。

ちゃんと届いているといいな。読んでくれて、ありがとう。


あなたの名前を書くと、ふわっと春の風が吹いたときみたいに、胸の奥があったかくなるんです。

それだけで、今日という日が少しやさしくなります。

――そんなふうに思わせてくれる人って、なかなかいませんよ。


でも、最近のあなたは、少し疲れているように見えます。

目の奥が曇ってるようで、声もなんだか、前より小さくなった気がして。


きっと、あなたは気づいていないのでしょうけど。

あの時のこと、私はまだちゃんと話していない気がします。


あの日、廊下でぶつかったときに、あなたが落としたあの小さな紙切れ――

それを私が拾ったこと、覚えてますか?

何気なく見てしまったけれど、そこに書かれていたことが、今でも頭から離れません。


「自分がいると空気が重くなる気がする」

「どうしてここにいるんだろう」

そんな言葉を、あなただけは言ってほしくなかった。


あなたはね、空気を重くなんてしません。

むしろ、静かな場所に、光をそっと差し込むような、そんな人です。


誰かの話を聞くときのまなざしとか、

黙ってそばにいてくれるときの、あったかい沈黙とか。

そういうのに、助けられてる人が、たくさんいるんです。もちろん、私もその一人です。


言葉にしない優しさは、気づかれにくいから、

もしかしたら「必要とされてない」って思ってしまったかもしれませんね。

でも、それは違います。


あなたの「そのまま」が、私にはとても大切です。

無理に明るくしなくても、強く見せなくても、私はちゃんと、今のあなたが好きです。


この手紙を読んでも、きっとあなたは「ありがとう」ってだけ言って、

そのまま何も言わずに笑って、また優しくしてくれるんでしょうね。

それも、あなたらしくて愛おしいです。


でも、お願いだから――

自分のことも、ちゃんと大事にしてください。


私は、いつでも、あなたの味方です。


また明日、会えたらいいな。


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