第15話 王都、聖女不在で聖女祭り!?

王城会議室にて。


側近A「……では、例年通り“聖女祭”の準備を進めております」


側近B「聖女様のご登場時間は午後三刻からとし、祈祷の儀、神託の朗読、奉納の舞──」


王太子(ふんぞり返って)

「……で、あの聖女は、どこにいるんだ?」


側近たち(しれっと)

「……ご静養中にございます」


「塔にいらっしゃる……はずでございます」


「きっと、当日には現れるかと……」


──その頃、森では。


ララ(爆笑)

「えっ!? まだやる気なの? 聖女祭り?」


ジニー「ほんっと懲りない王家ね……。あたしなんか、奉仕作業で今ハーブ園で泥まみれだっつーの」


マルグリット「誰が出るのかしら、儀式で。まさか、王太子自ら?」


アデル「王都に“影武者派遣”の依頼でも来たら、どうしましょうか?」


ジニー「影武者は断るけど、屋台の焼き肉なら行ってもいいかも」


マロン(苦笑しながら)

「王家、マジで……気づいてないのか……」


場所は、王都を一望できる“風見の丘”。


マロン(フィーネ)・ジニー・マルグリット・アデル・アルファル、全員でピクニック中。


──王都の中央広場では、「第108回・聖女祭」が始まっていた。


マロン(望遠鏡片手に)

「……出たわね。白いローブ。あれ、誰?」


ジニー(串焼きかじりながら)

「背、低っ。動きギクシャク。あれ影武者じゃない?」


マルグリット(シフォンケーキつまみながら)

「というか、一般人じゃない? あんなに神聖さのない聖女、初めて見たわ」


アデル(渋く紅茶を飲んで)

「背格好合わせただけの代役ですね。魔力のない“偽の祈り”は、あれでは通じませんよ」


アルファル(手製のピクルスを配りながら)

「ていうか、あの広場……民が全然いない。スカスカですね?」


マロン「ふふ……王家、まったく信用されてない証拠よ」


ジニー「……私たちいないと、あの国、ほんっと何もできないのね」


マルグリット「けど、戻る気もないけどね。私は今の暮らしがいいわ」


アデル「森で石けん作りながら平和に暮らすほうが、よほど尊いです」


アルファル「“森の男石けん”の予約が今週だけで60件来てますし、稼げますよ」


ジニー「聖女の名より、石けんブランドの方が今、影響力あるってすごいわね」


マロン(にっこり)

「聖女って、信仰じゃなくて、信頼から始まるものよ。……王家にはそれがなかった」


全員「乾杯~!」


(グラス代わりの木のコップで、麦茶とどぶろくが混在)


──王都では“聖女不在の聖女祭”が、しらけた空気のまま終了したという。


焚き火を囲む、森の夜。


マロン(元・聖女)、マルグリット(元・悪役令嬢)、ジニー(元・ヒロイン)、アルファルがそれぞれ湯気の立つスープを片手にまったりしている。


帰ってからの、宴会


マロン

「そういえばさ……王子の名前って、私、忘れたわ」


マルグリット

「……名前、ありましたっけ?」


ジニー

「あー……忘れられたんだ」


マロン

「忘れたっていうより、最初から覚えてないのよね。

ほら、顔はドヤ顔で印象的だけど、名前って特に言う必要なかったし」


マルグリット

「……今さら聞けないから、ゴニョゴニョって呼んでたんですか?」


マロン

「そうそう。『あー、その……殿下』とか『あなた』とか。名前は無理に呼ばないスタイル」


マルグリット(くすっと笑って)

「それ、幸せなことですよね。忘れられるくらい、距離を置けたってこと」


ジニー

「……じゃあ、私も上書きしよ。アルファルって言い続けて、全部消す」


アルファル

「おい、なんで俺が“上書きデータ”なんだよ」


ジニー

「だって、その方が後味いいでしょ? パンダ以下とか記憶に残しても仕方ないし」


マロン

「ほらね、この森は“記憶のゴミ捨て場”としても優秀なのよ」


焚き火がぱちりと爆ぜて、笑い声が夜に溶けていく。


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