第11話 『ジニー、奉仕活動でハーブ園に挑戦!──パンダ以下の王子と知らされて』

朝の森。

ジニーは、スコップ片手にハーブ園にいた。


「よーし。役立つ人間になる!」


「もう王家には戻れないもん……」


そんな彼女を見て、

元・聖女のフィーネと、元・悪役令嬢のマルグリットがうなずく。


「改心、早かったわね」


「でも、油断するとすぐ“ジニー節”炸裂しそう」


──案の定。


「ねえねえ、王太子って、気持ち悪いよね?」


「……いきなり?」


「だってさ、あの人、なんかもう……全体的に生理的にムリなんだもん」



その一言に、3人娘はうなずき合う。


マルグリット「わたしも。“飾りの王妃”にしてやるって言われたとき、全身に鳥肌が立ったわ」


フィーネ「塔で祈ってろって言われたとき、マジで“あ、この人神罰くるわ”って思ったし」


ジニー「でしょ!? 下半身も含めて、無理っていうか――」


マルグリット「ちょっ、ジニー!そこ突っ込むの!?」


マロン(通称・“森の妖精”)が、近くの草むらから顔を出した。


「ねえ、王太子ってさ……短くない?」


「は?」


「時間よ、時間。アレの。

私ね、前世でパンダの檻の前に立ってたとき、**“パンダは生殖行為が3分程度と短い”**って解説板に書いてあったの」


「……それが、どうしたの」


マロンは真顔で答えた。


「王太子は、パンダより短いのよ」


「なんで知ってるのよ!?」


「神殿の王家報告(関係者以外閲覧禁止)に書いてあるのよ。アレの時間まで記録されてるの。」


「ええええええ!?!?!?」


マルグリット、目が飛び出そうになる。


「王太子って……パンダ以下のプライバシーなの?」


「うん、正妃には記録はないけど、愛人や側妃は全部つけられるの。時間・回数・満足度・セリフまで。」


「セリフ!?」


「“もっとおねだりしてごらん”とか、“さすが聖女の加護だな”とか……

王太子って、陰謀に、加担したり、厨房でのおねだりってのが問題だからね。」


「ぎゃーーーーっ!!」



ジニーは、地面に突っ伏して叫んだ。


「ムリ! もうムリ!! あたし、死んでも王家戻らない!!」


「うん、私も。墓まで持ってく情報だわ、これは」


「せめて……パンダ超えたら報告してほしいわよね」



こうして、3人娘の結束はますます強まり、

ハーブ園には今日も笑いと怒声と、ちょっとした赤面が飛び交うのだった。




会話シーン「名前忘れ事件」



焚き火を囲む、森の夜。


マロン(元・聖女)、マルグリット(元・悪役令嬢)、ジニー(元・ヒロイン)、アルファル(元・騎士団副団長)がそれぞれ湯気の立つスープを片手にまったりしている。



マロン

「そういえばさ……王子の名前って、私、忘れたわ」


マルグリット

「……名前、ありましたっけ?」


ジニー

「あー……忘れられたんだ」


マロン

「忘れたっていうより、最初から覚えてないのよね。

ほら、顔はドヤ顔で印象的だけど、名前って特に言う必要なかったし」


マルグリット

「……今さら聞けないから、ゴニョゴニョって呼んでたんですか?」


マロン

「そうそう。『あー、その……殿下』とか『あなた』とか。名前は無理に呼ばないスタイル」


マルグリット(くすっと笑って)

「それ、幸せなことですよね。忘れられるくらい、距離を置けたってこと」


ジニー

「……じゃあ、私も上書きしよ。アルファルって言い続けて、全部消す」


ジニー

「だって、その方が後味いいでしょ? パンダ以下とか記憶に残しても仕方ないし」


マロン

「ほらね、この森は“記憶のゴミ捨て場”としても優秀なのよ」


焚き火がぱちりと爆ぜて、笑い声が夜に溶けていく。

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