第19話 番外編
真夜中にふと目が覚めて、そろそろ朝だろうかと思った。
不思議な夢を見たような気がしたけど、シャボン玉みたいにその記憶は消えた。
一緒に眠っていた黒猫のシャンクスがベッドからおもむろに降りて・・・
そして明かりの灯る部屋に移動していく姿が見えた。
小さなカボチャの低木の鉢の側には、お腹の大きな白い猫。
シャンクスはどうも、身重の妻が心配でならないらしい。
なんだか可愛い。
エルフと人間のハーフのジュリアンは私の兄やで、婚約者でもある。
ジュリアンのお母様から、彼の好物の料理レシピを教わった。
それからすぐに死去してしまったお母様のお葬式は彼が喪主をした。
身分違いで時々しか会えなかったけど、喪主ができてよかったと彼はぼやいた。
やっぱりさびしいらしく、明かりの灯る部屋に近づいてみるとソファに座る彼がいた。
暖炉には火が炊かれていて、時々ぱちぱちと爆ぜる音が小さく鳴る。
こちらを認めると、彼は微笑んだ。
「眠れなくて、読書をしていたんだ」
「どんな本?」
「君が出した本。一番のお気に入りだ」
思わず微笑み、自分の大きくなったお腹をさする。
「ホットミルクでも作りましょうか?」
「ココアがいいな。座っていて?僕が作ろう。何かあったら大変だ」
苦笑してしまう。
「もう親バカなのね」
「子煩悩、だ」
「あら、ごめんなさい」
「うん、まぁ、いい」
子煩悩な彼がキッチンに向かうと、シャンクスが声を透した。
「俺たちの分も頼むよっ」
キッチンの方からジュリアンが戻って来る。
「ん?なんて?」
「ホットミルク、俺達の分、も」
「ああ。オーケー」
ジュリアンがキッチンに戻り、シャンクスがため息を吐く。
「なんかあいつ、何故か怖い・・・怖くなってる・・・」
白猫が言った。
「あなたももっと怖くなりなさいよ」
「そうなの?」
こちらに振り向かれて、苦笑してしまう。
「知らない。分かんない」
んん~・・・と考え込むシャンクスに、首輪の代りにリボンを提案してみた。
するとそちらのほうは、すぐに「そんな最悪があってたまるか」と返事があった。
どうも可愛く思ってしまうのは、飼い主特有のものだろうかと思った。
ーおわりー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます