第7話 異変




 どうやら自分たち以外にも精霊と契約できた人が現れたようだ。


「つっちー、どうやって呼んだんだろうね?」


「う~ん、召喚石か召喚スキルじゃないかな。ホムラ、詳しいことわかる?」


「直接話聞いた訳じゃないからそこまではわからないわ」


「アタシが聞いておいてあげるわ」


 ミントがどや顔で言った。


「あ、うんよろしく」


 つっちーが空返事で返していると、


「あのね、ミントって精霊の国で有名なのよ」


 ホムラがこっそり教えてくれた。


 どうやらミントは精霊の国では高位の精霊らしい。


 その為有名人であり人気もあるようだ。


「へぇ~、全然そんな風に見えないけど」


「うん、そうだね」


「2人は魔法を使って戦うミント見てないなら仕方ないわ」


 2人はミントの戦う姿を見ていなかった。そもそも戦う気のない2人では見る機会がないのは当然なのだが。


「とにかくアタシが聞いてきてあげるんだから感謝してよね」


 ミントが実は凄い精霊だとわかった2人だった。





 後日、ミントが聞いてきた他の契約者の話。


「やっぱり召喚スキルあるんだね」


 どうやら他の精霊は召喚スキルによって精霊を呼び出したらしい。


 ちなみに世間では発表されておらず秘匿してるっぽい。


「あっちは戦わされてばかりで大変そうだったわ」


「普通はそれが正しいのだけれど、こちらに慣れるとミントの言うとおりかしらね。何もしなくてもいいのだもの」


 こちらの契約精霊たちはすっかり堕落してしまった。


 向こうの精霊は契約者にいくつか条件を出しているそうだ。


「戦闘の報酬に必ずお菓子を用意すること(持ち帰り分含む)、数日に1度戦闘のない召喚をして1日自由に過ごさせること、か」



 ミントが他の精霊たちに自慢話をしているらしく、契約条件にそのような項目が出来つつあった。


「完全に僕たちのせいだね」


「俺たちは何も悪くない」






 ダンジョンが現れてから2年程経過し、ついにダンジョンボスが討伐された。


 攻略されたのはアキバダンジョン。


 そこから下の階層は見つかっておらず、ダンジョン最下層だろうと結論が出た。


 ボスを討伐したことによるダンジョン消失はなく、またボスを始めとするモンスターたちは再出現することがわかった。


「つっちー、ダンジョン攻略されたね」


「ラノベだとダンジョン消えたり、隠し扉とか見つかるけどそんなこともなかったな」


 世界的大ニュースにも相変わらず他人事の2人だった。




 いつものように野良ダンジョン内にてシェルターを使うつっちーとかねやん。今日はミントたちが来る日だ。


「そういえば精霊と契約した人って増えてるの?」


「こないだの1人だけよ。アタシたち精霊以外はわからないけど」


 精霊の契約者はあれから増えていないようだ。


 別に増えても構わないのだが、自分たちの存在がバレると面倒なので現状このままでいて欲しいと思うのだった。



「ちょっと、外の様子見せて!」


 ミントが慌てた様子で言ってきた。


「どうしたの急に?」


「ダンジョンの魔力が高まってるのよ!このままだとモンスター生まれてくるわよ」


「つっちーどうしよう。今すぐ逃げる?」


「ミント今出ても大丈夫なの?」


「危険よ。このままダンジョンの拡張が終わるのを待ってたほうがいいわ」


 ダンジョンが収まるのを待つことにしたつっちーたちはモニターでダンジョンの様子を眺めていた。


 ダンジョン内では黒い煙が徐々にモンスターへと姿を変えていった。




 現れたモンスターはゴーレム。


「つっちー、アレ倒せると思う?」


「ちょっと厳しいかな」


 しかしダンジョンから出るにはゴーレムと戦わないといけない位置にいた。


「あら、あの程度ならアタシたちが倒してあげるわ」


 そういうとミントとホムラはシェルターから出ていった。


「ホムラ、アレやるわよ」


「わかったわ」



 2人がそれぞれ魔法を放つ。


「「ストームフレア」」


 すると風と火が混ざり合い炎の竜巻がゴーレムを包み込んだ。




「つっちー、俺たちが試したやつより凄くない?」


「本職には勝てないということかな」


 精霊2人の魔法は洗練されていて、見ていて綺麗だった。



 しばらくして炎が収まると、


「そろそろいいかしらね。つっちー、かねやん。あとはあなたたちが仕留めなさい」


「いいの?」


「あなたたちが倒せば何か出てくるかもしれないし構わないわ」



 半分溶けた状態のゴーレムに向かいつっちーとかねやんは魔法を放つ。


 ゴーレムは無事倒れ消えていった。



 その場に残ったものが、


「タマゴ?」


「ドロップアイテムなのかな?」


 タマゴがひとつ残されていた。


「つっちー、タマゴってアイテム扱いなのかな?」


「多分まだ生まれてないからセーフなんじゃないの。それよりどうするコレ?」


 従魔のタマゴという名のそれをどうするか思案する2人。タマゴというからには何かが生まれるのは確実である。


「ずっと面倒みてられないし、何より表に出せない」


「うん、散歩なんてさせたらパニックになるよね。何が生まれるかわからないけど」



 つっちーとかねやんがタマゴの扱いに困っていると、


「ねぇ、この子アタシたちが面倒みてもいいかしら?」


 意外にもミントが提案してきた。


「助かるけどいいの?何生まれるかわからないし、そもそも持ち帰れるのタマゴ」


「問題ないわ。持ち帰れるし、皆で面倒みるから大丈夫よ」


「上手く育てば精霊の国の守護獣にできるかもしれないわ」


 どうやら問題ないようだ。あっという間にタマゴの養育権があちらに移ってしまった。


「まぁ面倒みてくれるなら問題ないか。俺たちじゃきっともて余すだろうし」


「そうだね」


「ところでタマゴに夢中になってて忘れてたけどダンジョンって大丈夫なの?」


「ええ、どうやらあのゴーレムがこのダンジョンのボスだったみたいね。ボスを倒したし、しばらくモンスターは出てこないわ」


「それに拡張したばかりだからダンジョンコアがまだその辺にあるはずよ。それを壊せばダンジョンの機能は停止するわ」


 どうやら危機は去ったようだ。


「ところでダンジョンコア壊すとここってなくなるの?」


「ここは残るわ。ただダンジョンではなくなるわね。何もないただの洞窟になるわ」



 この場所は残るようだが、ダンジョンとしての機能はなくなるらしい。しかし困らないので問題ない。むしろあると今回みたいに危険な目に合うのでなくていい。


 重要なのは誰にも見つからずシェルターが使える場所があることなのだから。


 つっちーはダンジョンコアを早々に破壊する。


 そしてこの場所には平穏が訪れた。


 その頃、他の野良ダンジョンもここと同様の事態が発生していたのだった。



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