第15話 形
「どんなに時間軸を変えようとしても、全て無駄だ。」
――歪曲
「ここはどこだ…」どこからともなく聞き覚えのある声が響き、声の主はゆっくりと目を開けた。
彼が見たのは暗い虚空。そして、その虚空の中に、背の高い青い人影が立っていた。
「またあいつか?」タガはゆっくりと前に出た。重々しい足音が暗闇に響き渡る。青い人影は立ち止まり、遠くを見つめていた。
「また来たか…」青い人影はゆっくりと言い、既に目の前にいたタガへとゆっくりと振り返った。
タガは、相手の圧倒的なオーラを感じ取り、思わず拳を握りしめた。力が漲ってきた。
「怖がるな、タガ。お前を傷つける気はない。拳を開け。」青い人影は多賀の握りしめた拳を見つめ、ゆっくりと指を立てて指差した。
相手の言葉を聞いて、多賀はゆっくりと拳を解き、内なる緊張が徐々に解けた。相手が自分に危害を加えるかもしれないという恐怖と、相手が自分と同等の力を持っているという現実を恐れ、軽率な行動に出ることをためらった。
「こんにちは、先生…」多賀は丁寧ながらも慎重な口調で言った。
多賀の目には相手への疑念が浮かんでいた。なぜ相手が自分と同じ力を持っているのか、なぜここにいるのか…多くの疑問が胸に重くのしかかり、相手の存在についてもっと知りたいという思いが募った。
「あなたの疑念と好奇心に満ちた目を見て、何でも聞いてください。」青い人影は両手を背中で組み、鋭い目で多賀を見つめた。
「先生…なぜ…ここに…そしてなぜ私と同じ力を持っているのですか?」多賀は、相手の出自への好奇心に駆られ、心に重くのしかかる疑問を口にした。
「なぜここにいるのか……わからない。ただ、戦争を経験し、そこで命を落とし、そして目を開けたら……ここにいた」青い人影は淡々とした口調で言ったが、その口調にはどこか隠すような響きがあった。
多賀は相手の口調にかすかな罪悪感を感じたが、考えすぎだと悟った。
「私の力があなたと同じなのは……私がその主だからです!」青い人影は両腕を掲げ、誇らしげに言った。その口調には誇りと威厳が溢れていた。
「あなたは……私と同じ力の主ですか?」多賀はゆっくりと首を傾げ、表情と目に戸惑いが浮かんでいた。
「私はこの力を創造した。私はその開発者であり、あなたは唯一の継承者だ!」青い人影はゆっくりと片腕を上げた。その掌には小さな稲妻が凝縮されていた。
タガは相手の手の中の玉を見つめ、目を輝かせた。相手の力の掌握がこれほどまでに頂点に達しているとは予想していなかった。
「一体この力とは何だ?」タガは再び尋ねた。
「お前ら人間は魔法と呼ぶが、俺にとっては『神の力』だ!」青い影はゆっくりと玉をタガの前に置いた。
「お前は…神なのか?」タガは青い影を見上げた。その青い瞳には困惑とかすかな不信感が宿っていた。
「冗談だろ?俺は数十億年前から主神だ!神の宮廷で最も強大な存在の一人だ!」青い影の口調には不信感と傲慢さが滲んでいた。目の前の骸骨が自分のことを知らないとは予想外だった。
「では、なぜ死んだんだ?」タガは容赦なく相手の死を告げた。
「もっと遠慮して…」青い人影は額に手を当て、眉をひそめた。目の前の後輩が、あんなに無礼な態度を取るとは思っていなかった。
「最強の存在の一人だからといって、いつまでも最強とは限らない。それは一時的なものだ。きっと、もっと強い存在が、我々を倒すだろう。」青い人影は肩をすくめ、空を見上げた。
「正直に言うと、君の話は絵本でしか聞いていなかったので、君の存在は架空のものだと思っていたんだ。」タガは青い人影を見つめ、騙されているのではないかと疑った。
「いいえ…君の絵本と称する物語のほとんどは実際に起こったことだ。創造神が宇宙を創造したという話も含めて。」青い人影の口調は急に真剣なものになり、眉をひそめた。
「全部本当なのか…?全部神話じゃないのか?じゃあ、なぜだ?なぜ創造神は私の宇宙を救いに来ないのか?なぜ神々は見て見ぬふりをするのか!?」 「どうして…私に全てを失わせようとするの…」タガは怒りを抑えられず、声を詰まらせた。彼が怒っていたのは、彼の宇宙が崩壊の危機に瀕していた時、神々が現れず、彼らを信じる人々を救いに来なかったからだ。
「怒るな。創造神が最後に現れたのは随分前のこと…そして我々は創造神自身をまだ見ていない。彼はあまりにも謎めいている…他の神々がなぜ君の宇宙を救わなかったのか、私には分からない…もしかしたら、時の流れとともに、神々は私の時代とはずっと以前から違ってしまったのかもしれない。」青い影はただ首を振り、多賀を見つめた。多賀が神々を不信に思い、怒りをぶちまけているのを見ていた。
多賀は青い影の無力な視線に気づいた。彼はゆっくりと目を閉じ、深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。
「申し訳ございません…落ち着きを失いました…」多賀は恥ずかしそうに顔をしかめ、暗い表情を浮かべた。どうしたらいいのか分からなかった。これまで神は存在しないと信じていたが、今となっては確かに存在することを知った。
「無害です。あまり心配しないでください。」これがこの世の真実なのだ。」青い人影は両手を後ろに組んで、多賀に背を向けた。
「旦那様…あの黒いローブを着た謎の人物を見かけませんでしたか?」多賀はゆっくりと顔を上げ、決意に満ちた目で青い人影を見つめた。
「あなたが見たあの人ですか?」青い人影は多賀の方を向いた。
多賀は青い人影を見つめ、厳粛に頷いた。その目には、黒いローブの男の存在を真に理解したいという思いが宿っていた。
「正確に言うと…私は彼が誰なのか、どこから来たのかも知りません。ただ、彼には多くの秘密があり、私には理解できないことは分かっています。 「彼の力は計り知れず、ほとんど全てを凌駕するほどだ…」青い影は真剣で、信じられないといった口調で言った。彼にとって、黒衣の男の存在は奇妙なものだった。彼は存在しているような…と同時に、存在しないような気がした。これは彼を困惑させた。彼はかつてそのような存在を見たことがなかったのだ。
これを聞いて、多賀は黒衣の男が一体どのような存在なのか考え始めた。
「多賀、君は予言の中に存在していた。君は全宇宙の希望だ。君の未来は長い。」青い影は多賀の方を向き、自信と信頼に満ちた微笑みを浮かべた。
「承知いたしました!」多賀は微笑みながら答え、真剣に頷いた。
突然、一筋の光が多賀を照らした…しばらくして、彼はベッドから目を覚ました。彼は両手のひらを見つめ、拳を強く握りしめた。彼は、まだ詳細は知らなくても、自分の運命と使命をある程度理解しているようだった。
そして、暗い虚空の中で…青い人影がゆっくりと微笑んだ。
「なんと完璧な体なのだろう…タガ、タガ、天国に召された者として、真の神の力に耐えられるだろうか。実に魅惑的だ…」青い人影の口元に、かすかに、そして邪悪な笑みが浮かんだ。
そして、どこか別の場所で…
歪曲は宮殿の一室、書棚の前に立ち、鋭い指先で一つ一つの書物を優しくなぞっていた。そして、棚から一冊の本を取り出すと、開いて読み始めた。
その時、アルカロスの兵士がドアをノックした。歪曲は静かにページをめくり続けた。
「皇帝陛下…あの者の居場所を突き止めました。さあ、行きましょうか…」アルカロスの兵士は恭しくドアを開け、片膝をついて、分かったことを全て報告した。
「まだだ。まずは運命の男の移動速度を落とし、拷問にかけなければならない」ディストーションは本の文章を読みながらそう言った。口の端からゆっくりと触手が伸びてきた。
「それで、君の計画は…」アルカロスの兵士は、いつでも王に仕える態勢を整えながら、敬意を込めて言った。
「教えてやろう…」ディストーションは本を勢いよく閉じ、頭を向けた。彼の顔はもはや人間とは似ても似つかなかった。奇妙な触手と模様が、まるで怪物のように顔を覆っていた…
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