第22話 犯罪奴隷、本棚の完成をみる
その後もアシッドマイマイをぶちのめしながら水撒きをするお嬢。
というか水撒きしたあとにノーマルアシッドマイマイが発生するようなので発生させるための水撒きである。メイリーンによると魔力を含まないだろう水なので弱体化個体というかノーマル個体が生成されているのだろうとのこと。迷宮は謎が多い。
お嬢に「ふたりはレベル上がった?」とキラキラの目で問われたがレベル一桁の魔物を倒しても俺のレベルはまず上がらない。どうやらメイリーンもそうなようで「変異種でも低レベルだしなー」と小さくもごもごしていた。
ストレージバッグに余裕がなくなり、小袋もアシッドマイマイの魔核でいっぱいになったものとアシッドマイマイの殻でいっぱいになったものができた。
変異種のアシッドマイマイの殻はひとつが手のひらより大きくて場所をとる。ただこれくらいの大きさの物ならちょっと小遣い稼ぎにはなりそうだ。
「売るなら冒険者ギルド。ボタンなら私、つくれますよ?」
メイリーンがお嬢に問う。
「ボタン!」
「じゃあ、いっちばん綺麗な殻を選んでボタンを作って、魔核潰してコーティングしちゃいましょーね。きっと綺麗ですよ」
それ、呪い道具では?
毒避けとか麻痺よけとかの。
まぁ、活動費は基本お嬢のくじ引きで出た物を辺境伯様に送る事と町の水源、貯水池に水を注ぐことで賄えてはいる。
「わぁ! 楽しみ!」
お嬢が楽しそうなのでなんでもいいかと思う。
迷宮を出たのは昼過ぎで迷宮管理局の迷宮出口は不人気っぷりを示していた。
冒険者ギルドの迷宮出口の方が買取りが近いからな。
今日は買取りをしてもらわないので静かな方にした。受付前を通ることもない。
適当に屋台飯を買って家に戻れば、ザナが呼んだらしい大工が本棚を組み立て終えていた。
「いやぁ、素晴らしい構造です。面白い時間をありがとうございました。模倣してみてもよろしいでしょうか?」
は?
お嬢が出した物を簡単に利用する気か?
「うん! いいよ。どんな風になるのか楽しみ。見せてくれますか?」
「ええ。もちろん! 有意義な棚ができるでしょうね」
そう言って大工が棚を右から左、左から右へと動かす。
「わぁ、なめらかだぁ」
「ですね。コレが再現できるかどうか」
あんな仕掛け物は実は辺境伯に贈るべきだったのでは?
大工はお嬢が得意げに「今日はレベル五になったの」と誇らしげに自慢する様子に破顔し「おめでとうございます。きっと模倣品ができる頃にはもっと上がってらっしゃいますね!」とちゃんとほめたたえていた。
大工への賃金は役所が支払ってくれたらしい。(家の管理費は辺境伯持ち。物は増やしてかまわない。改造可)
大工は昼食を食べて帰っていった。
「あれ? もしかして作業台とか椅子の追加とか頼めばよかったのでは?」
見送ったあとにお嬢がぽつんと思いついた。
「よく考えたら食事するテーブルでボタン造りするのもアレだよね。カケラが散っちゃいそうだし。えー、どうしよう?」
お嬢が食べる食事にマイマイの殻のかけらが混じるのは良くないかな。
「りょーしゅ様のストレージバッグに何かいい物入れてたかな?」
取り出されたのは殻を入れるのに最適そうな蔓を編んで作られた籠がふたつ。
「魔核を入れて保存しておくのにはこれ、不向きだねぇ。使わない分はりょーしゅ様に送って換金がいいかなぁ」
……辺境伯様がアシッドマイマイの魔核処理……。
「お嬢さま、アシッドマイマイの魔核はスライムの魔核同様汚水浄化槽に使えますよ。もちろん魔道具のランプにも」
メイリーンの誘導を含む解説にお嬢がキラキラ尊敬の眼差しをその表情に滲ませる。
「すっごーい」
チョロいのはどっちだ!?
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