第13話 犯罪奴隷、意見を述べる



「なにがでるかな。なにがでるかな〜。えい」


 なんとなく馴染みになったお嬢の呪文にメイリーンがキラキラした眼差しをむけている。



『すのこ』(雑貨)

『どんぶり』(雑貨)

『棒ラーメン』(食品)

『ひまわりの種』(種子)

『まいたけ』(可食きのこ)


 俺は鑑定を発動させる。

 相変わらず精度は低い。


「これとこれが食材ですね」


「え。そのきのこ見たことないけど食べられるの?」


 メイリーンが問う。

 見たことはない。たぶん判断基準の何かに見たか見てないかわかるなにかがある。

 もちろん俺も初見だ。全部。


「可食と鑑定されているかな」


 疑わしいと感じてしまうが可食なら食えるだろう。


「熱を通せばだいじょうぶだよ!」


 お嬢がにこにこ言う。

 まぁ、毒はないようだし?

 鍋に水をはり、メイリーンが沸騰させる。

 お嬢が『棒ラーメン』をお湯に割り入れる。

 どうやら麦粉を練って伸ばして乾燥させた保存食のようだった。

 そこにきのこも入れ、煮たてる。

 出来上がったスープに浮くきのこは不思議な食感ではある。

 この夜は腹は下さなかった。


「ひまわりの種。種だから植物か」


 紙の包みには数個の縞々の種。


「ジェフ。植物の種は一度パパに渡すからストレージバッグに入れておいて」


 お嬢が指示を出す。

 俺はそれに従う。

 どんぶりとすのこは辺境伯様のストレージバッグへ。


「お嬢さま」


 メイリーンがお嬢さまの髪を梳きながら呼びかける。


「なぁに?」


「私どもはお嬢さまの所有物です。私どもに気兼ねしてしたいことを留めてしまいませぬようにお願いいたします」


「んー、よくわからないのだけど?」


「私はお嬢さまが自由に振る舞うことを制限されているように思います。私どもからお嬢さまに関する情報は、ええ。辺境伯様に対してももらしません。例えば、くじ引きの一日の制限回数や選択肢の選別の可能性などは内密にしておきたいというのは理解できます。あと、食材も使い方わかっているものもあるのではないかと思いまして」


 あー。

 お嬢こっちの様子を見ているフシあったからなぁ。

 もうしばらくは様子見して距離感を知るべきかと思っていたが、メイリーン、短気だな。


「お嬢さま、私ども犯罪奴隷は解放されることはほぼ有りません。所有者が変わることもほぼないといっていいでしょう。そう、ですね。お嬢さまがお子様を残されてその守り役に私どもをつける。その時だけが特例譲渡でしょう」


「ま、数少ない犯罪奴隷からの解放は『冤罪』であるという証明が必要で、犯罪奴隷となるような者の冤罪を晴らそうとたち動く者は限りなく少なく、証明されたとして犯罪奴隷は犯罪奴隷として活動していた間の記憶は消去され神殿における療養で余生を過ごすと言われてるなぁ。結局解放はされないモノですね」


 冤罪証明もなにも犯罪奴隷になるほどの犯罪を犯している場合、十中八九一族郎党縁者に至るまでなんらかの処分が下っていると考えることが自然で、権力者に不利な情報は消去隠滅されている可能性が高いんだよな。


「冤罪、かもしれないの?」


 あれ?

 お嬢、変なことに食いついた?


「どうでしょうか? 自分の罪すら記憶していないもので」


「無罪の調査すらできない!?」


 あー。


「できませんねぇ」


「二人してハモってる!」


 仲が良いわけでもないんっすけどね。



「辺境伯様のストレージバッグに入れた物は金額査定してくださってるので販売を考えている。もしくは景品の価格設定する場合の参考になるので誰にもまわす気がない物以外は一度は辺境伯様に提出が好ましいかと思うですよ」


 一応忠告しておく。

 伏せたい物は協力していくつもりはある。


「ちゃんとりょーしゅ様には美味しいもの役立つ物も貢ぎますよ! りょーしゅ様には権力維持して頂かなくては!」


 拳を振りあげるお嬢は愛らしいと思う。


「ところで、なにが役立つんでしょうかね?」


 わかんないんですね。


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