第7話:古代図書館の謎と共通の秘密
翌日、私は一人で図書館を再訪した。
昨夜の魔導河での体験が頭から離れず、あの不思議な光の正体を突き止めたかったのである。
昼間の図書館は相変わらず学生たちで賑わっているが、奥の禁止区域は人気がない。私はそっと書架の隙間に近づいてみた。
すると、昨日は見えなかった細い通路があることに気づいた。
「あれ?昨日はこんな通路はなかったはずだが...」と首をかしげながら、恐る恐る足を踏み入れる。
通路の先には小さな扉があり、「時の書架」という看板が掛かっていた。
扉を開けると、そこは想像以上に広い古本屋になっていた。天井まで届く書棚には、見たこともない古い書物が並んでいる。
「いらっしゃいませ」
声の主は、年齢不詳の痩せた男性だった。灰色のローブを着て、深い皺の刻まれた顔をしている。その目には何か不思議な光が宿っていた。
「あの、ここは図書館の一部ですか?」と私は尋ねた。
「さあ、どうでしょうな。私はただここで本を売っているだけです。何かお探しの本があれば」と店主は曖昧に答える。
「魔導河について詳しく書かれた本はありますか?」
店主の目が輝いた。
「ほう、魔導河に興味をお持ちですか。それでしたら...」
店主が取り出したのは、古い革装丁の分厚い本だった。
「魔導河伝説—失われた真実の記録」というタイトルが金文字で刻まれている。
「この本には、魔導河の真の力について記されています。ただし...真実と虚構の境界は曖昧です。読者自身が判断せねばならない」と店主は意味深に言った。
本を受け取ると、ずっしりとした重みがある。
表紙を開くと、美しい挿絵と共に古めかしい文字が並んでいた。
最初のページには興味深い記述があった。
『満月の夜、魔導河は真実を映す鏡となる。見る者の心が純粋であれば、その人の本当の姿が水面に現れるであろう』
「これは...」と私は驚いた。まさに昨夜体験したことではないか。
急いでアリアを探しに行くと、彼女は図書館の別の一角で勉強していた。
私の興奮した様子を見て、彼女は首をかしげた。
「どうしたのですか?何か良いことでも?」
「実は...」と私は古本屋での発見を報告した。
しかし、話をしながら一緒に向かってみると、あの通路が見つからないのである。
「おかしいな...確かにここにあったのですが」
アリアは私が手にしている本を見て目を丸くした。
「でも、その本は確かに存在していますね。表紙も古そうですし...」
その時、図書館員が近づいてきた。今度は昨日とは違う人物である。
「お二人とも、その本はどちらで?」と図書館員は尋ねた。
「え、えーと...」と私は困惑した。
図書館員は本を手に取って調べ始めた。
「これは...我が図書館の蔵書ではありませんね。どこで入手されましたか?」
私とアリアは顔を見合わせた。存在しない古本屋で買った本だとはとても言えない。
「実は...古本市で購入したものです。図書館で読んではいけませんでしたか?」とアリアが機転を利かせた。
図書館員は少し考えてから答えた。
「いえ、構いません。ただ、この本は非常に古いものです。大切に扱ってください」
図書館員が去った後、アリアは私に向かって言った。
「あなた、何か隠していませんか?本当はどこでその本を手に入れたのですか?」
私は観念して、時の書架での体験を全て話した。アリアは最後まで真剣に聞いてくれた。
「信じられませんが、あなたが嘘をつく人ではないことはわかります。きっと何か不思議な力が働いているのでしょうね」アリアは微笑みながら言った。
「でも、面白いじゃありませんか。ついに本物の魔法的な出来事に遭遇したのかもしれません」
私は安堵した。アリアが信じてくれて、本当に良かった。
つまるところ...共通の秘密を持つことで、我々の絆はさらに深まったのである。
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