Day3

トラック3:瑠奈の膝枕で好き

 //SE 背後で玄関の扉が閉まる音


 //SE 前方から慌ただしい足音


「えっと、お邪魔するのは君の方だから……ねぇ、こんなとき、なんて言えばいいか分からないの」


「ちょっと! 笑って誤魔化さないでよ! 君ならなんか知ってると思って聞いたのにっ」


「はぁ……なんか先が思いやられるけど、上がっていいよ。靴はきちんと揃えてよね」


 //SE 主人公の衣擦れの音

 //SE 2人の足音(リビングに動いていく)


「友達にだったら、『今日暑かったでしょー! これでも飲んでっ!』って冷たいジュースでも出すんだけど……家が隣だから汗も全然だね」


(あざとく)

「さっき私が飲んだ冷たいお茶なら出したげるけど、いる?」


「ちょっ——瞬速で奪って飲むなぁ! 反射神経どうなってんの……!? いきなり腕が出てきてびっくりしたじゃんっ!」


(主人公がお茶を飲む)

「くっ……奪われたの、飲みかけだから余計に腹立つぅ……」


「なに、返してあげるって? ……お気遣いどうも」


 //演技依頼 お茶を飲む


(わざとらしく)

「う~ん、べ、別に味が変わるわけじゃないし、何も感じないねっ。ほんとに」


「あ、立ちっぱなしだったね。座っていいよ。そこのソファとか」


 //SE ソファに2人が座る音(瑠奈は主人公の左に座る)


「ふぅ~。なんか一瞬で疲れちゃったからか、いつもよりソファが柔らかく感じるぅ……」


「ねぇ……何する?」


「さすがに暇でしょ? 勉強とかもしたくないし……」


「じゃあ、昨日の続き、する?」


「せっかくならもっと効果的なのがいいなぁ。早く死んで欲しいから」


「——み、耳かき……? マジで言ってるの……? てかなんで耳かき……?」


「え、耳から好きを得ている……?」


「だからより脳に届きやすい……???」


「い、いきなり理系みたいなこと言わないでよぉ……! 私は超絶文系! ねっ!?」


「いや、それにしたって意味は全く分かんないんだケド……」


(訝しげに)

「好きを得るってなんだ……?」


「はぁ……しょうがない。耳かき持ってくるから待ってて。なんかムカつくから正座で。いいね?」//少し離れる


「耳かき……どこにあったかなぁ……あんま使わないから……」


 //SE ガサゴソと棚の中を漁る音


「これじゃない……ここにもない……」


「あーこれだ! 耳かきセットこんなとこにしまってたんだ……知らなかった」


 //SE タッタッタと軽快な足取りで戻って来る


「ん、おまたせ。きっちり正座してて偉い。よしよしはしてあげないけどっ」


「てことで、交代こーたい。次は私が正座しなきゃなんだからねっ?」


「痛みを知れ、なんて言うつもりはないよ。ただ、痛みを分け合えるのっていいよねって思ってさ」


「ちょっと脱線しちゃったね。ほら、早く寝っ転がってよ」//瑠奈の膝枕に寝転ぶ


「ちょっと、ニヤニヤしないでよ。胸があるとはいえ顔見えてるんだからね? 目つきもなんか、やらしいし。えっち」


「だ、誰が膝枕だけって言った? 横向いて」


「くっ……そこでお腹の方に顔をやるの、いい性格してるよね。そーゆーとこ、本当に嫌いなんだから。ぷいっ」


「はいはい。分かったから、じっとしててよ? 君に怪我させたくはないから」


「じゃあ、右耳に耳かきいれるからね?」//奥までそっと入っていく


「ど、どう? 痛くない?」


「良かった。じゃあ、始めるね」//覗き込むため一気に近づく


「んっ……なんか、取れてるような……」


(小声で)

「お、いい感じっ!」


 //SE  耳かき棒を抜く音

 //SE ティッシュを一枚取る音(耳かき棒を拭く)


「どう? 気持ちいい?」


「ふふっ、なら良かった。私も、なんだか気持ちよくなっちゃったしね」


「それじゃあ、もっと行くよ?」


 //SE  奥に入れる音

 //演技依頼 耳かきを続ける


「カリ、カリ、カリ……」


「なんか、お母さんになった気分。子どものお世話ってこんな感じなんだろうなぁ」


「昔、私が小さい頃、ママにやってもらったの思い出しちゃう。小学生のとき、ってもう5年前とか」


「……5年。短いようで長いんだね」


(しみじみと)

「私たち、ずっと一緒だったよね。小学校も、中学校も、高校も」


「まぁ、高校は私が頑張って、君の背中を追いかけてきたからなんだけど」


 //演技依頼 耳かきを止める


(母性を感じるように)

好ーき31♡」


「なんでか、って、そりゃ君がニヤついてたから。人が赤裸々に胸の内を吐露してるのに、嬉しそうにしてたらイタズラしたくなっちゃうでしょ?」


好・き32


「ふふっ。身体がくっついてるから、心臓がバクバクしてるの伝わってるよ? ちょっぴりだけどね」


「——ねぇ。ドキドキしてる?」


「私は……すごくしてる」


「だーめ。聞かせてあげないんだから」


「……だって、恥ずかしいし。胸が当たるのとか」


 //演技依頼 耳かきを再開する


「み、耳かきしたげるから忘れなさいっ」


「んっ……ここらへんはどうだ~?」//耳奥の横側に触れている


「ゴソッ、ガリッ、って音する……やば、なんかハマっちゃいそう」


「こう、楽しい、みたいな? あははっ」


 //演技依頼 耳かきをティッシュで拭く


「それじゃあ、この白いふわふわの方でやるね」


「へ? あ、あぁ。これ梵天って言うんだ。知らなかった……さすが君だね」


 //演技依頼 梵天を耳の中に入れる


「てことはさ、梵天がどういう意味かも知ってるの? 由来とか、そういう小話」


「ふむふむ。神様の名前……いやなんで神様?」


「へぇ……そうなんだ。服についてた白いふわふわが由来なんだぁ。その梵天なんちゃらって名前も聞いたこと無いし。さっすがぁ♪」


「……っと、そろそろいいかな? じゃあ、右耳は終わりだね」


 //演技依頼 右耳に息を吹きかける(長めに)


「ふふふ、ゾクゾクしちゃった? 可愛くビクビクしてるの分かるんだぞ~?」


「よし、ごろんってして? 次左耳やるから」


「何、なんで不満そうな顔してるのさ」


「……うぇ、キモっ。私の匂いが嗅げなくなることがそんなに嫌?」


「柔軟剤の匂いなら、別に他の人も同じ匂いするでしょ。私にこだわる必要はないよねっ」


(ぶっきらぼうに)

「黙って真っ暗なテレビでも見てなさい。これだから君は……早く死なないかなぁ。好き33


「はぁ……私もなんかトリップしてたかも。顔の向きを指定してないのに一瞬でお腹向いたところから気づけたはずなのに……」


 //演技依頼 深呼吸


「気を取り直して、こっちもいくね」


「でも、さっきと同じじゃつまんないでしょ? だから……じゃーん。綿棒」


「これ見たことある?」


 //SE 綿棒の箱をシャカシャカと振る音


(おどけたように)

「これはね、ママのやつなの」


「平成の半ば……私たちが生まれたときくらいって、プリクラ撮ったら綿棒とかつけまが一緒に出てきてたんだって。それの余りだよ。ちゃんと新品だから安心して」


 //SE 箱を開ける音


「ふふ、どう? くすぐったい?」//綿棒で耳介じかいを撫でている


「こうされると、奥に欲しくなっちゃうかな?」


「ほら、私にお願いして? 『奥にください瑠奈さま』って」


「あれぇ~、聞こえないぞぉ~?」


「ふふっ、うふふっ、あはははっ! よろしい! この瑠奈さまがその願い、叶えてしんぜよーう!」


(小声で)

「『瑠奈さま』って……なんか変な気分になっちゃう……♡」


(嬉しそうに)

「カリっ……ふふっ……カリ……っ!」


「な、なんでもないよぅ。黙ってじっとしててっ」


「カリ、カリ……っ」//少し強めに耳かき


(挑発するように)

「ん、強いって? さぁ、どうでしょう」


「はぁ……? 外耳道がいじどうがどうとか知らないよ……初めて聞いたしそれ」


「分かった、分かったから。損傷とか炎症とかのリスクねごめんってばぁ……」


(小声で)

「ちぇっ……ちょっぴりイジワルしようとしたら医学知識で殴られるの、すごくムカつくぅ……」//力を元に戻す


(怒りをにじませて)

好き34。早く好き35


「日本語が変なのは君より文系な私が一番分かってるもん。100回の呪いのために稼がないとだからね」


「……ふぅ。そろそろ仕上げに入るよ」


「怒りを込めて……ふわふわの梵天でも食らえい!」


「ふふん。ゴソゴソ、気持ちいい?」


「……自分で聞いといてなんだけど、絶対気持ちいいだろうなぁ。あたまふわふわーってなりそう」


「ぅへ、言ったらされたくなってきた……」


「べ、別に今してほしいなんか言ってないし! てか君にされたいとも言ってないし!?」


「嫌ってわけじゃ、ないけど……」


「ててっ、てかさ! そもそもこういうのって付き合ってるカップルがやるものじゃない……の?」


「確かに、了承したのは私だけどさ……」


「友達と恋バナしてるときも、さすがに膝枕とか耳かきの話題はあんまり出てこないから」


「いやいや、幼馴染だからいいなんて流石にないでしょ……」


「……ある? 本気で言ってるの? それ」


「まぁ、君があるって言うならいいよ、別にっ」//梵天を引き抜く


「これでおしまい」


 //演技依頼 耳に息を吹きかける(短く3回)


好き36っ」


「ふふっ。これが欲しかったんでしょ?」


 //演技依頼 数秒間頭を撫でる


「ちなみに今までに何回好きって言った?」


「え、36回……? 3日かけて?」


「一週間間に合うかな……好き好きいうこととか、あるわけないし」


「こほん。とりあえず、そろそろ姿勢戻そっか」


 //SE ソファが小さく沈み込む音(体勢を変える)


「ふぅ……なんか達成感。やりきったぞって感じ」


「……ね、ねぇ。私にも膝枕して」


「正座しなくていいよ。その姿勢のままでいい」


「——あ。君の言う通りだよ……別に膝枕だからって正座しなくても良かったんじゃん」


「くっ……先入観に敗北してしまった……」


「現実逃避したい……穴があったら入りたい……」//主人公の膝枕に倒れ込む


(以降くぐもった声)

「……好き37


「ほんとに……好き38なんだから」


(独り言のように)

「いつからだろ、好きになったの……」


 //演技依頼 匂いを嗅ぐ音


「この匂いも、好き39……安心できる」


「どういう好きがいいんだろ。元気に? 冷静に?」


「それとも……ありのまま——好き40


 //SE ピロリンとSNSの通知音


(ガバっと起きる)

「誰からだろっ」


「……っ!」//息を呑み、数秒呆然とする。その間に主人公が帰ろうとする素振りを見せる。


「え、ちょっと。まさか帰る気じゃないよね?」


「——お泊まり、しよ?」


「……昔たまにしてたじゃんね。どうせ明日の昼までパパもママも帰ってこないんだし」


「そうだよ。ふたりとも、今日は帰ってこないの」


「パパは会社の都合で泊まり。ママは中学の友達と旅行。ね?」


「だから——今夜は寝かさないよ」



 =====

 この子可愛すぎませんか?

 殆どは僕の趣味です……


 さて、次回予告ですが……

 幼馴染系ツンデレ黒髪美少女と二人きりでお泊り——

 何も起こらないどころか、まず「お泊り」が起こっているところから始まってるので、逆にどうなっちゃうんだ~~~!?


 お楽しみに!!!!

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