第9話 情なき戦場の情
合流地点に着くとISAが居た、やはり第2世代型だ
「グリムリーパー!セインだな!」
聞きなれた声が聞こえる。スラムの……
「ラインマンか!まさかみんなスラムの連中か!なぜ…………」
そういいかけると止められ武器を渡される
「シールドは上腕部にマウントする他は銃剣付きマシンガンだ!耐久はソ連製だから期待してくれ!」
了解してから武装を受け取る
リロードは出来ないが……弾数は多いからどうとでもなるか……
「この辺は抑えておく!セイン!任せたぞ!」
「あぁ!ありがとう」
そのまま機体を動かし倉庫郡に飛んでいく。
倉庫の中は罵声の声で響き渡る。
時折遠くからなのか微かに爆発の音や金属音が聞こえてくる。
目隠しされた私の感覚は聴力の方に全てを回される。
「…大丈夫だよ、きっとあの人やマヒロの大事な人が助けに来てくれる……それまで我慢だよ…」
「…はい…」
そうは言っても正直怖い…いつ殺される?いつ?いつ?そんな恐怖はまだ私を支配する。
戦闘音や罵声に怯えのだろうか……他の人を恐怖の声を漏らしている……それどころか微かにアンモニア臭も漂う。
「…大丈夫……セイン……私は……」
そう言い聞かせれば……
「奴が!来やが……」
「そっちはもう何も……」
「人質は……ていく」
「逃げ……」
怒声は恐怖まじりの声に成り代わっている
「きゃああぁぁ!」
倉庫が大きく揺れホコリが落ちてくる。
その衝撃と音に驚く
「何処だァ!」
「!セイン!」
セインが来てくれた!彼の声が倉庫に鳴り響いたんだ!
「…今のようだね……」
おばあちゃんの小さな声を聞きもらさなかった
何を?と思うと
「あっ?……」
男の声と骨が軋む不快な音が聞こえた
そして
目に光が映る。
「マヒロ!全員を解放するよ!」
「え?」
おばあちゃんがその手に拳銃とナイフを握り立っていた
「…質問はあと!さっさと動く!さっさと外で暴れてる彼氏安心させに行くよ!」
外ではまだ鈍い金属のぶつかり合う音が聞こえる。
この倉庫の大きさ……きっと元は建設用WFやAA用の格納庫だったのかな……
荒らされているとはいえ、工具やATF、油圧に各種燃料なんかもある
1人ずつ解放して行きながら考える
ふと上を見上げるとスプリンクラーがある。
「おばあちゃん!あのスプリンクラー使えない?」
「…いい考えだけど無理ね、あのタイプはコロニーでは珍しい煙探知だけど、ホコリがクソほど舞ってるのに反応しないって事は使えないわ」
とりあえず外へ脱出したいもののどうしようか……
「あの……東雲さんですよね?」
1人近くにいた少女が問いかけてくる、
その顔を見たら私も見知った顔だった……
「…あなたは…確かAMIの……ローランさんでしたね何故貴方も……?」
ふと周りを見渡す。
捕らわれていた少年少女全てに見覚えがあった…総勢7名の内6名その全てがこのコロニー軍需産業を担っている会社の要人の子供や孫だ…
「まさか……!」
全てのピースが繋がった……いや、目的と言うべきか
その裏までは読めないにしてもこのコロニーで半グレ見たいなのが集まっていた理由
それは多分ここのコロニーは軍事拠点としては地球圏や、ロバート星系やその先ヴォルフ星系にも近く足掛かりに使える、そして何より兵站拠点にもなっているからここに軍需産業が存在している……となると……此処をテロ屋や軍事的拠点として制圧する目的があるのね
つまりここに居る半グレは元テロリスト若しくは反政府組織と言った何か……大元は?地球圏ならアフリカ・中東連合?それとも南米統一国家?東南アジア宗主国?分からない……宇宙だと革命軍や宇宙解放やら多いけど……
そういえば軍内部にも敵がいて動かせるだけの金もある……やはり地球圏?
「おばあちゃん!もしかしたら敵は……!」
「…まぁ……考えてる事はわかるよ、だけど先にどうにか此処を出なきゃ……巻き込まれて……」
揺れは大きくなっていく。
男たちの声も倉庫の中はよく響く
「…!おい旧ロシアのISAも出やがった!」
「あの裏切り者の腰抜け共が!」
「No.20も死んだ!人質連れて……」
その声が聞こえた瞬間倉庫がさらに揺れる
そして……
「来たぞ!ゴミ屑共!彼女達を解放しろ!」
セインの声が鮮明に聞こえた!もうここまで来てくれた!
「やばいぞ!No.11と13も出せ!ここで死んだら計画が……」
地響きとセインの声は更に近づく
その音と共に人間の呻き声や微かに何か柔らかいものが潰れる音も聞こえる
そして……
私達のいる倉庫の壁が壊された
中から見慣れた彼の機体が出てくる
「グリムリーパー!セインね!助けが来たわ!皆!」
「やった……助かったのか……」
少年が呟く
「…黙示録……まさか……彼が?」
おばあちゃんが呟く……何で判断したの?
そんな各々思いをつぶやくと
「こちら!302増加救出チームだ!お前に感化された寄せ集めだ!人質はいるか!」
他の人達も来ているの!これなら!
「302!遅せぇ!ジジイ共に先越されてんぞ!人質はここに居る!俺は清掃してくるから任せたぞ!」
セインの声も響く、多分無線が繋がってないからスピーカーで話しているんだろうか
だけどまだ敵は居る、セインの後ろを見ると人影の様なものも見える。
セインの機体が振り向くと何かを投げた
何か空を切り裂く音が響く
「!対人兵器を……?何処で入手……いや……今は」
「ランディングゾーンはどこだ!」
「此処で良い!303チームが人員輸送用の装備でこっちに来ている!」
まるで了解と言わんばかりに周りをライフルで撃ちまくっている
彼の機体は腰に剣が着いた銃を着けて居る。
右腕は前腕が動かないのか力なく振り回されている
そして肩に見慣れぬ盾が着いている
そして機体自体はもうボロボロに傷つき戦闘の激しさが物語っている
コロニーは大丈夫なのか……
「こちら03!手練が2機いやがる!倉庫街近くだ!もう半数が落とされた!援護を!」
「ポイント送る!全力で突っ込んでこい!そしたら俺が落とす!302!聞こえたな!あんたらは303の護衛!やるぞ!」
スピーカーの音から凄惨さが伝わってくる。
「おい!人質共!助けが来る!着いてこい!」
セインに指示されるがまま彼が破壊した所からいた部屋を出る
「う……そ…?」
子供くらいのサイズの針が地面や壁に突き刺さっている。
そして人もだ……形を保ったものは時折ビクビクっと動く
生きている物も居るが足や腕、半身が無いものまで
酷い物は人の形を保ってなく元がなんなのかすら分からない。
そして……この地獄の様な惨状を作ったその機体はゆっくり私達の前を歩いて居るがその足には衣服や肉の塊だろうか……こびりついてそして紅く染まっている。
泣き出し吐き出す者もいた
私も吐きたい……歩く足が止まる。
「…!ガキ共!さっさと行くよ!あんたらが出てこなきゃ!次にここでくたばんのはあたしらの番だ!」
「おばあちゃん……」
彼女が周りの子供を引き連れて走る無理にでも引っ張って叩いてでも走らせる。
そして
外に出る
外は……
街並みに黒煙が上がり火薬の匂いや血の匂いが混ざりあって噎せ返りそうだ
セインの機体は……もっと前に居る
周りには33MPと書かれた白い機体や他の企業の
機体らしきものが警戒している。
そして……
「来たぞ!」
私たちは助かるのか……そんな希望が芽生えた
機体を浮かし前に飛び出す。
何人殺した……?何機落とした……?
まぁいい……そんな事よりまだ手練がいたか……だが……この機体なら今の装備なら勝てる
地を走る機体を見る。
あのカラー……友軍機だな!
その後ろか!
黒色の機体を見る
骸のような顔に細い機体そして大鎌……!
覚えてる。いや!記憶に焼き付いた機体だ
「死神が……2機!」
奴らもこちらに気づくそして
「てめぇ……!そのエンブレム……黙示録じゃねぇか!なぁ!13!彼奴だァ!」
「わかってる11……No.4を落とした奴を落とせば僕らも名前が貰える……」
そうしてこちらに急接近する
連携が取れてやがる……クソ……
落ちてる武器で対応しながら攻撃を掻い潜る
近接武器しかないのかカマで切り伏せてくる。
それを盾で逸らしパイルの先で弾きながら何とかする。
こちらから射撃が出来ない。
上手く弾きながら距離をとる
「…撃ってこないのか?」
そう……前に戦った奴は撃ってきた
「はぁ?てめぇを斬り殺す為に決まってんだろ?それにこの黒無常にはそんなもんねぇよ!」
射撃武器は無いと……まぁ機体観察できる時間が出来たからな……あらかたわかったが
ほう…無常か……機体名にその系統を使うと言うことは……つまり……
「…てめぇら……人民解放戦線の連中か……250年も前に日本とアメリカに消された国の燃えカス共か……未だに超大国の夢を見て暴れてるらしいなぁ?」
そう多分奴らは250年も夢に駆られたゴミ屑の集団……テロリストと言った所だ……
アフリカ……東南アジアの国にパイプを持ち復活させようと躍起している集団……つまり裏にはその辺が居るという訳だな?
「てめぇ!言ったなぁ!」
「今の言葉、貴方は惨たらしく死んで貰いましょうか!」
その言葉に切れたのか突っ込んでくる。
御しやすいな!
だが……相手の方が速度は早い、反応はこちらだが……
攻撃を逸らし続ける
武器は1個……分の悪い戦いだがそれでもな
その剣戟はまるで舞うように受け続ける
落ちてた実体剣でどうにかするとは……
前方では剣戟が繰り広げられている
片腕しか使ってないのに……これがエースの実力なのね……
「あのあんたの彼氏……黙示録だよね……あんなバケモンがここに居るなんて……」
おばあちゃんの言葉に
「…えぇ……一応隠してるんですが……」
「まぁ…あのエンブレムはね……知ってる人が見れば一瞬よ……」
エンブレムを見る
騎士の姿に冥府の門と白き王冠、そして赤く滴るようにあしらわれた剣そして足元には踏みにじられたペスト医師のマスク、そして……赤と白と青と黒で塗られた騎士とその馬……
「……えぇ……元はただの騎士だったらしいけど……彼の戦い方から黙示録に……そしてそれを表す4騎士を1個に纏めたものらしいわ……」
「……なるほど……あのマークにはそんな意味が……」
彼の戦いを見続ける……押されてるはずのなのに圧倒し続けるその集中力と精度は素人目で見ても恐ろしさを感じる。
2方向からの攻撃!
「セイン!」
思わず叫んでしまった
しかし彼も歴戦の戦士だった……
壊れた片腕を振り無理やり止めた
そして大きく彼が後退する
さらに苛烈な攻撃を受ける
それはまるで蜘蛛の巣に囚われた蝶のように
前後左右から攻撃を受け続ける。
それでも尚攻撃を逸らし止め続ける……
だけど……え!
彼の機体が後ろに仰け反るようにして倒れる
「嘘……待っ…!」
横からもう1つの影か……飛び出す
「クソガキ!待たせたな!」
倒れた機体を起こすとそこにはISAが立っていた
「…遅せぇんだよ……クソジジイ……」
たけど助かった……今の状態だと向こうの救出部隊も逃げれない……ここで敵を抑えなきゃならねぇんだ……、それに8機のうち戦闘できるのはもう4機しか居ない……腕も立たない……
「ジジイ!あれは早い!だが一機抑えてくれれば……」
「任せたぞ……セイン……あの後ろにはワシの女も居る……だから……」
任せろそういい口角を上げる
攻勢に出る
後ろから銃剣付きマシンガンを取り出す
そして一気に接近し切り込む
相手はその動きに対応し攻撃を受ける
射撃は撃たない……まだだ
「なんだよ!いきなり!調子乗んなよ!」
相手も騒ぐ確か……
「11だったか?名無してめぇじゃあ俺は殺せねぇよ!」
鎌を受け止めた銃を手放すそして
相手を組み伏せてから止める……そして……
「動くな!13!これ以上動けは……こいつを殺す!」
セルゲイの機体も満身創痍だ……固定武装は残っているがそれでも旧式……ロシアの兵器構想のおかげで助かっている節はある
が……
「わかった……下ろすから!」
そう言って鎌を下ろす
射撃武器は無いと言っていたから油断していた
11が機体から降りるのを確認する……そして
302の一機が11を回収しに近づいた……
その瞬間だったカメラをそこから外した俺は
油断していた
目の前で302の機体が爆散する
驚愕に思考が止まる
セルゲイの方に向く
一瞬の油断だった……俺の判断は間違っていた
ソシテ…
13の機体がセルゲイを……コックピットを……
突き刺した……
頭から何かが弾ける……
「貴様ァァァァァァ!死にさらせぇ!!」
11の乗っていた機体の鎌を奪いあげぶん投げる
それは吸い込まれるように敵機の頭に突き刺さる
「な!…見え!」
そのままスラスターを吹き相手を突き飛ばす
転んだ機体に馬乗りになり
片手で殴りつける。
衝撃が地面を伝わり土埃と鈍い金属音を上げる
時折その衝撃でパイル用の弾薬が火を上げ射出されては戻っていく
「や…やめ……嫌だ……死に……」
13の恐怖に歪んだ声が響き渡る
次第に声は聞こえなくなっていく
「死ね!死ね!潰れろ!消えろ!」
俺の声だけが……泣いているのか怒っているのか自分でも分からないだけど
「死にやがれやぁ!」
最後の一撃を入れる
機体の腕はもうボロボロで原型を保っていない
殴られた機体は上半身などが殆ど潰れて消えている
ジェネレーターも途中で止まっていたのだろうか爆発は起こさない。
地面は抉れ真ん中には赤と黒に……染まっていた……遺体なんぞは……残らないだろう……
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺の慟哭の声だけが……その場に残った……
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