これが現実

恐れていた

契約社員としてだが、働き始めることが決まった実空みそらバパ。家族の為ならば何でも受け入れるそのつもりでやっていた。


ある日、仕事の休憩中にみんなどこの出身なのか。雑談をしていると自分にも聞かれた実空みそらパパ。ニュースでも放射能汚染が取り上げられていたので、自分が東北出身というとどんな顔をされるのか。ウソも方便ではないが、ここはウソをつくべきなのか?それともホントのことを言うべきなのか?しばらく沈黙していた。


社会人ならばある程度の教養とニュースや新聞で目にしているだろう。そう思って勇気を出して宮城県みやぎけん栗原市くりはらし出身。あの地震で震度7を記録した街から来たと答えた。


「その……栗原市くりはらし宮城県みやぎけんのどこにあるか分からないけど、放射能汚染とかは大丈夫なの?もし、汚染してるならばうつさないでよ」


みんながみんな寛容、そんなことはないと頭では分かっていた。だが実際そのような言葉を投げかけられると傷つくし、言うことが子供じみている。これがあの地震を経験をしていない外野の意見なのかと改めて突きつけられたような気がしていた。


言われた業務は行う。挨拶や礼儀は当たり前にやって誰もやりたがらない雑務やトイレ掃除等も率先してやる。契約社員だからひとまず更新してもらわないとまた探さなければならない。5年経てば5年ルールで正社員になれる。いや、可能性がある。


地元の宮城県みやぎけん栗原市くりはらしで家を再建することをモチベーションにして今の仕事が終わってからダブルワークも惜しまない気持ちでいた。


だが、現実は自分の思い通りにはいかない。

次の契約更新を迎えようとしていたある日、人事から呼び出された実空みそらパパ。


契約更新なら基本的にサインして捺印すれば終わりなのだが、この日は何となくいつもと違うような雰囲気を感じていた。どうしてなのかいい予想というのは当たらず、悪い予想に限って当たるのが多い。


栗原くりはらさん、業務も頑張っていて誰もやりたがらない雑務を積極的に行ってくれて周りともコミュニケーションを取ろうとしてくれてありがとう。だが、申し訳ないけど契約更新は出来ない」


その言葉を聞いて言っている意味が分からなかった。業務の他に誰もやりたがらない雑務を積極的に行って、コミュニケーションを取ろうとしている。コレは明らかに評価している言葉なはず。なのに、契約更新をしないのはなぜなのか。思わず反論してしまった。


「どうしてそこまで仰ってくれているのになぜ、更新してもらえないのですか?納得出来る理由を教えてください」そう部屋の外まで聞こえるくらいの声で聞いた。


「周りの人から栗原くりはらさんが宮城県みやぎけん出身で放射能汚染をしているのではないか。自分も同じようになるのではないかとこの声が多く挙がってね……」


こちらとしては納得出来る理由を聞いているのにも関わらず理由が理不尽で全く根拠の無いウワサに踊らされている。スマホでこれだけ離れているから問題ないと根拠のある証拠を示しているのに全く分かってもらえない。


もういいやとそれなら結構ですと立ち去って、次を決めずにケンカ別れ。いや一方的に言われたまま仕事を探すことになった。

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