不透明

身震い

同じ日本、近くの県で放射能漏れ出たと聞いた時からもしかしたらそうなるのではと思っていたことが現実になってしまった。


実空みそら達がいる、宮城県みやぎけん栗原市くりはらしは津波の被害もなければ放射能漏れの被害もないから大丈夫。そう楽観的な話では決してない。なぜならば近くには山があっていつ土砂崩れが起きてしまうか分からないし、道は地震で地割れを起きている。


それに生活もままならない、仕事をするにも行けなくて稼がなきゃいけないのに向かえない。仮に行けてもまず、現状復旧にどれだけの時間にかかるのか見通しが立たない。それにいつ襲いかかるか分からない余震にも備えなきゃ行けない。


自分達も地元に残って仕事を探すのか、それとも全く知らない土地で暮らして仕事を探すのか。自分達もどうするか人生の岐路に立たされていた。


親戚が遠くに住んでいるならばスグに移動しようと決められるかも知れないが、そうでない人は中々決められずにいる。市民体育館にいた周りの人達が1人、また1人と県外に移っていく。


生まれて間もない実空みそらがいる為、自分だけでなくてどうするべきなのかと考えているパパとママ。周りは優しくて避難所の体育館にいる人達が自分の子供かのように優しく接してくれていた。


しかし、ホントにこれでいいのかともどかしい気持ちでいる。地元を離れるにしても頼れる親戚がおらず残っても大変だし新しい環境に順応出来るにもどれくらい時間がかかるのか分からない。


自治体からは仮設住宅が提供されてそこに希望する人がいて、多くの人が殺到して高倍率で当選するかどうかも分からない。それならば地元を離れて知らない土地に行って、慣れるまでには時間がかかるが余震の揺れの心配をせずに済むならばと決めた。


初めて東北を離れることになった栗原くりはら家だが、住めば都というものの暮らすとなればある程度の文化や食事に就業、そしてここでならある程度やっていけると思えるくらいではないと難しい。それがたとえ数年であったとしても。


実空みそらパパは住み込みで働けるところを探した。人手不足だから契約社員ならばと決まったものの、ずっとここにいられるか分からない葛藤の中で働いて養っていくことを決めた。


その中で地域に溶け込もうと休みの日にはお祭りやイベントに参加をすることによって顔馴染みを増やして人望を厚くしよう。そうすれば今の契約が更新とならなくて他の土地に移り住むことになってもその人伝えで仕事を紹介してもらえるかもしれない。


なりふり構わず、自分に出来る事は何か。薄っぺらいプライドよりも人脈を作って困ったらいつでも帰っておいてと言われ方が嬉しいに決まっている。


同じような思いを抱いている人が自分達だけでなく多くの人が感じているだろうな。当面の目標は地元に戻ってまた家を再建し、家族で暮らすこと。そう決めた。

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