第4話・涙のあとに、届いた言葉

涙のあとに、届いた言葉

それ以来、彩花は公園に行けなかった。


(私は、ただ助けられただけ…子どもっぽいって思われてるかも)


放課後、ひとり教室に残ってぼんやりしていた彩花に、

突然、学校の職員室に蓮が現れたという噂が広まった。


「佐藤彩花さんって…いますか?」


先生に案内され、教室に蓮が入ってくる。


「彩花。ちゃんと話したいことがある」


他の生徒たちがざわつく中、蓮は彩花の前に立って、静かに言った。


外の校庭で二人きり。


「この前、公園で会った子…いとこ。近くの高校でたまに来るけど、彼女じゃない」


「……え?」


「俺、勘違いさせたかもなって思って。彩花が来なくなって、ずっと気になってた」


彩花は、唇を噛んでうつむく。


「……私、蓮くんと話す時間が、すごく好きだった。でも私、中学生だし、子どもだし…」


「……彩花は子どもなんかじゃないよ」


その一言が、彩花の心にまっすぐ届いた。


「俺にとって、あの日出会った彩花は、困ってても自分で立とうとした、強い子だった。俺は…また会いたいって思ったんだ」


彩花の目から、涙がこぼれる。

でも今度は、それは温かい涙だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る