第46話 遭遇。2
「見つけたぞ! ローゼンクロイツ伯爵を毒殺し、ミエルの家に火を放った極悪人め。王の名の下に、成敗してくれる!!」
フィオナは馬から駆け降りると、そのまま『魔剣ヴォルグ』を上段に振りかぶる。が、振り向いた俺とルルを見て動揺する。
「え? ゲオルグおじちゃんとルル!? なんで??」
フィオナの一瞬の隙を、ルルは見逃さなかった。素早く懐に飛び込むと、そのままみぞおちに容赦ない飛び膝蹴りを食らわせる。
完全なる無防備状態で、痛打を浴びたフィオナは、そのまま後方に吹っ飛ばされる。
本来であれば、致命傷だ。が、フィオナには『魔剣ヴォルグ』がある。『魔剣ヴォルグ』は煌々光を放ち、フィオナの傷を癒した。
すくりと立ち上がったフィオナは、遅れてやってきたアイザックに叫ぶ。
「アイザック殿! これは一体どういうことだ?」
アイザックは、馬上からフィオナを見下しながらにやにやと薄ら笑いを浮かべながら返答する。
「見ての通りです。ローゼンクロイツ伯爵を毒殺し、マシュー卿の邸宅に火を放った極悪人、そしてその罪人を助けた、愚かな格闘王ですよ」
「ウソだ! ゲオルクおじちゃんがそんなことするわけが無いよ!!」
「ウソ……と言われましても。彼には、秤の重りを管理する金庫に、ベラドンナの根を隠し持っていた確たる証拠がある。マシュー卿の邸宅に火を放ったのは、漆黒の聖女ミエルの自白の力を恐れてのことでしょう」
「ウソだ! 信じるもんか!!」
アイザックは「フッ」と失笑をすると、フィオナを見下しながら話をつづける。
「まあ、信じようが信じまいがあなたの勝手です。ですがフィオナ殿、あなたは、王に宣誓をした。まさか、命よりも重い王への宣誓を反故にするのですか?」
「それは……」
なるほど、フィオナはアイザックの口車にうまいこと乗せられたわけだ。
アイザックは、わざとらしく頭を抱えながら話をつづける。
「いやはや、これは困りましたね。フライハイ連合国家に名を馳せる、太陽の騎士団の隊長ともあろうお方が、私情で任務を放棄するとは、誠に遺憾です。王もさぞかしお嘆きに……」
その時だった。
ビュン!!
イザベラが放った矢が、アイザックの頬をかすめて樹木に突き刺さる。
ん? 矢に紙が結び付けられてある。
「イザベラ!! 貴様、血迷ったのか!?」
激高するアイザックの目を盗み、俺は、イザベラからの矢文を見る。
………………これは!!
「ルル、逃げるぞ!!」
「え? はいなの!!」
逃げる俺たちの後ろから、イザベラの声が聞こえてくる。
「アイザック
俺とルルは、一目散に逃亡する。
フィオナたちは追ってこない。イザベラの策が功を奏しているのだろう。
俺たちは、イザベラの矢文を頼りに逃亡を図る。矢文には一言『北限へ』と書かれてあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます