第45話 遭遇。1

「私があなた達に同行しているのは、犯人探しに協力するためでは無い。騎士にとって命よりも重い『王の宣誓』を反故にしやしないか、この目で見張るためですよ!!」


 イザベラは確信をする。

 間違いない、こいつだ! この男が、ローゼンクロイツ伯爵を毒殺し、ミエルの邸宅に火を放った張本人だ。だが、しかし…………。


 歯噛みをするイザベラに向かって、にやにやと笑みを浮かべたアイザックが言い放つ。


「くくく、なんですかその目は。イザベラ、あなたは、私を疑っているのですか?」

「……………………………………」

「悲しいですねぇ。義理の妹に嫌疑をかけられてしまうとは。しかし、私が犯人という確たる証拠はありますか? もしあるのなら、見せていただきたい」

「………………………………くっ!!」


 ずる賢いこの男のことだ、そう易々と尻尾をつかむことはできないだろう。


(最悪の事態だけは、避けなくてはなりませんわ)


 イザベラは、フィオナの背中を追いながら、ゲオルクたちと遭遇しないことを祈ることしかできなかった。


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 俺とルルは、森の関所に急いでいた。

 ミエルを失った今、アイザックに罪を自白させるのは至難の業だ。


 事態は最悪だ。こうなった以上、ルルが住処にしていた森に潜伏しつつ、アイザックの犯行をうらづける確たる証拠を、地道に探すしか無い。


「あう……」


 慣れないドレスを身に纏っているためだろう。ルルが樹木の根に足を取られる」


「大丈夫かルル?」

「この格好じゃあ、動きづらくてしかたがないの」


 ルルは、スカートの裾を掴むと、ビリビリと4つに裂いて両端を結ぶ。

 ルルの、カモシカのようなスラリとしたふとももがあらわになった。


「ミエルからもらった大事なお洋服だけど、森で住むには動きずらいの」

「すまないな、ルル。俺を助けてしまったばっかりに。苦労をかけてしまって」


 俺の言葉に、ルルはブンブンと首を振る。


「こんなの全然苦労じゃないの。ゲオルクおじさまと離れ離れになるほうが、よっぽど辛いの。ルルはもう、ひとりになりたく無いの」

「……ありがとう、ルル」


 俺たちは森を駆け抜け関所に向かう。その時だった。背中から声が聞こえてきた。


「見つけたぞ! ローゼンクロイツ伯爵を毒殺し、ミエルの家に火を放った極悪人め。王の名の下に、成敗してくれる!!」


 この聞き慣れた声……間違いない。

 早馬を駆り、魔剣ヴォルグを手に持ったフィオナだった。

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