第44話 追跡。

 ウエステッド王に宣誓をして、ローゼンクロイツ伯爵暗殺と、マシュー邸を放火した凶悪犯の探索任務に着任をしたフィオナは、遠征で疲れている部下たちに休みを与え、森の関所に向かって早馬を駆っていた。


「いやはや、聞きしに勝る勇猛さだ。ついていくのがやっとですよ」


 3ジョーウ(約9メートル)ほど先を駆けるフィオナの馬を、イザベラとアイザックが追いかける。


「くくく……フィオナ殿は、よほど、犯人が憎いと思われる」


 フィオナを口車に乗せ、ゲオルク追跡の任務に着かせることに成功したアイザックは、込み上げる笑いを堪えるのに必死だった。


義兄上あにうえ、聞きたいことがございます」

「なんだい? イザベラ」

「わらわのお兄様……すなわち、ローゼンクロイツ伯を殺した犯人は、ベラドンナの毒を使ったと言っておりましたが、本当ですか?」

「ええ、間違いありません。犯人はベラドンナの毒を少量づつローゼンクロイツ伯爵に飲ませつづけ、死に至らしめたのです」


 アイザックの言葉に、違和感を感じたイザベラが質問を続ける。


「犯人はなぜ、毒物を1ヶ月も飲ませ続けることができたのでしょう?」

「………………………………………………」

「そんなこと、ローゼンクロイツ伯爵と親しい人間ではないととても不可能です。つまり犯人は、わらわたちもよく知っている人物ではございませんこと?」

「………………………………………………」


 イザベラの質問に、アイザックは無言をつらぬく。イザベラは質問をつづける。


「犯人は逃亡後、マシュー邸に火を放ったとおっしゃっておりましたが、なぜ、そのようなことをする必要があるのでしょう? 罪人を自白させるミエルさんの聖なる力を恐れている? いいえ。犯人は、既に罪を暴かれている。今更、ウソを暴かれることを恐る必要はありません。犯人の行動は、とてつもなく不可解ですわ」」

「……さあ。凶悪犯の気持ちなど、私にはわかりませんし、わかりたくもありませんね」


 イザベラは、アイザックを問い詰める。


義兄上あにうえ、今追っている人物は、もしかしてゲオルク殿とルルさんではございませんこと?」

「………………………………………………」


 しばらくの沈黙ののち、アイザックは口をひらく。


「くくく……ご名答。さすがは百出のイザベラ。前を疾る猪突猛進のバカ娘のようにはいきませんね」

「やはり! 今すぐフィオナを止めないと!!」

「くくく……止めても無駄だ」


 アイザックは、慌てるイザベラに向かって、 細い目をこれでもかと見開いて、言い放った。

 

「私があなた達に同行しているのは、犯人探しに協力するためでは無い。騎士にとって命よりも重い『王の宣誓』を反故にしやしないか、この目で見張るためですよ!!」


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