第18話 伝説の魔道武具師を追放した男。
太陽の騎士団のライが、魔道武具師ゲオルク・バウエル探索の旅に出て2ヶ月ほどたったころ、ゲオルクを追放したバトロン男爵が営む工房は、閉鎖の危機に追い込まれていた。
研究費をあまりにケチりすぎた為に、工房の技術が時代の進化に追いつかなくなったのだ。
「バトロン男爵、何度も申し上げている通り、魔鉱炉の老朽化が限界を迎えています。一刻も早く新調しないと、いつ事故を起こすかわかりません」
「うるさいうるさい! お前たちが無能なせいで、工房の経営が火の車なのは分かっているだろう!! お前らは、すぐに無駄遣いをしようとする。経営を何たるかをしらぬ癖に、偉そうな口をたたかないでくれ!!」
バトロン男爵は、工房長の意見に、全く聞く耳を持とうとしない。
「しかし……バトロン男爵……このままでは研究もままなりませんよ。研究資金がなければ、新製品を作ることなどできません」
「うるさいうるさいうるさい! まったく使えないやつだ。私の経営に文句があるなら、今すぐこの工房を出てってくれ!!」
「……わかりました。今までありがとうございました」
「はいはい、ご苦労さん……」
バトロン男爵は、去っていく工房長の背中に向かって、もごもごと小さな声で、でもはっきりと「死ねばいいのに」とつぶやいた。
工房の責任者であるはずのバトロン男爵が終始この有様なものだから、優秀な錬金術師はつぎつぎと工房を去っていき、ますますジリ貧になっていく。
しかし、愚かなバトロン男爵は、工房を去っていくものたちを無能と断じ、経営がうまくいかない責任も、すべて他人になすりつけていた。
そんな折、バトロン男爵の邸宅に、一通の手紙が舞い込んでくる。
手紙の封には、十字の大きな棘を持ったバラの封蝋が押されてある。錬金術の国ウエステッドの中でも、最も大きな工房を持つ、ローゼンクロイツ伯爵の紋章だ。
「はて、錬金ギルドの長が、一体何のようだ? まさか、私の工房が、無能どものせいで経営不審に陥っていることを理由に、工房をたためと圧力をかけてくるつもりでは……?」
バトロン伯爵は、ペーパーナイフで書簡の封を切ると、おっかなびっくり封書を開く。
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初めまして、バトロン男爵。
ローゼンクロイツ家の長女、イザベラと申します。
貴公の工房に大変興味があり、一度見学をしたく存じます。
工房に興味をもっているのは、わらわだけではございません。
ドラゴン殺しの誉れ高い、太陽の騎士団の隊長フィオナ・べルトイン。
漆黒の聖女、ミエル・マシュー。
そして、先の武闘大会で優勝した格闘王、銀狼のルルも、バトロン男爵の工房に興味をもっておいでです。
どうか、良いお返事をまっております。
イザベラ・ローゼンクロイツ
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「うひ、うひ、うひひひひ」
イザベラからの手紙を読んだバトロン男爵は、にちゃりと顔をゆがめて、下品な声で笑う。
いくら才女と名高いローゼンクロイツ家の御息女といえ、所詮は小娘じゃあないか。
世間知らずの小娘どもを騙すことなど造作もない。たっぷりと媚を売って、支援を搾り取ってやろうじゃないか!
「どうやら俺様にもツキが回ってきたようだ。うひ、うひ、うひひひひ」
ゲオルク・バウエルを追放した責任を問われるとは、想像だにしていない愚かなバドロン男爵は、喜び勇んでイザベラに見学を了承する便りを書いた。
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