第12話 海賊の末裔と銀狼の格闘家。
武闘大会決勝の日、1000人はゆうに収容できるコロシアムの観客席はパンパンになっていた。
「これより、フライハイ連合国家武闘大会決勝を執り行う!! 東より『銀狼のルル』入場!!」
「「うおおおおおぉぉぉぉ!!」」
銀狼の毛皮を被ったルルが現れると、観客のボルテージが最高潮に達する。
「頑張れールルー!!」
「今日も神業を見せてくれ!!」
「キャー! ルル様、素敵ィ!!」
女だてらに屈強の戦士を次々と葬ってきたルルは、この1週間で、完全に観客の心を掴んでいた。
「西より『海賊の末裔ノルデン入場!!」
「「ブーーーーーーーーーーーーーー!!」」
ノルデンが登場するやいなや、観客は一斉にブーイングを浴びせかける。
「連合国家の鼻つまみ物!!」
「野蛮な海賊はさっさと故郷に帰れ!!」
「お前たちのやってきたことは、絶対に忘れないぞ!!」
ノルデンの出身地『北の港』は、今でこそ連合国家に加盟しているが、百年ほど前までは、ならずものの海賊国家として、しばしば略奪行為にあけくれていた。
故に、連合国家に加盟した今でも激しい差別を受けている。 今ではただの貧しい漁師国に過ぎないのだが。
ノルデンは、激しいブーイングのなか、表情ひとつかえずに闘技場の中央に進む。
身の丈7シャーク(約210センチ)のノルデンに対し、ルルの背丈は5シャーク3スーン(約159センチ)。体重に至ってはゆうに3倍は差がありそうだ。威圧感が半端ない。
ノルデンは、ルルを見下ろしながら、質問をなげかける。
「女、お前はどんな願いを叶えるために武闘大会に参加したのだ?」
「……」
「俺は、一族の尊厳のために武闘大会に参加した」
「……」
「我が一族が略奪行為に明け暮れていたのは百年も前のこと。今は改心をして連合国家の一員として、何一つ恥じる行為などしていない。だが、我ら一族への差別は消えぬ。ただただ一方的に虐げられるのみだ。騎士団に入ることも禁じられ、中央の大学で、学ぶ権利も得られぬ」
「……」
「連合国家の理念である『平等』とはほど遠い現状を打開するため、俺は一族の誇りをかけて戦う! 負けるわけにわいかぬのだ!!」
ノルデンの言葉を、しばらく黙って聞いていたルルが、ぽつりとつぶやく。
「……アタシにも、叶えなければならない望みがある」
「ほう? それは何だ?」
「教えない……でも、あなたには負けられないの。絶対に」
「そうか、では互いに悔いが残らぬ戦いとしよう」
「……うん」
審判が前に進み出し、ふたりを見る。
「双方、準備はよろしいか?」
ルルとノルデンがゆっくりとうなずく。
「決勝戦、始め!!」
審判の合図をするやいなや。ノルデンが突進し岩のような拳をルルに振り下ろす。
ルルは最小限の動きでノルデンの拳をかわすと、すぐさま指を掴みにかかるが、ノルデンは素早くバックダッシュをして距離をとる。
「「うおおおおおぉぉぉぉ!!」」
見事な攻防に、観衆は大興奮だ。
さすがは決勝戦。ルルとノルデンは、これまでの戦いで互いの戦法を研究しつくしていた。
貴賓室で観戦をするイザベラとフィオナは戦況分析をする。
「圧倒的なリーチの差を活かして、アウトファイトを得意とするルルのさらに外から攻撃をしかけるとは……ノルデンは随分とルルを研究しているようですわね」
「うんうん。ノルデンの破壊力なら軽いジャブでも充分に致命傷になるもんねー。でも、この戦い方ではいくら攻撃しても、ルルに当たらないんじゃない?」
フィオナの言葉に、聖女ミエルが賛同する。
「ええ。ルルさんは、ノルデンさんの攻撃を完全に見切っている……ううん、この言葉は適切ではありません。彼女の動きには一切のムダが無い。ノルデンさんの攻撃が事前にわかっているとしか思えませんわ」
「ミエルの言う通り。ルルには、ボクたちでは決して見ることができない、別の世界が見えているんじゃないのかな?」
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