アフターストーリー③(タクマ目線)

「……あれ? 玲奈さん、スマホ落とした?」


 昼休み、キャンパスの中庭。

 サナの声に、玲奈は一瞬だけ固まった。


 「あ……ほんとだ。ありがとう、サナ」


 玲奈は小さく笑ってスマホを受け取る。

 その指が一瞬だけ震えていた。


 ──何もされていない、はずだった。

 昨日、タクマという男に会っただけ。ただ話しただけ。スマホに触れられたわけでも、操作されたわけでもない。


 なのに、スマホの挙動がどこか変だ。

 お気に入りの写真フォルダにあった昔の友人との写真が一枚、消えていた。


 「気のせい……だよね?」


 だが、立て続けに起こる些細な“違和感”に、玲奈の脳が警鐘を鳴らす。

 目覚ましの音が勝手に変わっていた。

 SNSの通知が来ない。よく見るアカウントの表示順が勝手に入れ替わっている。

 ──何より、サナとララの目が、変だ。


 以前は“少し頼りないけど真面目でいい子”だったサナが、

 “異様にタクマに依存している女”にしか見えなくなっていた。


 ララは……もう、怖い。

 笑顔の奥が空洞になっている。


 「玲奈先輩ってさ……ほんとは寂しがり屋だよね?」


 唐突に投げかけられたサナの言葉に、玲奈はドキリとする。


 「えっ……な、何言って……」

 「だって、夜寝る前にスマホで昔のLINE見返すクセあるでしょ? “あの頃は楽しかったな”って思うクセ」

 「……っ」


 ぞくりと、背筋が凍った。

 そんなこと、誰にも言ったことがない。スマホにだってメモしていない。家族にも隠してる──はず。


 「見たの?」


 震える声で尋ねる玲奈に、サナはニッコリと微笑んだ。


 「ううん。知ってるだけ」


 その言葉に、玲奈はついに悟る。

 これは──普通じゃない。


 彼女は静かに立ち上がった。


 「……ごめん、帰る」


 だが──その背中に、ララの声が追いかけてきた。


 「タクマくんに、まだ挨拶してないのに?」


 ピタリ、と足が止まる。

 玲奈はゆっくりと振り返った。


 そこには、かつての友人たちの顔をした、知らない女たちが立っていた。

 その手には、知らないアプリが開かれていた。

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