第4話 機械仕掛けの孤城 ②
赤く長いカーペットの続く先、鉄の扉がこじんまりとあった。そしてその扉の奥にいる魔力の塊をこの体にひしひしと感じる。
いまさっき戦っていたしもべのカッキーとは大違いの魔力。さらに扉越しにも感じるティークの威圧感で一歩進むのも躊躇うほどに。
だがもう後戻りなどできようもない。
私はその鉄の扉をあける。
扉を開けると、そこは城の屋上につながっており、鉄製の鳥がピヨピヨと鳴いており、一つの机と椅子がおかれている。
奴は、その椅子に座っていた。
一人、椅子に座りながら私などには目も向けず、外の風景を紅茶を飲みながら見ている。
彼は私にゆっくりと、こちらに顔を向ける。
そこにはわたしたち人間と見間違えるような顔がそこにあった。
今までのダンジョンマスターやしもべのカッキーには金属片の継ぎ接ぎによって形成されていたが、奴、ティークはそれを感じさせない。生えている髪の毛一本一本も精密に、正確に人間のそれだ。
「私の名前はカフィー・ロッフォと申します。あなたが機械族の王、ティークですか。」
「あいにく君のような脆弱種の人間族に言う名前は持っていないものでね。さあ、戦いたいのなら戦おう。私は戦いはあまり好まないのでね。」
流暢だ。言葉の意味、発音をしっかりと理解している。やはり上位種の王なだけあって知性が段違いだ。それに体中からあふれ出る邪の魔力。
相当戦って成長していなければこの魔力の威圧感は出せないだろう。
一瞬でも油断したら殺される。私の脊髄がそう言っている。
それに私はここでしもべのカッキーとの闘いで偶然使えた己の生命のパワーを使いこなさなければ確実に死んでしまうだろう。
私は、ゆっくりと、構える。ティークも私が構えるとどこかから大きな鉄剣を取り出し、深くずっしりと構える。
同時にお互いがお互いに走り出す。私は手に自身の生命エネルギーを宿し、奴に殴りかかる。
だが彼はもうそこにいない。
「おやおや、まさか戦闘中に敵ではなく風景を見るとは。わたしも風景を見るのが好きなんだよねッッ!」
奴の鉄剣は私の腕を切り落とそうとする。
しかし必死の思いでかわし、奴の腹に少しだけ打撃を与えることができた。
「あの態勢からかわし、一発当てるとは。」
「人間だからといって少し君を見くびっていたようだね。それに手に込めた魔力による攻撃の強化も素晴らしい!」
「やはりこれだから戦いはやめられない。」
戦闘中に長話とは。だがこの生命エネルギー力の正体が魔力だと知ることができた。
魔力はてっきり魔法を使うための力とばかり思っていたがこうやって体に纏うこともできるのか。
そうとわかれば私は話をしているティークにまた殴りにいく。
「また同じ動きをするとは、単調で面白くない。」
ティークは大きな鉄剣を振り下ろす。
だが私はとっさによけ、指先に集中させていた魔力の塊を銃を打つように、彼に向けてはなった。
それは彼の頭に直撃した。
「人間の分際で調子に乗りやがって。人間のくせに、身をわきまえろ。」
そういうとティークは急に辛辣になり、私の脇腹に大剣が直撃した。
私は魔力でとっさにわき腹を覆った。が、私は吹っ飛んだ。
なんとか踏ん張って屋上から落ちるのは防いだ。だがもう少し剣の攻撃が重かったら、私は今頃屋上から地面にたたきつけられていただろう。
私は痛いわき腹をおさえつつ、なんとか立ち上がる。
私の魔力を打ち込んだ奴の頭部には少しヒビが入っている程度だった。
もっと強い攻撃をしないと奴は倒せない。
「なにかもっと技はないのか。使える技はないのか。」
必死に考えていると、ひとつだけ、使えそうな技があった。だがもはや体はボロボロ。
もうこの技一発できめるしか勝つ方法はない。
私は最後の力を振り絞って走り出す。
「俺の顔にヒビ入れやがって、殺す!」
ティークはひび割れた顔を手で触った後、剣を2本に増やし、二刀流になってこちらにきりかかってくる。
「機械剣技 千手観音!」
ティークはそういうと、二本の剣を目に見えない速度で振り回し、こちらに近づく。
私は全身を魔力で覆って守りながらティークに突進する。
ティークの斬撃は目に見えない速度で斬りかかり、もはやピンポイントで斬撃の来る場所を防ぐことなどできない。
魔力で全身を守っていても無数の斬撃により、体が血まみれになっていく。
だが私は進む。ティークに向かって。
ティークともう1mまでの距離まで近づく。私は彼のヒビの入った頭部を思いっきり蹴った。今までならず者どもを懲らしめるときにしたように。
「ガッキン!!!」
金属の音。見上げてみると、ティークの頭は粉々に砕けていた。
「たっ倒した.......!!!」
私は嬉しさや喜びより、疲れによって横になった。
「今、寝るのは危険だ.......から........。」
私はあまりの疲労によって眠ってしまった。
それと同時に、上位種の王の一人、ティークが死んだことにより、ほかの上位種の間に激震が走る。
さらに、人間族にも関わらず機械族の王を殺したことにより、密かに世界中から敵味方問わずにカフィー・ロッフォに注目が集まっていることを、本人はまだ知らない。
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