第7話 モフモフはそこに……②

  ログハウスの扉から、羊みたいな老人の次に出て来たのは……。


 モフモフしたまあるいる可愛らしい生き物だった。


 可愛いものに目がないけれどそれを隠しているリリアンは嬉々としながら、エアで本をたぐりながら興奮して叫ぶ。


「あ、あれは、『可愛いもの図鑑』(私編纂)145ページ第六章ファンタジー挿し絵集の三番…….!」


(何その本、めっちゃ気になる!)


 と思う私と同時に、リリアンはパッと天を仰ぎ見て、神に感謝していた。


「幻獣の子供だわ!幻獣なんて空想の生き物だと思っていたのに。本当にいたんだわ!

 ありがとう!可愛いを司る神よ!」


 

 そう、私たちの目の前に姿を現したのは、お昼寝から起きたばかりの幻獣の子供達七匹。


 ぬいぐるみみたいにモフモフで、手足のない丸いフォルムに大きな耳が生えている。


 その子たちが最初あくびをしながら出てきたかと思えば、一転して草原をぴょんぴょんと元気に楽しそうに跳ねているのだった。

 

 トラ猫のような柄の子もいれば、水玉のような柄の子もいる。吊り目や垂れ目など顔持ちも様々で、みんな違ってとても可愛らしい。


 まあるいモフモフの一人が幼少期特有の高くてちょっと滑舌の悪い声でみんなに呼びかけた。


「ふぁああ、よく寝たー!みんなー、遊ぼうぜー!」


 リリアンは、顔を手のひらで覆いながらも、指の間からその大きな瞳を輝かせて、私に聞こえないように独り言を言った。


「わ、私もうダメかも……。む、むぎゅうってして、もふもふしたい……」


 リリアンが可愛いものを見たせいで狂ったと分かり、狂戦士の異名を持つ私はニッコリとリリアンに微笑んで言った。


「これで仲間だね」


 いつも常識に囚われているリリアンが遂に壊れたと思うと感慨深いものがあった。しかし、リリアンは少し冷静さを取り戻したのか、急に正気に戻ったふりをして慌てて私に訂正した。


「ち、違うのよ!これは違うの。ただなんというかゴニョゴニョ……」


 そんなリリアンが可愛らしくて私は口に手を当てて笑った。


「うふっ。かわいいね、リリアン」


 すると、リリアンは恥ずかしさから茹で上がってしまい、顔を真っ赤にして私から目を背けた。


 一方で、モフモフこと幻獣の子供たちは遊びモードに入ったみたいで、トラ猫柄の子が言う。


「おい、みんにゃー!これから丸になろうぜ!」

「うん、いいよ!」

「いいよ、いいよー」


 そして、七匹の子供達は輪になった。私とリリアンは「何が行われるんだろう?」とドキドキしてそれを見守る。


 すると、トラ猫柄の子は黙ったままみんなを見るだけで、「よしっ」と言ってから、みんなに聞いた。



「なにすふ?」


 「輪になった意味!!」と私とリリアンは突っ込んだが、しかしそのお馬鹿さが可愛らしくもある。

 水玉の子は元気よく返した。


「くるってしてタッチゲームしよう!」


 なんだろうと私たちは首を傾げた。すると、モフモフの一人が言った。


「それってなあに?」

「うんとー、なんかくるってしてタッチするやつ!」


 しかし、モフモフたちはどうやらまだ分からないらしく、議論を始めた。


「えー、分かんないよぉ」

「なんだろうねぇ」

「鬼ごっこ?」

「ちがうー」

「コマとか?」

「ちがうのー」

「分かった!だるまさんが転んだ、だ!」

「そうそれ!」


 私はふふって笑ってしまった。だるまさんが転んだがくるって回ってタッチゲームなんてわかりっこないよ。たとえが可愛すぎ。

 と思う私の傍ら、リリアンは土下座の姿勢で頭を地面に擦り付けて「お願い。落ち着いて、私。今はフェルンの前なの。お姉さんでいたのよ。おさまれ、おさまれ!可愛さの爆発!」と独り言をずっと呟いている。


 私はそれを見て、茂みを出て、声を上げた。


「おーい!ねぇ、お姉さんは怪しいものじゃないです!いっしょに遊ばない?」


 リリアンはあんぐりと口を開けて絶句し、幻獣の子供たちは私を見てピクリとも動かなくなってしまった。


 それからリリアンが隠れたまま、二人連座で高まることを避けるために声を出さずに叫んだ。


(な、何やってんのよー!!)


 私はリリアンが出てこないことで、何かを察した。


 あれ……?私なんかしちゃった?

 みんなで遊べれば、リリアンも幸せだと思ったんだけど……。



 


***———作者コメント———***


ここまでお読みいただきありがとうございました!

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家から出て来たのは二足歩行の羊?そして、もふもふ!彼らの正体は一体何なのか!?乞うご期待!


今後もよろしくお願いします!



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