永遠に続く
4月4日、火曜日。
四十代主婦の吉江は、息子の遺品を整理している。
十九歳の息子・貴明が数日前に自殺した。
遺書はなく、理由は不明だった。
すると押入れの奥から、吉江は見慣れない小箱を見つける。
中には手のひらサイズのボタンと一枚の紙が入っていた。
吉江が紙を見るとこう書かれている。
【このボタンを押せば、永遠に生きられる】
「何かしら、オモチャ?」
冗談半分で吉江はボタンを押した。
だがなにも起こらなかった。
ふと足元で動く気配を感じ、吉江が床を見るとゴキブリがいた。
「きゃああっ!」
吉江は咄嗟に近くの雑誌を丸めて叩き潰しす。
「気持ち悪い…」
そう呟きながら遺品の整理を続けた。
遺品の整理を始めたのは朝だったが終える頃には夜になっていた。
吉江はリビングに戻ると夫の平蔵は椅子に座っている。
それから吉江は夕食をとり、風呂に入り、寝た。
吉江は目を覚ますと、なぜか貴明の部屋にいた。
それに昨日と同じ服を着ており、手にはボタンを持っている。
「あれ?」
足元に目をやるとゴキブリがいた。
「きゃああ!」
吉江は雑誌でゴキブリを叩き潰す。
部屋を見回すと昨日整理したはずなのに散らかっていた。
「どういうこと?」
混乱しながら一階に降りると、リビングでは平蔵がテレビを見ていた。
『今日は4月4日、火曜日です』
アナウンサーの声に吉江の動きは止まる。
「えっ今日は4月5日でしょ?」
「なに言ってんだ」
平蔵は吉江の方を見る。
「昨日も4月4日だったよね…?」
「お前、疲れてんだよ。少し休め」
「そうね…」
吉江はベッドの上に横たわり眠りについた。
だが目覚めるとまた貴明の部屋にいた。
吉江「嘘でしょ…」
何度寝てもまた4月4日の朝に戻った。
寝ずに4月5日を迎えたこともあったが、寝ると4月4日に戻った。
それから何千、何万回と繰り返した。
だがどんな行動をしても結末は同じだった。
「もう嫌…」
吉江は台所は向かい、包丁を手に取り首に深く突き刺す。
平蔵はそれに気づき台所へ走る。
「吉江!」
血が飛び散り、吉江は崩れ落ちた。
それから数日後。
貴明と吉江の葬儀が行われた。
礼服を着た平蔵は、ぽつんと遺影を見つめる。
式が終わったあと、平蔵は貴明の部屋に入った。
「二人ともどうして俺を置いていくんだ」
ふと机を見ると平蔵は何かを見つけた。
END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます