どっちが可愛いいの?
たんすい
第1話:ユキちゃん家へGO!
待ちに待った、その日。
出産を終え、自宅に戻ったユキの家へ、私たちは、訪れることになった。
大学を卒業してからも、腐れ縁で続いている私たち四人組。
それぞれが強烈な個性派で、性格も趣味も、まるで違う。
その友情は、常に誰かの一言でガラス細工のように砕け散る寸前だった。
私の右隣にいるのは、生粋の天然キャラ、花畑 咲(はなばたけ さき)
あだなは『パー子』空気を読むという概念を持たず、
常に我が道を突き進む彼女は、今日もエンジン全開だ。
「私、正直なところ、赤ちゃんってあんまり興味ないんだよね」
ほら、始まった。
だが、もはや誰も気にしない。いつものことだ。
そんなパー子の左隣、私を挟んで向かいに座るのは、
ロジカル・シンキングの権化、如月 論子(きさらぎ のりこ)。
あだなはロンちゃん
徹底的な論理主義者で、感情論が一切通用しない彼女も、すでに臨戦態勢だった。
「パー子、その発言は誤解を招くよ。出産祝いは社会的な慣習であって、
円滑な人間関係を維持するためには、参加することが合理的選択だから…」
この調子だ。
今日のユキの心労を思うと、家に着く前からため息が漏れる。
そして、そんな二人の真ん中に座るのが、
私、相川 普子(あいかわ ひろこ)。
場の空気を読み、社交辞令もそつなくこなす、
このグループにおける、唯一の常識人枠だと自負している。
毎回この二人の暴走を食い止めるのが、
私の役目だ。
ただ、今日の訪問は、何かがおかしくなる。
そんな予感が胸をざわつかせていた。
「ロンちゃん、もう少しオブラートに包んだ言い方はできないの?
ユキは赤ちゃんを産んだばかりなんだから、お祝いムードで行こうよ!」
私がそう諫めると、ロンちゃんは眉ひとつ動かさずに言い放つ。
「感情に流されれば、判断が鈍るよ。
今は冷静に状況を分析し、合理的に行動すべき」
パー子はそんなロンちゃんの言葉など意にも介さず、スマホをいじりながら、
「赤ちゃん見たら、どこ行く?カラオケ?」
と、能天気なことを呟いている。
ユキの家に着くまでに、私たちは一体、何度、
天を仰ぐことになるのだろう。
それでも、なんだかんだで、この二人がいるから退屈しないのも、また事実だった。
けれど、この訪問が忘れられない“事件”の幕開けになるとは、
この時の私は、まだ知る由もなかった。
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