第21話「ふりかけの優しい余韻」

昼下がりの大学キャンパス。

日向めぐるは、昨日の「練り梅」騒動を思い出していた。まさか弁当の小さな一品が、あんなに話題を呼ぶなんて。友人たちと笑い合った余韻を残しつつ、今日のリコリス弁当を手に取る。


「さて、今日はどんな仕掛けがあるのかな…」

胸を少し高鳴らせながら、めぐるは蓋を開けた。


🍱 今日の献立


ご飯


味噌汁


漬物


魚の甘酢あん


揚げチヂミ


高菜レンコン


日替わり副菜(小松菜と油揚げのおひたし)


そして、ご飯の横に添えられた「たまごふりかけ」


「わぁ……」

めぐるは小さく声を漏らす。魚の甘酢あんは照りが美しく、揚げチヂミは黄金色に輝いている。その中で、ご飯の上にちょこんと置かれた黄色のふりかけが、不思議な存在感を放っていた。




「ふりかけって、懐かしいよね」

隣で一緒に弁当を広げていた七海れいが微笑む。

「小学生の頃、うちのお弁当、いつも卵ふりかけだったんだ。だからちょっと嬉しいかも」


さらに、学食横のベンチに偶然座っていた悠木詩織(震感少女)が、ふりかけの小袋をじっと見つめている。

「…これ、ただのふりかけじゃないかも。栄養成分、すごく計算されてる気がする」

その真剣な表情に、めぐるは思わず笑ってしまった。


「でも確かに、昨日の練り梅もそうだったし…ただの一品じゃないのかもね」




食後、弁当の献立表を眺めためぐるは、小さな文字を見つける。

「──監修:山岡るり」


昨日と同じく、隅っこにさりげなく記されていたその名前。

「やっぱり…全部仕組まれてる?」

胸の奥でざわつきながらも、口に残るのは、卵ふりかけの優しい味わい。


めぐるは笑顔で空を見上げる。

「次はどんなお楽しみが待ってるのかな」

期待と謎を胸に、日常はまた続いていく。

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