第17話「今日は……お楽しみ!?」

朝、スマホで今日の献立をチェックした日向めぐるは、

思わず二度見した。


《本日の献立:お楽しみ》


「……なにこれ? ゲームのガチャ?」


授業を終えてアパートに帰ると、

玄関にはいつも通りの白い保冷バッグ。

中身を取り出し、蓋を開けた瞬間――


「うわ……っ!!」


中央に鎮座するメンチカツ。

その横には、カリッと揚がった鶏の唐揚げが二つ。

奥にマカロニサラダ、さらに煮物まで入っている。

ご飯の横には、漬物と……小瓶に入った海苔の佃煮。


(……今日のは“メインが二つ”どころじゃない、フルコースじゃん)


まずはメンチカツをひと口。

肉汁がじゅわっと溢れて、ご飯が進む。

唐揚げは生姜とニンニクの香りが効いて、

マカロニサラダの冷たさと相性抜群。

煮物のやさしい味で一度リセットして、

海苔の佃煮でまたご飯が加速する。


食べながら、めぐるはふと気づく。

(“お楽しみ”って、きっとこういうワクワクのことを言うんだ)


リコリスの弁当は、

“食べる前”からもう楽しませてくれている。


夜、SNSに写真を上げたら、

大学の友人たちから一斉にコメントが来た。


「え、今日そんな豪華だったの!?」

「私のは普通だった! めぐる当たりじゃん!」


(……当たり弁当とかあるの!?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る