第7話 いただきます
俺は幸せをかみしめながら、ゆきちゃんの作ったお好み焼きを一口食べた。
つっても、一口で四分の一がなくなった。
豚肉がジューシー
こんがり焼けた生地もこうばしい
ソースをキャベツにからめて
端的にいって、最高にうまい!
「うまい! うまいよ、ゆきちゃん」
「ありがとう、雁太くん」
俺とゆきちゃんは、目を見合わせてうんうんと頷いた。
あ、なんか今すっげーいい雰囲気じゃないか?
ゆきちゃんはかわいいし、お好み焼きは美味しいし、俺しあわせだし。
「ねえ。雁太くん」
「なに?」
「私、創作料理にも凝っていて、ちょっと変わったお好み焼きの研究もしてみたの。それもイケるから、食べてみない?」
「うん、食べるよ。俺、昼飯まだだしね」
にっこにこ顔で残りのお好み焼きを三口で平らげると、ゆきちゃんは新しいお好み焼きを持ってきてくれた。
なんだかこうばしい甘い匂いがした。
俺は目の前に出された甘い匂いのする――チョコレート? 黒い物体が溶けているが、お好み焼きの匂いがして、それを見てごくりとのどを鳴らした。今回は、何か食べるのに覚悟が必要なお好み焼きっぽくて、笑顔が固まる。
ゆきちゃんは照れながら俺にあたらしい水も持ってきてくれた。
「これはね、普通のお好み焼きをチョコレートでコーティングしたの」
な、なんで? どうしてチョコレートでコーティングしたのかな。
そこがゆきちゃんの創作料理なんだろうけど、発想がぶっ飛んでいる。
「どうぞ、めしあがれ」
「う、うっす」
俺は気合を入れて一口目を食べる。
豚肉がチョコで甘い。
複雑だ。
でも、キャベツとかは、まあまあイケるかも。
「美味しい?」
「おいしいよ」
俺のことが嘘つきだと思うか? そんなんどうでもいい。いま! ゆきちゃんの心が傷つかなければ、俺は嘘でもいいからおいしいよと言う。すぐに水を飲んで飲み下したけど。
創作料理はそのうちゆきちゃんが自分で考えていって、腕を上げて行くと信じている。
俺は食べて、ゆきちゃんの励みになることを言ってあげるのが、彼女のことが好きな俺の仕事だ。
「俺、甘い物も好きだからさ」
これは本当。俺は甘い物大すきだ。
「うん、覚えておくね、雁太くん」
いい感じでチョコレート焼きをくってたら、突然、校内放送で音楽が流れた。
これは……サクセスの音楽だ。
ゆきちゃんの好きなジュンがいるグループの曲。
なんで今この曲が校内放送で流れるんだ?
こういう私的な音楽は学校では流さないはずだが……。
ゆきちゃんを見ると、なにか色めき立っていた。
「サクセスの音楽だ! くみこちゃん、なんで学校で流れてるんだろう」
「わからない。でも、なんだか校庭が騒がしくない?」
そのとき、校内放送で信じられないものが流れてきた。
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