第41話 『世界調和装置』のゆる設計
次元の狭間での探索、そして『初代創造主の足跡』の発見から、数週間が経ったんや。
『生産型移動要塞『フロンティア号』』は、今日も空をゆったりと移動しとったわ。船窓からは、白い雲が流れていくのが見える。
ミオの工房は、文字通り「動く世界の中心」や。
(うわぁ、世界平和って、ほんま簡単に実現するんやなぁ!うち、天才かもしれへん!)
ミオは、フカフカソファに埋もれて、資材スライムをモフモフしながら、至福の時を過ごしとった。
資材スライムは、ミオの膝の上で、気持ちよさそうにぷるぷると震える。ひんやりと、そして柔らかい感触が、ミオの心を癒す。
あの時、白い空間で出会った「上位存在」と名乗る、どこか暢気な神様。
彼が言うには、世界にはまだ「ちょっとした」課題が残っとるらしいねん。次元の壁の「ほんの少しの」綻びやて。
未確認のエネルギーが流入して、ごく軽微な世界の変質が起きとるらしい。空には、まるでガラスが割れたみたいなヒビが入ることがあったし、地面が勝手に陥没したりもした。
それを正すために、うちに「ゆるやかな再創造」に近い大規模な生産を要求しとるんや。
「それに、アークスくんも、本当は君と同じ『創造主の代行者』の一人だったんだよ。ただ、ちょっとね、過去に要領が悪くて失敗しちゃって、絶望から『破壊』の道を選んじゃったのさ。ワタシたちが『ちょっと間違って送り込んじゃったかなー、テヘペロ』って感じだね」
上位存在は、アークスのことを、まるで失敗作の子供みたいに説明する。
(えぇ~!?あんなにシリアスな顔しとるのに、神様の手違いなん!?アークスはん、めっちゃ可哀想やん!)
ミオは、アークスの残念な過去に、ちょっとだけ同情した。
フロンティア号は、次元の狭間から、たくさんの「ちょっと珍しい」素材を持ち帰ってきた。
透明な輝きを放つ結晶や、虹色の液体が滴る植物、まるで星の欠片のような石ころ。
それらは、この世界には存在しない、不思議な素材ばかりやった。
資材スライムたちは、そんな珍しい素材をモグモグと食べ、体内に貯め込んでいる。
ミオは、資材庫で、手に入れた次元素材と、初代創造主の知識が記録された石板を前に、頭を悩ませていた。
(『世界調和装置』の設計かぁ……。なんか、めっちゃ複雑そうやん?でも、ロマンやなぁ!)
ミオは、巨大な設計図を広げる。
『世界調和装置』は、世界の歪みを正し、次元のバランスを回復させるための「究極の生産物」や。
これは、これまでのどの生産物よりも複雑で、膨大な想像力と魔力を必要とするんや。
そのため、代償の眠気も極限に達する。
ミオは、設計に取り掛かった。
頭の中では、無数の数式と魔法陣、物理法則と魔力回路が、ぐちゃぐちゃに絡み合い、組み立てられていく。まるで、宇宙の設計図を読み解いているみたいや。
資材スライムたちは、ミオの周りに集まり、彼女の眠りを守るように団子になって寝る。
時折「ぷるぷる、がんばれぷる!」と応援するような音を出す。その音は、ミオの集中力を妨げることなく、心地よいBGMとなる。
(うぅ、みんな、うちのロマンに付き合ってくれてるんやなぁ……)
ミオは、資材スライムたちの応援に、ちょっとだけ元気をもらった。
設計は順調に進む。
資材スライムたちは、ミオの指示に応じて、必要な素材を供給してくれる。
透明な輝きを放つ結晶スライムが、回路に必要な部品を精錬する。
虹色の液体スライムが、魔力の流れを調整する液体を生成する。
ミオの指先が、流れるように動き、魔法陣を刻み、魔力を注入していく。
設計の途中、ミオは猛烈な眠気に襲われた。
「ふぁ~あ……ねむ…い……」
ミオは、その場でぐったりと倒れ込み、深い眠りについた。
資材スライムたちは、ミオの周りに団子になって集まり、彼女の寝顔を守るように寄り添う。彼らの体から、微かな光が放たれ、ミオの体を優しく包み込む。
その時、ミオの夢の中に、創造主の「お昼寝の誘い」のようなメッセージが聞こえてきたんや。
それは、温かくて、心地よい声。
「よく頑張ったね、ミオ。さあ、一緒に少し休もうか……」
夢の中で、ミオは創造主と共に、フカフカの雲の上で、ぐっすり眠り続けた。
その眠りの中で、ミオの脳内では、『世界調和装置』の設計図が、完璧な形で完成していく。
複雑な魔力回路の配置、次元の壁の修復方法、エネルギーの調整……。全てのピースが、パズルがはまるように、ピタッと収まった。
(うわぁ、めっちゃ効率ええやん!寝てる間に仕事できるなんて、最高やん!)
ミオは、夢の中でも、ちゃっかりと生産活動に勤しんでいた。
数日後、ミオは眠りから覚めた。
頭はスッキリ、身体は軽やか。まるで最高の休暇を過ごしたかのようや。
目覚めると、資材スライムたちが、ミオの周りで「ぷるぷる~!」と嬉しそうに跳ね回っている。
ミオの脳内には、『世界調和装置』の完璧な設計図が刻まれていた。
「よっしゃ!これで、世界を救う最終兵器、作れるで!」
ミオは、ニヤリと笑った。その瞳は、達成感で輝いている。
(あとは、材料集めて、サクッと作ったらええだけやん!ロマンやで!)
ミオのロマンが、いよいよ現実になろうとしていたんやな。
その日の午後。
ミオは、フロンティア号の会議室に、仲間たちを招集した。
「みんな、見てや!これが、うちが設計した『世界調和装置』の設計図や!」
ミオが、巨大な設計図を広げると、ライオスたちは目を丸くした。
「な、なんという複雑さ……!これが、世界を救う装置だと!?」
エリアスは、設計図に書かれた古代文字と魔力回路の組み合わせを見て、興奮を隠せない様子や。
「これほど高度な技術……まさか、創造主の……!」
ゴルムは、資材スライムが吐き出した次元素材を見て、唸り声を上げる。
「この素材は、我らの鍛冶では扱えぬ……だが、ミオ殿なら、これを形にできるというのか!」
ルナリア姫とリリアーナ王女も、目を輝かせながら設計図を覗き込んでいる。
「ミオよ!こんな素晴らしいものを作れるのか!?」
「わたくし、ミオ殿の創造力に、改めて感服いたしましたわ!」
アークスは、設計図をじっと見つめている。彼の顔には、どこか複雑な感情が浮かんでいた。
(まさか、あの眠りの魔女が、ここまで……)
アークスは、資材スライムが持ってきたお菓子を黙って頬張った。
世界調和装置の生産に必要な素材は、次元の狭間で手に入れた珍しい素材がほとんどやった。
あとは、一部、この世界の希少素材が必要になる。
「よし、みんな!最高の素材、集めてくるで!ロマンやで!」
ミオは、そう言って、仲間たちと新たな素材探索の計画を立て始めたんや。
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次回予告
世界調和装置の生産が始まる中、アークスはんがまさかの再来!?
彼の最後のドタバタに、うちの生産能力は通用するんやろか!?
そして、資材スライムはんたちは、どんな活躍を見せるんやろ!?
次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?
第42話 アークスの再来と最後のドタバタ
お楽しみに!
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