第30話 環境美化と生産者の責任

世界会議での活躍、そして模倣品のドタバタ騒ぎをサクッと解決してから、数週間が経ったんや。

『生産型移動要塞『フロンティア号』』は、今日も空をゆったりと移動しとったわ。

ミオの工房は、まさに平和そのものや。

(うわぁ、世界平和って、こんな簡単に実現するんやなぁ!うち、天才かもしれへん!)

ミオは、フカフカソファに埋もれて、資材スライムをモフモフしながら、至福の時を過ごしとった。

資材スライムは、ミオの膝の上で、気持ちよさそうにぷるぷると震える。


そんな平和な日常の中に、ごくごく軽微な、しかし気になる問題が、ぽつぽつと顕在化し始めたんや。

フロンティア号が王都上空を通過した際、ミオは窓の外を見て、首を傾げた。

王都の空が、以前よりも少しだけ澱んでいるように見える日があったんや。日差しがどこか霞んで見え、遠くの山並みもぼやけている。

工房の庭で育つはずの作物が、たまに色が悪くなったり、生育が遅れたりする。収穫したばかりの黄金麦の穂先が、かすかに黒ずんでいるのを見て、ミオは首を傾げた。

資材スライムたちも、時折「ぷるる……?」と不安げに震えることがある。彼らの体色が、いつもより少しだけ濁っているように見えた。

特定の地域の魔力資源が、ほんの少しだけ枯渇している、という報告も、商業ギルドから届き始めた。王都の街角では、魔力灯の光が以前より暗い、という噂も流れとる。

「まあ、大したことないやろ」

ミオは、そんな報告を、気楽に受け止めとった。資材スライムたちが勝手に解決してくれるやろ、くらいの気持ちやったわ。


やけど、これらの「ちょっとした」問題は、着実に広がりつつあったんや。

特に、ミオの生産活動が活発になった場所で、魔力汚染が「ごく軽微に」発生しとることが判明したんや。

「ミオ殿の生産する魔導具は、確かに世界を豊かにしたが、その過程で、微量ながらも魔力のカスが環境に蓄積し、それが汚染を引き起こしている可能性が……」

エルフの学者エリアスが、申し訳なさそうにミオに報告した。彼の顔には、疲労が滲んでいる。

(えぇ~!?うちのせいなん!?そんなん知らへんかったやん!)

ミオは、ちょっとだけ申し訳ない気持ちになった。

王族や魔族、各国代表も、これらの問題に眉をひそめる。

アルフレッド王子も、日ごとに深刻さを増す報告に、眉をひそめる。彼の顔には、王としての責任感が色濃く滲んどる。

「これは……放置できぬ問題だな。ミオ殿の生産活動が、世界に良い影響をもたらす一方で、このような副作用もあるとは……」

王子の言葉に、フィオナは心配そうにミオを見つめる。

(ミオさん、この問題も、サクッと解決できるんやろか……?)

フィオナの心には、ミオの能力の持つ、光と影の両面に対する、かすかな不安が芽生え始めていた。

ライオスは、腕を組みながら遠くの空を見つめる。

「魔物じゃない。人間が起こした問題なら、ミオさんがなんとかしてくれるさ」

彼の言葉には、ミオへの絶対的な信頼が込められている。

シエラは、静かに報告書を読み込んでいた。その目は、問題の根源を探ろうとしている。


「じゃあ、うちが解決すればええんやろ?じゃあ、こうすればいっか!」

ミオは、資材スライムをモフモフしながら、ポンと手を叩いた。

(こんなん、サクッと解決できるに決まっとるやん!ロマンやで!)

ミオは、環境負荷の低い生産方法や、自然を回復させるための魔導具の開発に取り掛かった。

まずは、魔力汚染を吸収し、浄化する『再生魔法道具『生命の泉』』。

これは、汚染された土地に設置するだけで、みるみるうちに魔力を浄化し、生命力を回復させる優れものや。

「スライムはん、この汚染された土、モグモグしてくれへん?あと、生命の泉の材料も探してきてな!」

資材スライムたちは、嬉しそうに「ぷるぷる~っ!」と飛び跳ね、汚染された土をモグモグと食べ始めた。

スライムの体内で、汚染された魔力が浄化され、清らかな魔力となって放出される。

その魔力を使って、ミオは『生命の泉』を生産する。


『生命の泉』を設置すると、その場所から、まばゆい光が放たれた。

光は、瞬く間に周囲の環境を浄化し、荒れた大地に、再び緑が戻り始める。

「な、なんという奇跡……!」「枯れた大地が、一瞬で蘇ったぞ!」

人々は、その光景を見て、涙を流して感謝した。

ミオは、そんな人々の反応に、ちょっと照れた。

(まあ、ちょっと作りすぎたかな……)

生命の泉の効果が予想以上に強力で、作物が急成長しすぎたり、森が茂りすぎたりするハプニングも発生した。

ミオは、困った顔しつつも楽しんでいる。資材スライムが溢れる自然の中で嬉しそうにモグモグする。

「あーもう、これだから素人は!」

ミオは、呆れつつも、その成果に満足していた。

環境問題は、ミオのチート生産能力と、資材スライムたちの可愛らしい活躍によって、あっさり解決されたんや。

(ふぅ、これでしばらくは、ゆっくり引きこもれるかなぁ……って、あかん、また眠くなってきたわ……)

ミオは、心地よい睡魔に身を任せる。

工房の窓から見える王都の空は、今日から澄み渡るような青空へと戻っていた。


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次回予告


世界にまた新たな「ちょっとした」異変が!?

まさかの、自分と同じ「転生者」と出会うんやろか!?

しかも、その転生者、うちと全然考え方違うんやて!?

資材スライムはんたちは、そんな転生者にも懐くんやろか!?

次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?


第31話 転生者との遭遇?まさかの再会


お楽しみに!

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