第13話 王女リリアーナと『奇跡の癒やし』

ミオの工房に、王都の現王様からの使者が訪れたんや。

案内されたんは、工房の豪華な応接室や。窓からは「風薫る丘」の景色が見えて、めっちゃ気持ちええねん。陽の光が差し込んで、室内を明るく照らしとる。

ソファに座っとるんは、先日工房に来てくれたアルフレッド王子と、その隣に座る病弱な妹姫、リリアーナ王女や。

リリアーナは顔色が青白くて、時折小さく咳き込む。その細い肩が、弱々しく震える。ほんま、見るからに辛そうやな。

(うぅ、かいらしい子がこんなに苦しんどるなんて、見てられへんわぁ……)

ミオは、王女の可憐な姿に、胸がぎゅっとなった。まるで、透明なガラス細工みたいに儚い存在や。


「ミオ殿。本日は、妹のことで、そなたに頼みがある」

アルフレッド王子が、深々と頭を下げてきた。彼の金色の髪が、さらりと揺れる。

「リリアーナは幼い頃から不治の病に伏せ、多くの名医や宮廷魔術師も匙を投げた。だが、そなたが作ったという『奇跡の回復薬』の噂を聞いた。王都で病に苦しむ者が、アルティ村の『虹色野菜』を食べたところ、劇的に回復したと報告があったのだ。どうか、この妹を救ってはくれぬか」


ミオは、リリアーナ王女の顔をじっと見つめた。

その瞳には、諦めと、かすかな希望が入り混じっとる。

(この子を助けるには、うちの『究極の生産』能力を使うしかないやろな……)

ミオは、前世で得た医学知識を頭の中で高速で呼び出す。

リリアーナの症状から、原因を分析する。

(これは……この世界の魔力の偏りが原因やな。体内魔力がうまく循環せんと、特定の臓器に負担がかかってる。まるで、前世のPCの熱暴走みたいやん!よし、デフラグして最適化したるで!)


「承知いたしました。最高の薬、作ってみますわ」

ミオは、にっこり笑う。

アルフレッド王子は、ミオの言葉に顔を輝かせた。その顔には、今まで見たことないほどの安堵と希望が浮かんどる。

「おお!感謝する!ミオ殿!そなたが我が妹の命の恩人となるのならば、王家として、いかなる恩賞も惜しまない!」

リリアーナ王女も、弱々しいながらも、ミオに小さく頭を下げた。その手は、震えていた。


薬の生産に取り掛かる。

まずは、リリアーナの体内の魔力循環を正常化するための、最適な薬草と魔石の組み合わせを見つけなあかん。

(よし、この薬草『治癒の雫』と、この魔石『精霊の涙』を組み合わせたら、魔力回路の詰まりを解消でけそうやな!)

ミオは、資材スライムたちに指示を出す。

「スライムはん、この薬草と魔石、細こう刻んどいてな」

緑色のスライムが薬草を、キラキラ光るスライムが魔石を、それぞれモグモグと食べ始め、あっという間に微細な粉末にして、ミオの前にポロンと吐き出した。粉末は、微かに魔力の光を放っている。

「ぷるる~♪」

スライムたちは、得意げに胸(?)を張る。

(ほんま、便利やなぁ。昔は手作業で粉砕しとったんが、嘘みたいやわ。うちのストレスを完璧にゼロにしてくれる、最高の相棒やん!)


ミオは、その粉末を特殊な液体に混ぜ合わせる。液体は、まるで水銀のように滑らかに輝いていた。

慎重に魔力を込めていく。

魔力の注入量、温度、時間の全てを完璧にコントロールする。

(魔力を優しく、でも確実に流し込む……まるで、壊れた魔力回路を丁寧に繋ぎ直すように……。この薬は、ただの治癒魔法じゃない。体内のバランスを根本から整える、究極の最適化プログラムなんや!)

指先から、温かい魔力が薬液に注ぎ込まれる。その魔力は、瓶の中で七色の光となって渦巻いていた。

やがて、薬液は透明な輝きを放ち、『奇跡の回復薬』が完成した。

瓶の中には、まるで星の光を閉じ込めたような、美しい液体が揺れている。その輝きは、リリアーナの希望そのものや。


「これを、毎日少しずつ飲んでください。体内の魔力回路が正常になれば、病はきっと治ります」

ミオは、リリアーナ王女に薬の瓶を渡した。瓶は、ひんやりと冷たかった。

リリアーナは、恐る恐る薬を口に含む。

その瞬間、彼女の顔色に、少しだけ血の気が戻った。頬に、微かな赤みが差す。

「あ、温かい……体が、軽くなるようです……」

リリアーナの瞳に、生気が宿る。彼女の目に、初めて希望の光が宿った。


数日後。

リリアーナ王女の病状は、劇的に改善した。

王宮の医者たちは、その奇跡に驚き、ミオを「聖女」と呼び始めた。医者たちは、自分たちの医学では説明できない現象に、ただただ平伏するばかりやった。

(えぇ~、聖女とか、大袈裟やん?うち、引きこもりたいだけやのに……)

ミオは、内心で困惑する。王都中がうちの噂で持ちきりやったら、余計に引きこもりにくくなるやん!

リリアーナ王女は、すっかり元気になり、ミオの工房に遊びに来るようになった。彼女の顔には、もう青白い影はなく、健康的な血色が戻っていた。

「ミオ殿!ありがとうございます!貴女は私の命の恩人です!ミオ殿がいなければ、私は……」

リリアーナは、ミオに抱きついて、感謝の言葉を繰り返す。彼女の声には、喜びと、生まれ変わったような生命力が満ちている。

ルナリア姫も、リリアーナとミオが仲良くなったのを見て、嬉しそうにしている。

工房のダイニングで、三人の少女が、ミオの作った絶品スイーツを囲んで談笑する姿は、まるで絵本のワンシーンのようやった。

資材スライムたちも、彼女たちの足元で「ぷるぷる~♪」と楽しそうに跳ね回っている。

王族との交流も、思いのほかストレスフリーで、ミオはちょっとだけ安心した。

(まあ、可愛い子は歓迎やからな!これも、引きこもりライフの一環やと思とこ!)

ミオの工房は、王都の貴族や、各方面の要人からも注目を集める、特別な場所になっていったんや。


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次回予告


王都の生産ギルドに、ドワーフの熟練職人が現れた!?

うちの「魔法での生産」に、伝統の職人はどんな反応をするんやろか!?

まさか、うちの資材スライムはんの能力に、頭を抱えることになるなんて!?

次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?


第14話 ドワーフ職人の挑戦と伝統の意地


お楽しみに!

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