第3話みんなで話そう今日の議題はー?『ビルの腹に空いた穴!』
・・・・・・・・・・・・・・・!・・・・・・・!!・・・・・ピッ
・・・・・・・・・・・ピッ!・・・・ピピ・・
・・・ピピッ・・・ピピピ・・!
ピッピピ!!!ピッピピ!!!ピッピピ!!!『コトン』
タイマーの音をとめ体を起こす。
「ん〜〜!!!はぁまだねむいな」
太陽の光が差し込みいつも忙しなくみんなが動いているこの部屋に私一人だけ
呂律が寝起きだから回らないがそれを指摘する人はおらず全力でのびーをする。
「げ、みんなから連絡来てる...」
マナーモードにしていて気づけなかったが
私が会社に残っているのを知っているみんなから心配するメッセージが大量に来ていた。
「めぐちゃんからすごい来るな...」
中でも後輩のめぐちゃんからは電話・スタンプ・文章のてんこ盛りスペシャルで100件近くも来ている。
スマホをソファに置き体を起こし目を擦る。
今いる場所は悪魄退治をする前まで横になっていた休憩室。
ふらふらと酔っ払ったような足取りでまだ治まらない眠気と体のだるさに堪えながら給湯室の方に行き蛇口を捻る。勢いよく冷たい水が流れ出す。その感触でようやく頭が少し覚めてきた。顔を洗い、横目にコーヒーパックを見つけ、ひとつ手に取る。。
『ポチ』
「...やっぱ電気は止まっているよね」
電子ポッドが動かないのは分かっていたけれど、やはり残念だ。
指先でパックを上下に揺らしてみる。けれどお湯のように一気に色が広がるわけでもなく、
ただ淡い琥珀色が水面ににじむばかり。
電気を付けようとしてわかっていたことだが残念ながら電子ポッドを使おうとしても使えないので水道水でコーヒーを越すことにする。
恐る恐る口をつけると――味はほとんど水。
けれど鼻に抜けるわずかな苦みと香ばしさに、気持ちだけはコーヒーを飲んでいるような錯覚を覚える。
「うん……まぁ、気分だけでも」
肩をすくめて笑い、給湯室から出て窓際へ歩いた。
「朝のこの景色を見て飲むコーヒー(水)は最高ね」
1面が全て窓の作りになっているこのオフィスで、
なおかつ15階でなかなかに高い。それに加え辺りに同じようにでかい建物はあまりない為この広大な空を独り占めしているように錯覚してしまう。
――あぁ、今日はいい日になる気がする。。。
そう思った矢先。
耳の奥に、低く伸びる音がかすかに入り込んできた。
最初は遠く、だが確かに続いている。
やがてそれは幾重にも重なり、はっきりと形を持ちはじめる。
『ファンファンファンファン!!!!!』下から幾度となく何度もサイレン音が響き渡る。
――まぁ、ならないよねこれ見たら。
カップを持つ手が落ちそうになるのを支え、ゆっくりと視線を下げる。
オフィスの真下には、警察車両と消防車、救急車がごった返し、黄色いテープが張り巡らされていた。破片が散乱する地面を警官が囲い、野次馬を押しとどめている。
「んー?あ、あれ岸辺社長じゃない?」
この会社のすぐ側で3、4人に囲まれている一際頭部が目立つ人がいる。
「さて、やっぱり大変なことになるよね...」
コーヒーを飲み干し、スーツの裾を整える。
平静を装うための一呼吸を置き、非常階段の扉を開けた。
『コツンコツンコツン』
非常階段の15階から1階まで下るのは以外にもキツく。
尚且つ電気が付いていないので暗く終わりのない螺旋を下っている。
(よし平常心。平常心。)
今回の事件は私は知らない。頑張って仕事してた!。の一点張りで貫こうと思う。そのためにもスーツに
少し被っていた砂をふるい落とし5階のドアやありとあらゆる指紋をハンカチで拭き取ったりした。まず最初の印象が大事。何事も無かったかのように無知の駝鳥になって警察の人に保護されよう。
(ん?レチがいない?彼にはお仕事をしてもらっている
だけだから大丈夫。生きてるよ。)
重い防火ドアを押し開けると、冷気がわずかに頬をかすめた。
階段を下りて会社のロビーへ出ると、蛍光灯が無機質に光を落とし、出入口は黄色いテープで塞がれている。おまけに警官二人のセット付きだ。
平然と知らないように外に出よう。スタスタと困惑の表情を作りまっすぐドアに前進sit
――ゴンッ!
鈍くそして除夜のような音が響いた乾いた音がロビー全体に反響した。
自動ドアに思い切り頭突きをしてしまったのだ。
(・・・あ、そうだ電気がないから開かないわ。ドア。)
その音で気づいた警察官2人が慌てた様子で何かを言ってドアを手動で開け駆け寄ってくる。
その瞬間を狙うように——
「せーんーぱーい!!!!大丈夫ですか???」
甲高い声がロビーに響き渡った。
ダッシュでこちらに駆け寄りその勢いのあまり私に抱きついてくる
「ちょ、めぐ重いってこれは一体何が起こったの?」
ミシミシミシと音が聞こえてきそうなほど力強く抱きつくめぐを
剥がして演技続ける。
「先輩連絡しても全然既読つかないし昨日の遅くまで仕事してたから何かあったと思ったんですよぉ!!きゃっ
おでこが真っ赤になってる!!」
尻尾があるかのように錯覚するほどサラサラの髪が目の前で縦横無尽に飛び回り顔にあたる。
(あーおでこはただの恥ずかしいだけなんだよな)
「それに関しては触れないで。わかったから、ちょっと離れて」
「おーあやせ無事だったか」
警察二人の横を横切り
次々と開きかけのドアからロビーに押し入り部署の同期達が声をかける。
「皆さんお揃いで一体何が起こったんですか?」
「いやぁ俺らも来た時にはすでにこんなんで訳分からんがてっきりちはるが山田上司に痺れを切らしてゴリラ化して暴れたんじゃないか...というのがそこにいるみたまの見解だそうだ」「みたま...いい度胸してるじゃないの? 」
「Σ(゚д゚;)ちょ、おい!何言ってやがるんだ俺はそんなこと一言も言ってないぞ」仲のいい同期と戯れ
和気あいあいとするハッピーな空間へと変化した。
だが、その雰囲気を切り裂くように先程まで空気化していた二人の警官が歩み寄った。
「すいません貴方綾瀬ちはるさんでお間違いないですか?」
「はい……そうですけど。」
「東京県警です。少しお話を伺えますか?」
――場の空気が、ぴたりと静まり返った。
・
・
・
・
「えーと綾瀬さんね」
「はい」
「それで見ての通り4階・5階・3階のオフィスの窓ガラスが粉々それに加え机やパソコンその他もろもろが無くなっているわけだけど綾瀬さん...今日の朝まで仕事をしていたそうで……お疲れ様です。一応あなたも当日現場にいた人なので聞き取りをお願いしているんですよ。どうかご協力お願いします」
そんな前置きから始まり。白い蛍光灯の下、次々と質問が投げかけられる。
「何時まで起きていましたか?」
「昨日の仕事をしていた証拠は?」
「物音や声は?」
私は事前に整えておいた言葉を、淡々と当てはめていく。
休憩室のソファで眠っていた、と。
朝起きたらすでにこうなっていた、と。
冷静に、矛盾のないように。
・
・
・
・
「すいません長く時間を取らしてしまってもう大丈夫です
。今日はありがとうございました。」
「あ、はいこちらこそありがとうございました。」
両方深々とお辞儀をし警察署を後にした。
時計を見ると21時を回っており近くのスーパーにより適当な惣菜やらツマミを買って家に帰る。
「フッフッフッ計画どうり」
家の扉を閉めた瞬間脱力感に襲われ1人でぽつりと言った
拳を振り上げ勝利の舞をする。
「あの細工は意味があった」
細工と、いうか工夫をしてある。
先日(今日)開けたあの穴と今事件となって取り扱っている
穴は同じ場所でも
あの後レチと話してたどり着いた案は事件性をより現実に近ずけるために開けた穴をレチの能力で壁を作り出すことにした。(あの穴がそのままじゃ、警察の目は内側に向く。――そんなのはごめんだわ。どうせなら“大胆な外部犯行”に見せた方がいい。)
ま、ただ唯一の欠点をあげるとなればバレる危険性があるってこと。相手は警察。
その目を欺くためには質感・色合い・音・硬さ全ての違和感を除去しないといけない。
そのクオリティを保ち続けるには使った本人は傍にいないと行けないので朝から夜にかけレチが居ないのは今も総務室にいて壁に張り付きながら頑張ってイメージを保っていると思う。
「...っぷ笑」
あぁ...ダメだ一回その作戦ができるかどうかレチにやってもらったとき壁に顔だけ出した状態で壁の維持をしていた。本人曰くより忠実に再現するには直に感じたほうがやりやすいらしい?
それが少しおかしく思えてしまう。
あとはレチに適当なタイミングで能力を解除してもらい
【小さな穴が徐々に崩壊が進んでいき穴がでかくなった】というシナリオだ。
――とにかくもう大丈夫だろう。
実際何が1番怖かったことと言うとめぐちゃんが連行する私を助けようとして警察に殴りかかろうとした時かな。
流石にそっちは予想外すぎたけど2人が止めてもらったので良かった。
「はぁ...ただいまぁごしゅじんー疲れたよぉ」
足は普段と違い幽霊のような状態になり壁をすり抜け入ってくるレチ。
顔には疲れの色が見え今にも誰かを取り憑いてしまうざっ幽霊のような感じである。
「警察官がずっと壁を触ったり何度も確認したりで
バレると思って心臓が持たなかったよ...」
「お疲れ様。レチ待ってたよほらほらレチも
おつまみ摘んで乾杯しよう!」
隣に座るように座布団をトントンと叩き手招きをする。
「なんでそんなにハイテンションなの?もしかしてお酒飲んだりしたの?」
「んーん?私結構酔うと変なことしちゃうらしくって
家族や同僚から止められてんの。だからこれは
ただのテンション上げ上げの状態ってだけ」
コプコプとオレンジジュースを注ぎツマミのポテチやケーキを食べる。
「ポテチはやっぱ幸せバター味に限るなぁぁ..ほらレチも食べて食べて」
「ん、美味い」
両手でコップに注いだジュースを飲むレチは喉を鳴らしながらご満悦のご様子だった。
「そういえばさ作った壁って霧になって消えるから
ちはるが考えたシナリオとは辻褄が合わないかもよ?」
そう、崩壊が進んでしまったと言う解釈をするよりも
そこにあった壁が無くなったというニュアンスななってしまうかもしれない。
「大丈夫大丈夫お堅い警察官じゃそこまで回んないでしょ」そう考えながらポテチを頬張り食べるちはるだった。
「そ・れ・にーーー!!あんな会社復旧するまで時間かかるだろうからそれまで私は休みだー!」
レチの肩によりかかりながらそう言いまぶたがフェーズアウトしていくのだった。
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