ブラック企業務め霊媒師の苦悩の日々

@AHIRU0917

第1話深夜×仕事≒サービス残業と三神器の槍

「レチ! お願いだから離れてくれってば!」


黒い影のような存在にしがみつかれながら、誰もいない深夜のオフィスの片隅で。唯一そこだけ一つの明かりが逃げようともがいている一人の人間の影を照らしていた。


窓の外には満月。床に転がった資料の山からは無数の手が伸びている。


「だって主さまが逃げたら仕事終わらないじゃん」

机に座ってくすくす笑う青白い顔の少年——レチは私の腕にまとわりつきながら抗議した。


「終わりそうもない仕事なんて誰もやりたくないんだよ!」

私はドアノブに飛びつこうとした瞬間、


カタカタッ


キーボードが勝手に動き出した。画面には赤い文字で『シゴトヲサボルナ』と浮かび上がる。


「あちゃー、会社のお化けさんがお怒りだね」

レチが面白そうに笑う。


「自作自演じゃない透明な手が見えてるわよ...あぁ 君が私に霊能力とか目覚めさせなければ……」


はぁ....と諦めの一息をつきトボトボと自分の机に戻りどかっと椅子に座り眼の前の書類とパソコンの作業の手を動かしながらあの出来事を

しなきゃよかったと後悔するのであった。


カタカタッ


あれは一週間前のことだった。

・・・一週間前・・・


上司から急に告げられた3日間の休暇。

なんでも「最近は厚労省がうるさくて敵わんだからほらっ休みを入れてやったぞ

愚図なお前にもちゃんとした社会のルールで守られてんだなこの会社に感謝しろよ」

と言われたため急遽お祖父ちゃんに帰ることが決まった。


ふざけんな。てか勝手に休みを決められるのって違法じゃないの?

いつか余命僅かなその髪の毛をむしり取ってやるからな。まぁ前はまともな思考判断を持っている頭じゃなかったからかそんな疑問をもったのは新幹線でおじいちゃん家に帰省に向かっている最中だった。


私のふるさとは人口が5万に満たない田舎で周りは畑だらけでコンビニはおろか近くのスーパーに行くのだって車で15分以上運転しないといけないほどのド田舎だ。

そんな田舎でもいいところはたくさんあって

例えばまず夜空が綺麗だったり海や山などの自然溢れているところも大好きだった。

中でも自慢なのが我が家にある蔵である。

たくさんの骨董品や壊れている古美術品、変色掛かっている着物、ボロボロの家具、ふるぼけた古文書が一階から二階・天井のスペース・地下の部屋にまでぎっしり詰まっている。

昔入った時はこの世の財宝全てが詰まっているように思えて日本の財宝だと目をキラキラさせて見たのも覚えている。


最初は(なんでこんな変哲もない家にこんなのがあるのかな)て思っていたけど

昔の昔 戦の時代に遡るんだけど私の家なんかよくわかんないんだけどお偉いさんに仕えていた由緒正しい家。いわゆる「」と呼ばれるすごい役職だったとおじいちゃんが言っていた。

「それがなぁ...」

 

カタカタカタッ....タン。。。



「まさかこんなのがいるとは思わなかったな」


私はキーボードを押す指を止め横で他人の椅子に座ってぐるぐると無垢な子供のように回っているレチを見ている。

この子の名前はレチ。ちなみにこの名前は略語で本名はちゅうじょめいよう?れいはく?

あーもういいや

ピカソ並に長い名前なので短くレチと読んでいる。年はしらない。

 髪はショートの黒と白のグラデーションがかかっている顔は青白く中性的な顔立ち。華奢な体つきで中学生くらいに見える。全体的に明るい青のオーラを纏っており幽霊だと個人的には思っている。

服装は...見たものを真似て作ることができるらしく朝にテレビで見た[特集☆ロックの世界]の出演者の服を真似ている。T‐シャツは黒で真ん中に骸骨。ダボダボのズボンで翠色から緑色にかけてのグラデーションでアクセサリーとかも付けて若者っぽい服装だ。

 

『ゴシュジンサマガンバーᴖ ̫ᴖ 』

こちらを見ていることに気づいたかと思うと

椅子をくるくる動かすのを辞め空中に手で何かを書くと横のパソコンに電源が入り文字が浮かび上がってきた。


(なーにがご主人だよていうか絵文字が絶妙にウザイ。)

また一泊おくようにため息をつき休めていた手を再開する。

帰省したその次の日。

あの日夜飯に近所の魚屋さんから買った鮭で主菜のムニエルを作りお味噌汁や畑から取れた野菜できんぴらごぼうや佃煮を作り家族団らんしたとこから始まった。



「あの蔵は歴史的に価値があるのがたくさんあるそうだ中身は見てもワシには何に使うかよくわからないものだったり読めないんだけどな」

 

焼酎をちびちび飲みながら顔を真っ赤にする

おじいちゃん。

「へぇー!すごいね!!ねぇおじいちゃんそれでっかい美術館とかに寄付とかしてみたら?

 綾瀬家の展示会とかできちゃうかもよ?」

「いや、、、生前の親父が確かあれらはを絶対に寄付はするなと言われたな」

「それはなんで???」

「理由はわからないが何世代もその言いつけを守り続けてきたものだし思い入れもあるんじゃないか?それか幽霊が宿っていたり?」

ガハハと笑いながら二本目の酎ハイを注ぎグビグビ飲むお祖父ちゃん。



「まぁやっぱり気になっちゃうよねー」

家族が寝静まった夜私はサビで変色している鍵を持って蔵の前に来ていた。

何気なくおじいちゃんと蔵の話をしていたら伝承が乗っている巻物や宝の地図や奇妙なアンティーク品なんかもあるという話を聞き。興味本位でその巻物を探そうと蔵の中を捜索することになった。

こういうのは太陽が出ているときにやるべきだろうが蔵の中は物が至るとことにあるため常に真っ暗。

あまり変わりはないと思った。

それにもしかしたら我が家の軌跡を辿れるかもしれないという期待があった為である。

重いドアを開け中に入ると至る所にクモの巣が張り巡らされ暗闇の中進むその足は柱や床・天井に影響を促しライトの光で白い粉が中を舞うのがよくわかる。

「あーもういい埃だらけでやばいわぁ!」

一歩また一歩と足を踏み込むたびに息が苦しくなる。

『ごほっごほっ』

咳き込むと同時にスマホを落とし唯一の光源を落としてしまった。

「あ、やば携帯落とした」

 『がごっ....バタン』

 後ろで扉が閉まる音が聞こえた。

「え?なんで扉がしまった?風?いやそんなわけが」

その時妙に生ぬるい湿度が背中をなぞる様に拭いた。


――あれおかしいな呼吸が苦しいというよりは恐怖?緊張?


 

周りを見渡すと無数の赤色の目のようなものが3つ4つ5つと蔵の奥から無数の赤い光がこちらを見つめていた。心臓の鼓動が激しくなる。息が荒くなり、喉が渇いた。本能が危険を察知し、一刻も早くここから逃げるよう叫んでいる。


(やばいこの感じ...早く逃げないと...そうだ窓から出れるかもしれない)

蔵の一階と二階にある小さな窓。

古い箱や家具が所狭しと積み上げられてるのを見渡していたその時、奥の方でかすかに光るものがあることに気づいた。それが窓の光だと確信しそれめがけ箱や家具の隙間を通り向かおうとする。


家具や小物に体がぶつかりながらも目線は漏れ出る光を逸らさなかった。

(はぁはぁ目がチカチカする。

だけどあと少し幸い家具がうまいこと積み重なっているから登れば行ける)

目と鼻の先にある窓に希望を見出し安堵した。

『ガコッッ!!』

その時、足元の何かに躓き、激しく床に倒れ込んだ。それと連動するように積み上げてあった家具や荷物が倒れ

頭を古い木箱にぶつけ、一瞬意識が朦朧とし息ができない。

体を起こそうとしたが、思うように足が痙攣して立ち上がれない。それが焦りからくるものなのか当たりどころが悪かったのかわからないが這うようにして窓に手を伸ばした時、背後の物音が大きくなった。

背後から、かすかな音が聞こえてくる。足音とも摺り音ともつかない、何かが近づいてくる音だ。赤い目たちが、ゆっくりと私に向かって移動しているのだ。


 ――あぁもうだめだなこりゃ..


絶望が心を支配した瞬間、私の体に当たって壊れた木箱から透明感のある音がこだまして聞こえた。

「やったー!!やっと封印が解かれたぞー!!!!」


箱の壊れた隙間からから元気の青年の声が聞こえた。

最初は幻覚かと思ったがその瞬間メキメキと内部から膨張するように木が張り裂ける音が聞こえ

破裂を中から出てきたのは


――異形の形をしている槍が出てきた。


その形は槍だが刃の部分に加えまるで両翼のように左右に刃がある形状をしており棒の部分は黒い稲妻模様。

柄と刃のつなぎ目の部分は4つの形の異なる輪締めが土星の周りの輪っかのようにくっついていないの一定の距離感でゆらゆらと動いている。

「少し淀みがあるなぁここ」

そう槍は言い自ら石突を地面に軽く打ち付けるとシャンと鈴の音と同時に水の波紋のようなものが地面に浮かび上がり波打つように全体に広がる。

その瞬間体にまとわりついていた倦怠感や周りにいた目がなくなりスッキリした気持ちになった。

「始めまして!!唯一の綾瀬家の後継者さん。

 なにせこの僕 調舒名窯禮霹靂は三つの神の神器の内の一つだよ」

 ぽけっとしている私をお構いなしにそう言う。槍が近づき私の手のもとに滑り込んだ。



カチカチカチカチ....

……………ピコン!  ‐‐保存完了‐‐   




「はぁこれでひとまずいけるな。てか限界だわ。レチー毛布持ってきて」

 椅子の背もたれによりかかり 明日、というか今日の憂鬱なことを思いながらもここで寝ることにする。

――今の時間は深夜の三時ここで寝れたとしても四時間ちょいくらいかな。

休憩室にあるソファで横になり額に手を載せ楽な姿勢になる。

「ご主人ーお疲れ様はいこれ」

「ありがッt....」

 手が触れたものは暖かく柔らかい毛布のものではなく。質感はもっと硬く。冷たく。質量を感じられる

 これは....てtu ?

 ――嫌な予感がする。

 「レチ私は毛布をご所望したのだけれど決してこんなnou((「いやー今日は三日月のいい月が

 出てるねこれなら祓えそうだ。」

 言葉を遮って遠いお天道様を見つめながら

うんうんと頷き言うレチ。

冷や汗が止まらない。

「丑三つ時で邪気が溜まる場所そして何より最強の相棒の僕がいる。んー好条件すぎる。」

 手のひらを見せ一つ一つ指を折ってゆっくり滑らかな口調でいう。

「じゃっやろっか悪魄(アマビ)退治」

いえーいとおちゃらけに笑うレチ。

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