第14話:最終試験!魔物との激闘と、イケメンたちの(見守り)決意

「いよいよですわ! 聖女としての、最終試験!」


私は、学園の広大な演習場に立っていた。周囲には、聖女候補生たちが緊張した面持ちで並んでいる。演習場の奥には、結界で囲まれた「魔物の森」が広がっている。そこから、うねるような魔力の波動が感じられた。


「(ゲームでは、この最終試験でヒロインが覚醒し、魔物の大群を鎮圧するはずだったわ! だが、私がその役目を奪ってやる! 完璧な聖女として、この試験を乗り越え、破滅フラグを完全に粉砕してやるんだから!)」


脳内で悪役令嬢マニュアルが叫ぶ。ヒロインの輝きを霞ませることが、私の聖女への道なのだ。


試験開始の合図が鳴り響くと、聖女候補生たちは一斉に魔物の森へと足を踏み入れた。私もまた、聖杖を握り締め、森の奥へと進んでいく。


森の中は、すでに魔物たちの咆哮が響き渡っていた。弱小なゴブリンから、巨大なオーガまで、様々な魔物が蠢いている。私は冷静に周囲を見渡し、聖杖を構えた。


「聖なる光よ、我が敵を討て! シャイニング・バースト!」


私の聖杖から放たれた光の波動が、周囲の魔物を一掃する。よし、順調だ!


その時、森の木々の間から、見慣れた三つの気配が近づいてくるのを感じた。


「レティシア様! ご無事ですか!」


レオナルドが、他の騎士団員を率いて駆けつけてきた。彼の顔には、安堵と同時に、どこか焦りの色が混じっている。


「レティシア様。魔物の動きは、わたくしが感知いたします。くれぐれも、深入りなさらぬよう」


アリスが、魔術師団を従えて現れた。彼の指先からは、常に魔力が漏れているのがわかる。


「レティシア様。何かあれば、すぐにわたくしを呼んでください。貴女の安全は、生徒会長として、わたくしが責任を持って守ります」


セドリックが、生徒会の面々を引き連れて現れた。彼の瞳には、強い決意が宿っている。


「(な、なんですって!? 彼ら、まさか私が魔物に敗れて失態を演じないよう、監視する気ね!?)」


私は心臓が跳ね上がった。まさか、彼らがここまで私の試験に執着しているとは! これは、私が聖女としての資質を偽っていないか、あるいは、魔物との戦闘で醜態を晒さないかを探るための、巧妙な監視だ!


「(くっ……抜かりないわね! だが、このレティシア、魔物討伐は得意なんだから! 見たいならいくらでも見せてあげるわ! 完璧な聖女の姿をね!)」


私は毅然と微笑んだ。彼らの顔は、一瞬にして困惑の色に染まる。


私は魔物の大群の中に突っ込んでいった。聖杖を振るうたびに、光の魔法が炸裂し、魔物たちが次々に浄化されていく。私の魔力は、まるで無限のように湧き上がり、身体中を駆け巡る。


「(この魔力……まるで、身体が光そのものになったみたい!)」


私は、これまでにないほどの高揚感を感じていた。魔物を浄化するたびに、私の魔力はさらに強くなり、周囲に光の粒子を撒き散らす。


レオナルドは、私の戦いぶりを目の当たりにして、息を呑んだ。


「レティシア様……! なんと、強大な魔力だ……! これは、我々の想像を遥かに超えている!」


彼の瞳には、驚愕と、そして深い感動の色が浮かんでいた。彼は、私が魔物の攻撃を受けそうになるたびに、反射的に剣を構えようとするが、私の放つ光の波動がそれを許さない。


アリスは、私の魔力反応を解析しながら、興奮したように呟いた。


「驚くべき魔力制御だ……! これほどの魔力を、完璧に操るとは……! 彼女は、まさに『奇跡』だ!」


彼の指先からは、魔力探知の光が激しく明滅している。彼は、私の魔力の波動に、まるで魅入られたかのように見つめていた。


セドリックは、私の活躍を目の当たりにして、優雅な笑顔のまま、その瞳の奥に熱い光を宿していた。


「レティシア様……! 貴女は、本当に、この世界の希望です……! わたくしたちが、貴女を守り抜きます!」


彼の言葉には、強い決意が込められていた。彼は、私が魔物を浄化するたびに、そっと胸に手を当てて、祈るような仕草をする。


「(な、なんですって!? 彼ら、まさか私が魔物を倒すたびに、私の魔力が暴走しないか、ハラハラしているのね!)」


私は内心で冷や汗をかきながらも、彼らの行動に感謝するふりをした。


「皆様方! ご心配には及びませんわ! わたくし、まだまだいけますもの!」


私が笑顔で答えると、彼らは複雑な表情で私を見つめた。彼らの心の中では、私の強大な魔力への驚きと、それゆえの危険性への懸念が入り混じっていたことだろう。


魔物の大群を全て浄化し終えると、演習場には静寂が戻った。私は、聖杖を地面に突き刺し、大きく息を吐いた。身体は疲労困憊だったが、心は満たされていた。


「(やったわ! これで完璧な聖女としての地位は揺るがない! ヒロインの出番も完全に奪えたし、破滅フラグも完全に粉砕できたわ!)」


私は心の中でガッツポーズを取った。周囲の聖女候補生たちは、私を尊敬の眼差しで見つめている。


レオナルドが、私の元へ駆け寄ってきた。


「レティシア様! 本当にお疲れ様でした! 貴女は、まさに真の聖女です!」


彼は私の手を取り、その大きな手で優しく包み込んだ。


アリスは、私の魔力反応を再度探知し、驚きに目を見開いた。


「レティシア様……貴女の魔力は、さらに強くなっている。だが、同時に……」


彼の言葉は、途中で途切れた。


セドリックは、私の額にそっと手を当てた。


「レティシア様。貴女は、この世界の光です。わたくしたちは、貴女を、何としても守り抜きます」


彼の瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。


三人のイケメンたちは、私が魔物との激闘を繰り広げる間、ずっと私を見守っていた。彼らの視線は、私が魔物を倒すたびに、安堵と同時に、どこか不安の色を帯びていた。彼らは、私の強大な魔力が、やがて私自身を飲み込んでしまうのではないかと、密かに恐れていたのだ。


「(ふふん、これで悪役令嬢が魔物に敗れる、なんて破滅フラグは立てられないわ! むしろ、優秀な聖女として、皆に慕われているという評価が上がるに違いないわ!)」


私の聖女への道は、イケメンたちの過保護と、そこから発生する「破滅の予感」で満ちていた。それでも私は、ひたすら前だけを見て進む。


レオナルド「(……レティシア様。貴女の強さは、俺の心を震わせる。この命に代えても、貴女を守り抜く)」

アリス「(彼女の魔力は、もはや解析不能の領域に達している。この研究心は、いつしか、彼女への執着に変わっていた)」

セドリック「(レティシア様……貴女の存在が、わたくしの全てだ。どうか、この愛が、貴女を救いますように……)」


脳内会議の結論:「最終試験、完璧にクリア! イケメンたちの監視も、私の聖女としての評価を上げるための踏み台になったわ! 破滅フラグ、完全粉砕ですわ!」

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