031 初めての仕事場で数千万の機材を持たされる感じ。

 メルテアの日用品を買うついでに購入して来た小麦を少し鍋に入れ。適量の水を用意して簡易調理を使うと、鍋の中に麦茶が出来上がった。


 便利だ。焙煎ばいせんも、水を沸かす必要も、水出しで何時間も待つ必要もない。


 でも、夏場に湯気が立っている麦茶は流石に暑いから氷で冷やそうか。


 水と風のスキルに50ポイントずつ振って魔導師のジョブにつくと。庭でアイスウォールを唱えて氷の壁を作り出す。


 一回り大きい鍋に入れた麦茶のは入った鍋の周りを、オリハルコンのナイフで突いて砕いた氷で埋めて、少し水を入れた。


「ウトラ、しばらくして鍋の上部が冷たくなったら、コップに入れて部屋まで持って来てくれ」


 1杯目は氷を直接ぶち込んで強引に冷やした物を持っていくけど、せっかく作ったのだし薄まっていない物の味も確認したい。


 ああ、ついでに桶に氷を入れて持って行くか。多少は室温が下がるんじゃないかな。


 今は夏の季節らしく、湿度が高くないので汗だくになるほどではないとはいえ、昼間にベッドの上に行けば多分暑いだろう。


 リレッタとメルテアを連れて寝室へ入り、メルテアのステータスを開く。


 ポイントの合計は210か。ガズ達と比べると19歳という年齢にしては高いかな?


 ただ、すごい尖ってるな。歌のスキルは40もあるのに敏捷や知力は8しかない。礼儀作法、美容、ダンスと楽器も10を超えたくらいか。きっとひたすら歌って暮らしていたんだろうな。


「トルバドール?」


 ジョブ一覧を開くとバードの次にトルバドールと書かれていた。多分上位の職だと思うんだけど、カタカナ語はよく分からないな。漢字なら1文字見ればなんとなく分かるんだが。


「バードの上位職ですね。仲間を勝利に導くと言われている、憧れの職業です」


 そう言って夢見がちな少女のような顔をしたメルテアだったけど、自力で到達してるんだよなぁ。


「メルテアのジョブ一覧を確認したら表示されていたんだよ。その憧れの職業にもう転職できるみたいだね」


 そう言うと急いで自分で確認したのだろう。目を大きく見開いて、目に涙を浮かべ始めた。


「本当にありました。これでより一層ご主人様のお役に立てますね」


「出会うのがあと1日遅かったら、トルバドールに転職して値が上がっていたかも知れないな。

 自分としては嬉しいけど、これを知ったらヴェルトは泣いて悔しがりそうだ」


「ふふふ、きっと神のお導きですね。それよりも、出会った時に教えていただいた歌の続きを教えて下さいませんか?」


 笑っていたのに歌の話になると急に目が真剣になる。どうやらメルテアにとって歌に関する話題は地雷原のようなものらしい。迂闊うかつに踏み入れないように気を付けよう⋯⋯


「あ、ああ。ちょっと待ってくれ今思い出すから。男の自分が歌うのは結構難しいんだよ」


 今自分が持っているスキルポイントは215。ギリギリ知力と歌が100にできるかな。


 ダンジョンに行くとなるとHPとかは10しておきたいし、メルテアの知力と歌を両方100にするのは難しい。


 どうせ知力を上げるならマップを覚える役割はリレッタからメルテアに移してもいいな。そしたらリレッタをスティール型に戻せるし、戦闘型にしてもいい。


 90づつにしても全然足りないな、HPと幸運以外は1にするしかないかも。マテリアを装着して無理やり誤魔化すか?


 となると防具は硬革とかじゃなくて、もっと良い物にしておかないと不安だな。


「説明は省くけど。自分の特殊なスキルでメルテアの知力と歌のスキルを大幅に上昇させた。

 だから1度聞けば完璧に思い出せるはずだけど、そもそも自分は上手く歌えないからメルテアの方で練習してくれ」


 そう言ってからオペラ魔笛内の夜の女王のアリアを精一杯歌った。喉から血の味がするな。頑丈も上げておかないと駄目そうだ、ヒールしておこう。


 歌声を試すならと商会で気軽に頼んだけど。メルテアの琴線きんせんに触れたのか、練習も真剣だ。流石モーツァルト。


 とてもじゃないけど、リレッタにセクハラしながら取引所を見れる雰囲気じゃないので。ある程度形になったら次の曲をリクエストする形で楽しむ事にした。


 あれだな。一度自分で歌う必要はあるけどスマートホームみたいでいいな。というか、家にプロ歌手を呼んで歌を聴くとか、どこのお貴族様だよ。


「失礼します。お飲み物をお持ち致しました」


 ノックが響き、入室を許可するとウトラが麦茶を持って入って来た。丁度いい、喉をうるおすついでにメルテアにもヒールをしておくか。


「あの、ご主人様」


「ん?どうした。一緒に歌が聞きたいならそこの椅子に座っていいぞ」


 麦茶を置くと、お盆を抱えたままこちらを向いていたウトラが声をかけてきた。


「ありがとうございます。それもなのですが、歌を聴いて子供達が集まって来まして。氷を配ってもよろしいでしょうか?」


 会話中、メルテアの歌が止まると確かに外から子供の話し声が聞こえて来た。


「あの氷壁は好きにしていいけど。子供が欠片を振り回したりしないよう気を付けるんだぞ、尖っていれば普通に肌が切れるから」


「ありがとうございます。食べられるくらいの小さな物だけ渡す事にします」


 ウトラが部屋を退出すると、メルテアがまた歌い始める。いや、本当に贅沢ぜいたくだな。


 メルテアはせっかく知力を上げるので、俺の使っていた精霊銀のピアスを上げることにした。自分が魔法を使う時は、魔導師か大魔導師のジョブにつけばいいからいらなくなったしな。


 ただ、自分の分のピアスで数字が3以上の物が見つからなかったので、1つ上の緋色金のピアス[2]を買う事にした。


 緋緋色金ヒヒイロカネではなくて緋色金ヒイロカネなので、ただの赤っぽい色をした金の可能性もあるけど、精霊銀の次なんだからきっとすごい金属なんだろう。


 最低価格が金貨14枚のところ。大きなエメラルドがついた物を金貨24枚⋯の、半額で購入して。ヒールとエンハンスのマテリアを装着した。


 メルテアの装備は、まず武器が古代樹の杖[2]にウインドとヒールのマテリアを装着予定だ。多分風と回復魔法の威力が上がると思うので、明日違いを試してみるつもりだ。


 防具は鱗の上の、甲殻のさらに上位である、上鱗の防具一式にした。ただ、胴体だけは鎧ではなく。胸元に板があるだけで、腹と背中がガラ空きの胸当てにした。


 値段が安く、MPの回復速度も上がって、目に嬉しいという素敵な装備だ。リレッタもこれにしたいけど前衛だからなぁ、流石に危ないだろうか?


 小盾に物理防御と魔法防御。胸当てにHPと頑丈。手袋に筋力と持久力。鉢金に魔法攻撃力と知力。靴だけは[3]の物があったので回復力とMPと歌のマテリアをつけた。


 合わせて金貨34枚の、半額の17枚。今日だけでかなりの金額を使ったはずなんだけど、アイテムボックスにはまだ金貨200枚が入っていた。


 あれだけ色々買って100枚も減っていないのか。やっぱり半額はひどいな。


 自分とリレッタの防具も買いたいけど。上鱗で[2]以上の物が見当たらない。そもそも出品数が少ないんだよな、その上の竜皮も[1]までしか無いし。さらに上の龍鱗は[0]が10品くらいしか出品されていない。


 となると1つ下の甲殻装備で探すしかないんだけど。これカニとかの甲殻類の見た目じゃなくて虫の方なんだよな。しかも、色合いが黒っぽいから見た目がよろしくない。


 それに主人より奴隷の装備がいいのはどうなんだ?というのもあって竜皮の[1]で揃えることにした。どうせ今までもマテリア装着していなかったし。


 盾、鎧、手袋、靴、鉢金の5箇所に。物理防御、魔法防御、筋力、敏捷、持久力という最低限のマテリアを装着した。


 魔力の知力の鱗の手袋は作ったばかりだけど売却だな。リレッタも使わないし、もちろんウトラにも必要ない。


 MPアップの相場が金貨2枚だから金貨200枚で売るかな。いや、売れるのかこれ?中堅用の装備とはいえ高いよなぁ、売れなかったら値下げするだけなんだけど。簡単に作れるから価値があるように思えないんだよな。


「あ、あのご主人様?さっきからマテリアを凄い勢いで消費していらっしゃいますが⋯⋯」


「すまん、流石にうるさかったか?」


 気持ちよく歌っているのに隣で10回以上連続で「装着!」とか叫んでいたら邪魔だよな。そのくらいは配慮するべきだったかも知れない。


「いえ、そうではなくて。金額も心配ですが、それよりもさっきからまったく失敗していないように見えるのですが⋯?」


「ああ、自分は装備の目利きができるんだ。だから装着に成功するかどうかが事前に分かるんだよ。

 バレると非常に面倒な事になるだろうから絶対に秘密だぞ」


「でしたら子供達がいなくなってからやるか、他の場所でした方がよいと思います。叫んでいるのが聞こえてしまいますし、失敗した光が出ないのは不思議がられるかも知れません」


「あっ」


 自宅だからと完全に気を抜いていた。さっきウトラが子供が集まって来たと言ったばかりじゃないか。1個、2個ならともかく、10個以上とか絶対に変だと思われるだろ。これからは買い物だけして装着はダンジョンでやった方がいいな。


「やらかした⋯⋯ありがとう。まったく気が付かなかったよ」


「いえ、さっそくお役に立てたようで何よりです。

 それよりも、それらがすべて成功したとなるとかなりの金額になりますね」


「ああ、さっきも言ったがメルテアのスキルはかなり尖った振り方になっているからな。これくらいの装備がないと、ダンジョンですぐに死んでしまう可能性があるだろ?」


「え゙っこれ全部私の装備なんですか!?」


「パーティの後方で歌と魔法で支援するためのそうびだな。このピアスをつけると、火と風と回復魔法が使えるようになるんだ」


「魔法の装備!?しかも3重って国宝級ではないですか!」


「あー目利きができるとあんな感じでぽんぽんできるから気にしなくていいよ。リレッタの尻に刺さってるのは4重だし」


「国宝をお尻に!?」


 それだけ言うと、驚きすぎたのかメルテアは気を失ってしまった。慌てて抱き起こしてベッドに寝かせたけど大丈夫だろうか?とりあえずヒールをしておくか。


 言われてみれば酷い話だ。単純計算で金貨1万枚の価値がありそうな代物を、犯罪奴隷の尻に入れているんだからな。


 貴族に知られれば、献上しろなどと言われるかも知れないけど、尻に入れたものを献上するのは逆に不敬ではないだろうか⋯⋯うん、バレないように気を付けよう。


 さいわいな事に、ウォーターとヒールはほぼ使わないし、4つ目はMPアップだ。エンハンスだけ使うようにしていればバレることはないだろう。


 メルテアに渡すピアスは奪われても痛くはないし、ピアスなら使用済みでも首をねられることは無いだろうから安心だな。


 さて、どこまでやったんだったか。そうだ、次はリレッタの分だったな。


 上鱗以上は物がない。甲殻はあまり見たくないなら鱗でそろえるしかないか。鱗ならかなりの数が出品されているし[2]ならすぐに集まるだろう。


 [3]は上鱗以上でなければ必要ないし[4]があれば一応確保って感じかな。


 などと言いつつも物欲センサーはきっちり働いたようだ。かなりの数を確認したけど[2]で一式揃えるのがやっとだった。


 盾に物理防御と魔法防御、胸当てにHPと頑丈までは一緒で。手袋に強化魔法強化と回避、靴にダッシュとジャンプ、鉢金に敏捷と持久力のマテリアをつけることにした。


 胸当てなのはしょうがない。「鱗の」で検索して鎧よりも先に[2]が出てきたんだからしょうがなかったんだ。


 せっかくなのでリレッタに装備してもらうと。思ったよりきちんと隠れているようだ。


 横から見えたり、谷間が見えたりはせず。あくまでも前面胸部のみ守っている鎧ということらしい。


 これ以上の物が欲しければ、下着と同じ様に自分で作れと言う事か。いいだろう、革細工師のジョブを手に入れたあかつきには自分好みの防具を作ってやろうじゃないか。簡易製作スキルでな!


 ウトラによるとしばらく子供たちの間で、歌の途中で装着!と相槌あいづちを入れる遊びが流行ったらしい。




――――――――――――――――――――


メルテア 19歳 ♀

奴隷(所有:デイジー) ジョブ:ミンストレル


初期合計スキルポイント210

バード

HP11 MP10 筋力11 頑丈10 敏捷8 器用10 知力8 精神7 運13

ジャンプ6 ダッシュ7 持久力10 水泳1

ナイフ5 料理5 礼儀作法10 美容15

ダンス13 歌40 演奏10

 ↓

HP1 MP1 筋力1 頑丈10 敏捷1 器用1 知力90 精神1 運10

ジャンプ1 ダッシュ1 持久力1 水泳1

ナイフ0 料理0 礼儀作法0 美容0

ダンス0 歌90 演奏0


大風の治療の古代樹の杖[0]、防護の魔防の上鱗の小盾[0]

体力の頑丈の上鱗の胸当て[0]、筋力の持続の上鱗の手袋[0]、再生の魔力の耳奪の上鱗の靴[0]、集魔の知力の上鱗の針金[0]

炎上の風上の快癒の精霊銀のピアス[0]、ミニスカート[2]

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