第二章 死の狭間

第一部 復讐

二十一輪 挑発

「どう?敵ちゃんは」


ボクが尋ねると、マリンが木の棒で倒れている敵をつっつく。


「死んではないけどもう動かなさそう」


「そっか。じゃ、帰ろ帰ろ。夜でしょ?帰んなきゃ補導されちゃうかもだし」


「あーしがいるから平気なような気もするけど」


確かにそうかもしれないけど。今マリン大学生らしいし。

今日の依頼は解決し終わたし早く帰りたい。ディルタは一応依頼も受け付けて入るんだよね。基本的にはすごく自由なとこだけど。

と、ふと思ったことを口に出す。


「思ったんだけどさ、この三人で活動すること、昔から多いよね」


マリー、マリン、ボクの三人。何でかはわからないけど、何気に多い気がする。


「ウィリーとマリリンは仲いいからじゃないの?」


「なるほどねー」


じゃあ、マリーとマリンの組み合わせは、マリーが女子慣れするためか。マリン、面倒見いいから抜粋されたんだと思う。

ボクたちは歩き始めた。でも、マリーは少しの間後ろを見て立ち止まっていた。


「マリー?どうしたの、帰るよ。問題でもあった?」


「あ、いや……わかった」


マリーは奥歯にものが詰まったような喋り方をして、目をそらす。

今日は森林の反対の方まで来たから、暗い森林を抜けて帰らないといけない。足元だったり周りだったりが見づらいからあんま好きじゃない。


「あーしはだいぶ良くなってきたけど、ウィリーはまだ野骨完治してないでしょ」


「うん。早く治ってほしいなぁ……」


そんな会話をしながら森林の中を歩いていると、後ろから発砲音が聞こえた。

……狙われている。どこから撃たれた?避けなきゃ……!

反射的に後ろを振り返ると、銃弾が、まっすぐ飛んできていた。


避けられない……っ!


鋭い痛みが腕を貫く。銃弾が左腕の肉にめり込み、熱い血がじわじわと滲み出る。


「いったぁ……」


「大丈夫!?」


「うん……だけど、予想以上に痛いね、これは」


ボクは左腕を抑えて顔をしかめた。


「あのさぁ、今発砲してきた人、誰?皮膚えぐれて痛いんだけど。出てきてよ」


奥に向かって声を投げかけると、枝が不気味に折れる音が響く。静寂を押し破るように、暗がりから男が姿を現した。


「さっきはよくも同盟相手を倒してくれたな」


男が、一人。さっき倒したやつの同盟組んでるやつか。ボクは少しムカついて挑発の言葉を投げかける。


「……何?ボクらと戦うなら銃があれば一人で平気だって?」


「なわけあるか。もちろん味方もたくさん連れてきた」


そう言うと、奥から無数の男たちが出てきた。ただ、銃を所持しているのは1人だけのようで安心する。


「……集団対個人、好きじゃないんだよね。負ける可能性が上がるからさ。負けたら、次の試合までに復活できる確率がガクンと下がるでしょ?」


息を深く吸ってゆっくり吐く。ボクはため息をつくと敵に向かって呼びかける。


「いいよ。来なよ」

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