異世界で俺だけがチートプログラマー~スキルスロット無限とプログラム知識で、拉致召喚した女神にざまぁをぶち込んでやる~

喰寝丸太

第1話 拉致同然の召喚

「ええっ、エロ動画サイトに入れなくなっただって。そんなの俺の責任じゃないだろう。金返せって言われてもな」


 俺の作った動画ダウンローダーは正常に作動してるぞ。

 ファイル落としたのが管理者にばれたら、IPで弾かれるようになるだけだ。

 だが、IPなんぞ、変えれば良いだろう。


 このド素人が!

 親切にしてやるか。

 一応、カモだからな。

 美味しい仕事だったし、またぼったくってやりたい。


 IPアドレスの変更のやり方をメールするために、文章を打ち込み始めた。

 くらっとめまい。

 これはやばい、この感覚はかなりきてる。

 目に見える部屋の景色がぐにゃぐゃ曲がって見えた。

 それが目まぐるしく動く。


 痛みはないが、脳の血管が切れたか?

 犯罪みたいなグレーな仕事をしてたから、ろくな死に方はしないと思ってたが、そうか俺はもう終わりか?


世地よち無限むげん。25歳。無職ですね?」


 白い空間で、羽の生えた天使みたいな奴が尋ねて来た。

 周りには10代後半から、20代までの男女がたくさんいて、やはり天使と話している。


「無職ってのは違う。フリーのプログラマーだ」

「面接が苦手で何度受けても落ちてますね。趣味は実益を兼ねたプログラム。裕福に食っていける金は稼いでいる。仕事の依頼を受けていた掲示板の内容はほとんど犯罪行為」


 そうなんだ、俺の仕事は犯罪スレスレでかなり危ない。

 例えば、掲示板に広告を自動的に書き込むとか。

 ホームページのデータの吸出しとか。

 動画サイトの動画ダウロードとか。

 ホームページの自動巡回情報収集とか。


 ゲームなんかだと、BOTと呼ばれるプレイヤーが勝手に動いて、経験値稼ぎをするとか。

 パラメーター改ざんなんかもある。

 とにかく、金は良いが、ろくな仕事じゃない。


「悪いかよ。ここは亡者の審判の間で、地獄行きか?」

「死んでないですよ。いくら女神様でも、こんな大人数の死人を生き返らせるのは不可能です」


 死んでないなら、拉致だよな。

 いま慰謝料とかを持ち出すのは不味い。

 こんな空間を作れる奴に対抗する力なんか持ってない。

 システムの理不尽には慣れっこだ。

 仕様に文句を言っても解決しない。


「ちっ、そうか。仕事なら報酬次第だな」

「意外ですね。元の場所に返せと他の人は怒鳴っているのに」


 怒鳴りたくなる気持ちは分かる。


「さっさと、依頼を話せ」

「女神様から、お話があります。跪き、顔を伏せ、口を閉じなさい」


 くっ、強制的に片膝をついて、顔を伏せた格好にさせられた。

 動けない。


 生かすも殺すのも自由自在って訳だな。

 糞が!

 だが、いつか覚えてろよ!


「わらわは女神である! 集まりし神の勇者達よ! そなたら100人には異世界で邪神を討伐してもらう!」


 女性の美声が聞こえてきた。

 日本に戻せとの声が上がる。

 天照大御神の名前を叫んで助けを求める者。

 色々といる。


「ぶっ殺す!」

「そちのチートスキルは物乞いじゃ」


 みんな黙った。

 これ以上言うと恐らく消されるのを感じ取ったな。


「勘違いしてないか。そなた達の価値など、愛玩動物ほどもない。星に勝手に湧いたボウフラよ」


 神なんてこんなものだよな。

 酷いって小さい声が聞こえる。

 ぶつぶつと文句を言う声も。


「わらわは寛大じゃ。邪神討伐のあかつきには、元の世界で順風満帆の幸せで豊かな人生を約束しようではないか。励むが良い」


 たぶん褒美は先着1名様だろうな。

 もっとも邪神に簡単に勝てるとは限らない。


 話が終わると立てるようになった。

 女神とやらは、もういないようだ。

 謁見が終わりか。


「【邪神討伐成功率】あなたの邪神討伐の可能性はたった0.2%ですね。ですが、今回の最高値です。今回は不作ですね。どうやら、この世界は廃棄になりそうです」


 やっぱりな。

 この女神は無茶だろう。

 人間が簡単に神に勝てるのなら、そんな設定はおかしい。

 ゲームでもラスボスとかには簡単には勝てない。

 勝てる前提のゲームでも何度も死に戻り挑戦するのが普通。

 まして、現実で0.2%もあれば、凄いと言わざるを得ない。


「時間が惜しい。さっさと、手続きを進めろ。このグズが」


 この偉そうな態度が面接に落ち続けたってのは分かってる。

 女神が怒っても知るものか。

 天使に怒りの表情は見えない。


 女神が捨て駒の奴の思考なんて読まないだろう。

 読んでたとしても、こんなことで怒るような奴だったら、雇い主としては失格だ。

 無茶を言われてるのはこっちだからな。


「【邪神討伐成功率】うそっ、0.21%に上がった。強気な態度にやる気が見えて、これならと思って上がったんですか。確かに積極的なので気に入りましたけど。他の人は嫌々やってますから。では、チートスキルをひとつ選んでください。気に入ったので、できるサービスはしましょう。無理なスキルは許可できませんけど」


 ここでの選択が全てだ。

 失敗したら、たぶん終り。

 敵の邪神はきっとなんでもあり。

 弱点などないに決まってる。


 女神の考えは判る。

 最高値が0.2%なら、平均は0.1%だろう。

 0.1%の人間を100人挑ませれば10%だ。

 10%なら、10回に1回、当たりが出るかも知れない。

 そんな計算だろう。


 負けないためには確率を上げる。

 数こそ力。

 これは間違ってない。


 何となく考えがまとまった。

 可能かどうか、質問してみよう。


「普通のスキルの獲得条件を教えろ」

「【邪神討伐成功率】ええっ、0.22%に上がりました。10年間ほど1日のほとんどを費やして修行をすれば、ひとつ獲得できます。送る世界の平民が覚えるスキルのほとんどが農作業や生産や家事にまつわるものですね。貴族や兵士の家系では、戦闘に関する物が多いです。10年と言いましたが、良き師匠に手ほどきされれば、5年ほどに短縮されるかも知れません」


「覚えられるスキル数の限界はあるのか?」

「もちろんです。才能というものは存在しますから。歴史上ではスキル限界の最多は6個ですね。【邪神討伐成功率】何で、0.23%?! なんで上がるんです?!」


 とりあえず、プランA。


「日本での経験はスキルになって、チートスキルとは別に貰えるのか?」

「貰えます。【邪神討伐成功率】0.24%! また増えてます! 驚きですね!」


「俺のチートスキルはスキルスロット無限」

「【邪神討伐成功率】5年間チートスキルなしですよ。不利なはずなのに0.25%! 信じられません」


 チートスキルはスキルスロット無限。

 これ以外に選択肢は考えられない。

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