第24話いつかの敵と新たな課題

「危ないヨォ!」

…え?

聞き覚えのある声が聞こえてきたと思ったら、その瞬間には10mはあるであろう紫の弾幕がシャボン玉のごとく弾けていった。

これには全員目が点になった。

「お久しぶりですネェ、佐藤優太郎サン?」

手を抑えてクスクス笑いながら挨拶を交わす。

この喋り方は、あの時倒したはずの奴だ。仕留め損ねたか、ワープか何かで逃れた?でもなんで敵対してるハズの僕らを?

いくら考えても検討がつかない。


「…これは一体、どういう風の吹き回しかな?」

口を開いたのは優太郎という人物だった。それは頭が沸騰しそうなくらいお怒りの様子である。

「ボクはね、この子タチに倒されちゃったんだよネェ。でも、その時残機5個あったカラ、生き返れたんだよネェ。しかも、忌々しい魔王軍幹部の称号も外れたしネェ♪」

シャローアは優太郎とは対照的に、お花畑が出来上がるんじゃないかと思うくらい笑顔で楽しそうに答える。それを聞いた僕と優太郎除く3人も釣られて笑顔になっている。自分は街を破壊しようとした奴なので、少しずつ湧き上がる怒りを抑え、石像のごとく表情を変えずに聞いていた。


特に幹部の称号が外れる話は、楽しそうに言っていた。アイツは、魔王軍幹部を辞めたがっていたのかな…?

「…一時撤退だ。チャオ!」

これまたどぎつい声を放ちながら、闇の中的な場所に消えていった。アイツは裏切られたように感じて怒っているようにも見える。

…さて、尋問タイムだ。このずんぐりゴリラに説明を要求しなくては。


「なぜ僕達を助けたの?元々はお前魔王軍幹部だったのに」

全員警戒心マックスと攻撃の構えをした状態で、少しキツめに言う。ここまで警戒心が高くなったのは初めてだ。

「あの連中に可愛がられてたからネェ、その恩返しをしてあげないとネェ!」

それを聞くと、さっきの怒りが少しずつ消えていった。悪巧みをしているようにも見えるが、特に裏は無さそうだ。それ自分達は日本に帰れるし、シャローア的には恨みを晴らせてお互いウィンウィン。そう考えると納得がいき、さらに怒りが消えていく。

「利害一致…ってやつですかね」

シアンはキョトンとして言う。多分だけどあんまり分かってないな、うん。

「まぁ、そういうことやない?」

「…ところで、リガイイッチって何だ?」

あぁ、やっぱり分かってないやつがひとり居た。やれやれ…

「利害一致は、メリットを享受したり、両者得するようなことだよ」

「はえー、そういう意味なんですね…」

やっぱりシアン、お前もわかってなかったのか…さらに呆れる。


「とりあえずボクは、このまま居るといずれバレて攻撃食らうカラ、別のとこに行ってくるヨォ。またネェ!」

「ちょ、待っ…!」

楽しげにそう言うと、溶けていくように消えていった。多分あいつは、中立的な立ち位置なのだろうと考える。

他にも聞きたいことはあったが、本来は僕らは、やりたいことがあって来たのだ。早いところ聞きこみ調査しないと、また優太郎が来てしまう…!少し焦りを覚えた。


深夜の1時くらいになるまでぶっ通しで聞きこみ調査をしたが、何一つ有益な情報が手に入らない…手に入れたのは、『疲れ、デマ情報、怒り』くらいだ…ぶっ通しでやってたため、全員足が棒になるくらい疲弊している。オマケにストレスも溜まっていて、モンスターを見つけたらサンドバッグにしてやろうかと考えるくらいストレスが溜まっていた。優太郎に出くわすかもという不安もあって尚更。

「どんだけ聞いても良さげなモン手に入らん…手に入ったん言うたら、疲労感とデマ情報くらいや…」

「そうだぞ…こんなもん要らねぇ…」

シアンも疲れているけど、亜希子やレッドも珍しくすごく疲れた表情をしている。普段めちゃくちゃ元気に走り回っているため、これは非常に珍しい。こいつらにもちゃんと疲れが存在しているんだなと関心した。自分も疲れすぎて足がガタガタ震えている。

「今日は流石に宿で寝よう…」

そう提案すると、みんな乗ってくれた。

「そうだな、今日は流石に休むぞー!」

「早く寝て、明日に備えんと!」

「先に宿取っといて良かったですね、さっさと休みましょー!」


…やっぱコイツら、体力とかいう概念存在しないんじゃないの?と感じるレベルで回復してる。さっきの元気のなさはどこへ行ったんだ?

3人の元気さを横目に、自分はとぼとぼと宿へ向かう。宿に着いたら、風呂入って寝よう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る