第23話暗闇の星と明るい闇

馬車を守るための防衛戦を終えて今はすっかり夜中で、みんな寝た状態。みんなは今おやすみ中だけど、僕は寝込みを襲われないように見張り中。

夜空を見ていると、昔夜中にこっそり一人で出掛けようとしたのを母ちゃんにバレて、カンカンに叱られたのをしみじみと思い出すな〜。今となっては思い出のようなものだ。


運転手のおっちゃんには「見張りをするなんてそんな!ちゃんと休んでください!」と焦るように言われたけど、全員寝る訳にはいかないだろう。「寝込みを襲われるとそれこそ全滅ですよ」と冷静に言うと、「なんと心優しい…!貴方のような勇者様に会えてよかった…!」と感激して眠りについた。

…にしても、暗すぎる。日本の都会やハーフタウンでは夜でも電気や街灯が付いていたけど、ここにそんな暗闇を照らす星々は存在しない。ここに来て田舎に住んだことない弊害が来たか…くそっ。

とりあえず、今のところは何もないな。このまま何事もなければいいけど…


本当に何事もなく朝を迎えてしまうとは思いもしなかった。他の4人も次々と起きてゆく。

「おふぁよーございまぁー…」「おはようさん!」「おーす!」

「おはようございます皆様!勇者様、見張りありがとうございました!」

深々とお礼をされる。礼をされるのは嬉しいが、今はただただ眠い!今にもぶっ倒れそうなくらいには眠い!

徹夜するなんて日本でもしたこと無かったならなぁ…馬車の中で眠るとするか…そう考えながら、バチクソ重い足取りで馬車へ向かう。


「いいか…?絶対に騒がないでね…?今から僕寝るから…」

コイツら、特にレッドとシアンは普通に言っても無駄。だから、静かにキレるように言ってみる。

それぞれ元気に「任せとき!」「嫌です!」「オッケー!」と言う。

…なにか今聞き捨てならん言葉が聞こえた気がした。

「誰だ嫌って言った人、後で杖でシバいたろかりゃ…」同様の言い方をしながら、自分は眠りについた。


「……て………い!そろ…ろ……ですよ!」

「んにゃむにゃ…え?」

目をゴシゴシと擦りながらゆっくりと体を起こす。ここはどこだ…?

「起きてください!そろそろ街ですよ!」

「え?嘘!?もう!?」

全然寝た気がしないのだけど、もう着きそうなのかとびっくりした。

窓の外を見てみると、そこには東京のように立派な大都会が見えていた。その大量のビル達は、自分たちを誘ってるんじゃないかと思うくらいには美しく立派だ。街中は床はコンクリートで埋め尽くされてるが、街の外は赤っぽい砂漠で覆われている。

「おい見ろ良太郎!めちゃくちゃデケェ建物があるぞ!」

「久々に見た光景や…!しかもこれ絶対夜に見たら絶景やろ!」

「実は私、この街に来るのは初めてで。綺麗だとは聞きましたが、まさかここまでとは…!」

「こんな綺麗なもの見るなんて何年ぶりだろ…!すごいな…!」

自分も数年ぶりくらいに見たため、馬車に乗っている間、ずっと大都会に目が離せなくなっていた。みんなも久しぶりだったり初めてだったりで、目がキラキラしている。


そろそろ馬車を降りる。度は長いようであっという間だった。それぞれ4人が運転手さんに挨拶を交わすと、「それでは、またどこかで!」と言ってそくささと立ち去る。

綺麗な街だけど、いつまでもこの街に見惚れてる暇は無いね。

さて、まずは…と考えながら街に入ろうとすると、明らかに怪しいオーラをまとった黒スーツを着た細身で長身の男性が、カッ…カッ…と音を鳴らしてゆっくりとこちら側へ歩いてゆく。

すると突然、謎の紫の1mくらいの弾幕を人数分放ってきた。唐突だったため急いで避ける。

「アンタ!乱暴な挨拶だね、礼儀というもnバベラッ!」

まさかの追尾弾かよ…目ん玉ひとつ飛び出るくらい痛いな。痛すぎて腕を抑えてうずくまってしまう。右腕折れたかと思った。見た感じ、他3人も同様に右腕を負傷したみたいだ。


「…これでトドメだよ、釣られた愚かな冒険者たち!」

…この低い声、あの夢と似たような声だ!

「…まさかその声…!」

「その通り俺が良太郎、お前の父ちゃんだよ!感動の再会だねぇ♪」

アイツ…ヘラヘラと調子良さそうに…!しかもなんで顔を知って…ぐっ…

「じゃあ、また来世で会おうな♪チャオ!」

さっきの10倍くらいでかい紫の弾幕を出てきやがった!!さすがにこれは死_____!


「危ないヨォ!」

…は?


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