第2話 柴犬
そして新たに冒険に旅立つのがこのわたし、ミサトである。
高校を卒業したわたしは、パペットアニマルズ使いの“パペリスト”になるために旅に出ることを決めた。
ちなみにクラスのほとんどの子は、普通に大学か専門学校に進む。
両親にはめちゃくちゃ反対されたが、母親の「恥ずかしいからやめて」という言葉に逆に火がつき、意志を貫き通すことができた。
ちなみにおばあちゃんからは「嫁にいきそびれるわ」という、これまた昔の映画でしか聞いたことのないような辛辣な言葉を浴びせられたが、わたしは負けなかった。
絶対に世界一のパペリスト、パペリスターになってやる!
ということで、今日は近所のパペリストにアニモデラーをもらいにいく。
アニモデラーは未成年の使用を禁止していて、高校卒業後に希望者が手にすることができる装置。
一般販売はされておらず、コーチの資格を持っているパペリストから受け取ることが義務付けられているのだ。
近所のパペリスト、ゲンキおじちゃんの家は歩いて5分。
幼馴染の"ゲンキ"のお父さんだからそう呼んでいるのであって、実際はあんまり元気のない大人しいおじちゃんである。
「ゲンキおじちゃんやっほー」
「ほぅ、きたか」
おじちゃんは一回家の奥に引っ込んだかと思うと、すぐ戻ってきた。
手にはアニモデラー。話が早くて助かる。
「ありがとー!」
「ほれ、パペ瓶も」
そうそう、これがなくっちゃね。
このパペット瓶に動物の一部を入れてDNAを読み取るのだ。
「それで、最初の動物は決めたんか?」
「うーん、それが決まらないのよ。うちで飼っている猫のミャー子はもうおばあちゃんだし、戦闘力もなさそうで」
パペリストになるための冒険には、最初の動物が不可欠なのだ。
「いないんだったら、うちのペットをみていきなさい」
やった、本当に話が早い。
「ありがとうございまーす!」
わたしは遠慮せずにおうちに上がらせてもらった。
部屋の中には三匹の動物。
犬、猫、うさぎ。
「うちのペットたちはまだ若くて元気だから、いいパペマルが作れるだろう。一匹選びなさい」
「ではでは、お言葉に甘えて」
へこへこと頭を下げながら心の中で「一匹だけなんかーい」とツッコミを入れる。まぁ最初から楽ばっかりさせてもらってたら成長しないもんね。
んーと、どの子にしよう。
猫ちゃんに近づいていくとものすごい形相で『シャー!!』と怒られた。
この子とは相性が悪そう。
続いてうさぎを見てみるが、どうにも
「弱そう」
いけない、心の声が漏れてしまった。
「そう思うのも無理はないがな、うさぎは意外とポテンシャルが高いんだ。猫はスピードがあるし、犬はパワーがあるが、うさぎも脚力や聴力などを活かせばバトルでもアドベンチャーレースでも活躍できるぞ」
「なるほど」
うーむ、どうしよう。
犬の姿が見えなくなったので部屋を見渡すと、少し離れたところから遠慮がちにこっちを見つめる柴犬を発見した。
「かわいい」
一目惚れとはこのことだ。
「おじちゃん、わたしこの子に決めた!」
「そうかそうか。この子は大人しいが、とても従順でかわいいぞ」
おじさんが柴犬をひょいと持ち上げる。
本当にかわいい、つぶらな瞳がとってもキュート。
「では、助三郎のDNAを」
「ちょっと待って」
「なんだ」
「すけざぶろうってなに」
「この子の名前だ」
「渋すぎる」
「別にいいだろう、それにパペマルになれば新しい名前をつけていいんだぞ」
「あ、そうか!」
それなら全然OK!
わたしは早速助三郎さんのDNA採取に取り掛かった。
尻尾の方を軽く撫でると、既に抜けていたであろう毛がフワフワと舞い落ちた。
その毛をすくい、パペ瓶に入れて蓋をする。
パペ瓶の蓋にある差し込み口にアニモデラーの突起部分を差して、あとは「DNA採取」ボタンを押し、10秒待つだけ。
すぐに「完了」の表示が出て、わたしは最初のパペマルを手に入れることができた!
「よし!出てきなさい!」
アニモデラーの背面についているレンズを、物などが何も無い空間に向けて「召喚」ボタンをプッシュ。
シュピンッ
と音がすると、あっという間に柴犬が現れた。
「やったー!」
喜ぶわたし。
そして突然自分と同じ個体が目の前に現れ、ビビりまくっている助三郎。『きゃん』
「おめでとう。それで、この柴犬の名前はどうするんだね?」
「シバちゃんにします!」
即答したわたしにゲンキおじちゃんはちょっと納得いかないような表情を浮かべたが、気にしない。
「シバちゃん、これからよろしくね」
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