4泊5日の修学旅行で、俺は学年一と呼び声高い美少女の裸を拝むことを決意した

いろは杏⛄️

第1編 4泊5日の修学旅行で、俺は学年一と呼び声高い美少女の裸を拝むことを決意した

修学旅行 出発前

第1話 修学旅行の野望

 修学旅行――それは学校生活において唯一、同級生と一緒に旅行することができる日々。

 それ即ち、普段学校でしか会わない女子たちと寝食を共にすることに他ならない。


 だからこそ、俺は心に決めたのだ。


 この修学旅行の間に、クラス一、いや学年一の美少女と呼び声高い――あの小鳥遊真夏たかなし まなつの裸を是が非でも拝んでみせると。


 そう決意したのは、1週間前の学年集会でのことだった。



     * * *



 ようやく秋が深まり、冬の気配がし始めた頃――俺の通う、神奈川県立円蔵えんぞう高等学校の2年生が体育館に集められた。そして、学年主任の田中先生が修学旅行の詳細を発表していく。


「えー、それでは皆さんお待ちかねの修学旅行について説明します。今年は関西方面、4泊5日の旅程となります」


 おお、と学年全体がざわめいた。俺も含めて、みんな楽しみにしていたからな。


「宿泊先ですが、1日目は京都の老舗温泉旅館『湯の花亭』、2日目は奈良の『若草山麓コテージ村』……」


 先生の説明を聞きながら、俺の胸は高鳴っていた。特に『温泉旅館』という単語が耳に入った瞬間、ピンとくるものがあった。

 温泉旅館ということは、当然大浴場がある。つまり――


「はい、それでは旅行のしおりを配布しますので、各クラスの旅行委員は取りに来てください」


 配られたしおりを受け取って、俺は急いでページをめくった。お目当ては当然、宿泊施設の詳細だ。

 そして見つけた。


『1日目宿泊先:湯の花亭 大浴場利用時間

 男湯:18:00-22:00、翌朝6:00-8:00

 女湯:18:00-22:00、翌朝6:00-8:00』


 俺の脳裏に、とんでもない妄想が浮かんだ。

 大浴場。女湯。そして――クラスの女子たちが裸で入浴している光景。

 特に、小鳥遊の……ベールに包まれた抜群の肢体が湧き立つ湯気の向こうに――


太一たいち、何ニヤニヤしてんだよ」


 隣に座っていた友達の声で、俺は現実に引き戻された。


「え? いや、何でもねぇよ」


「嘘つけ、絶対に変な妄想してただろ」


 ぐっ……バレてたか。

 でも仕方ない。これは男として――いや人間として当然の反応だろう。


 その日、放課後の教室で、俺は改めて小鳥遊を観察していた。

 小鳥遊真夏。女子にしては高い背丈に、腰まで届くストレートの茶髪。顔立ちは可愛い系と美人系の両方を兼ね備えていて、学年の男子で彼女に憧れていないやつなんていないだろう。


「ごめん、真夏ちゃん……明日の数学のプリント持ってる?」


「うん、あるよ。ちょっとコピー取ってくるね」


「ありがとう! さすが真夏ちゃん! 助かるよぉ」


 友達との会話を聞いているだけでも、彼女の人柄の良さが伝わってくる。美人で性格も良いなんて、まさに非の打ち所がない完璧な存在だ。


 でも、だからこそ思ったんだ。

 どうせ女子の裸を見るなら、一番いいのを見たいじゃないか。学年一の美少女の裸を一目見ることができたら、それこそ一生の思い出になる。


 俺は小鳥遊を見つめながら、その抜群のプロポーションに改めて感嘆した。

 細く長い、白磁器のような手足に、マスクをつけたら顔の大半が覆われてしまうのではないかと言うほどの小顔。そして、主張しすぎることはないが、確かな存在感を放つ双丘――あの制服の下には、一体どんな――


佐山さやまくん、お疲れ」


 突然声をかけられて、俺は慌てて振り返った。小鳥遊が微笑みながら俺を見ている。


「あ……お、おう、お疲れ!」


 直接話しかけられると、やっぱり緊張してしまう。普段は調子に乗っている俺でも、小鳥遊の前では借りてきた猫状態だ。


「修学旅行、楽しみだね」


「そ、そうだな」


「そういえば、佐山くんは関西方面は行ったことあるの?」


「ま、まぁ、親がそっちの出身だから、何回かはあるぜ」


 当たり障りのない会話を交わしながら、俺の心臓はバクバクと鳴っていた。

 美人と話すだけでこんなに緊張するなんて、我ながら情けない。でも、それが俺の現実だった。


「そっかぁ、実はわたしは初めてなんだよねぇ。関西、楽しもうね。それじゃあ、また明日――」


 そう言って去っていく小鳥遊の後ろ姿を見送りながら、俺の決意は更に固まった。

 絶対に、あの完璧な肢体を一目見てやる。男として、それくらいの野望があってもいいだろう。



     * * *



 そして今日――体育の時間の男子更衣室。

 いつものように着替えをしていると、案の定修学旅行の話題で盛り上がっていた。


「おい、旅館だぞ旅館!」


「女子と同じ宿に泊まるんだぜ」


「よっしゃ、夜中に女子の部屋に忍び込もうぜ」


「それは流石にマズいだろ」


 みんな興奮気味に話している。だがぬるい――俺の方がもっと興奮しているし、おそらく誰よりも楽しみにしているという自負がある。

 そんなくだらないことを考えていると――


「あれ? 佐山はどうしたよ?」


「たしかに。我らがクラスのエロ担当大臣ならいつもここぞとばかりに声を上げるだろ」


 クラスメイトが好き放題言い始める。間違ってはいないので否定できないのが悲しいところ。

 しかし、これは俺の修学旅行での誓いを公言するまたとない場じゃないか?

 そう思った時には口が勝手に動いていた。


「……まぁ、みんなが興奮するのも仕方ない。だが、俺は――この修学旅行で一段高みを目指そうと思っている」


「おっ、なんか語り始めたぞ」


「何が高みだ、童貞のくせに」


「そこぉ!!! 童貞は関係ないだろ!!」


 いつものように茶化してくるクラスメイトにツッコミを入れつつ、俺は右手の人差し指を天に掲げ、高らかに宣言した。


「俺はここに宣言する――修学旅行で女子の裸をこの目で拝むことを」


 みんなが「おおぉ!」と反応する。


「マジで?」


「さすが佐山! エロ担当大臣の名に恥じない公約だ」


「で、誰のを見るんだよ」


 ここまで言ったからには、もう後戻りはできない。俺は胸を張って宣言した。


「決まってるだろ。どうせ見るなら頂点を――学年一の美少女、小鳥遊だ!」


 更衣室が一瞬静まり返った。そして次の瞬間――


「うおおおお!」


「佐山やるじゃん!」


「目標高すぎだろ!」


 男子たちが一斉に拍手喝采した。中には口笛を吹く奴もいる。


「でも小鳥遊って、周りのやつらのガードが固そうだよな」


「そもそもどうやって見るんだよ」


「着替えのタイミング狙って部屋に突入とか?」


「取り巻きの女子に返り討ちに遭うだろ」


 みんな真剣に作戦を考え始めている。なんだこいつら、ノリノリじゃないか。


「とにかく、俺は絶対に小鳥遊の裸を見る。男としての意地にかけてもな」


 そう宣言した俺を、みんなが尊敬のまなざしで見ていた。

 まあ、実際にどうやって実行するかは全く考えていないんだけど。



     * * *



 放課後の掃除の時間、俺と小鳥遊が同じ掃除当番になった。


「佐山くん、机運ぶの手伝ってくれる?」


「お、おう、任せとけ」


 一緒に机を運びながら、俺は改めて小鳥遊の美しさを実感した。

 横顔も完璧だし、髪からはいい匂いがする。制服越しでも分かるスタイルの良さ。

 これが裸になったら、一体どんなに――


「佐山くん?」


「え?」


「ボーッとしてるみたいだけど、大丈夫?」


「わ、悪ぃ、悪ぃ」


 危ない危ない。変な妄想をしていることがバレるところだった。


「部活とかで忙しいんですか?」


「……まあ、そんなところ」


 嘘じゃない。一応、俺の所属しているサッカー部は冬の選手権予選の真っ最中で練習はハードだしな。


 掃除が終わって教室を出る時、俺は決意を新たにした。

 男として宣言した以上、後戻りはできない。でも、一体どうすれば小鳥遊の裸なんて見ることができるんだ?


 一人では絶対に無理だ。となると――


「そうだ、翔吾しょうごに相談してみよう」


 俺の悪友である二見翔吾ふたみ しょうごなら、きっと何かいいアイデアを出してくれるはずだ。

 あいつは頭がいいし、こういう悪知恵に関しては天才的だからな。


 あいつもクラスメイトのため、事の経緯は例の男子更衣室の一件で知っているだろう。

 相談はとりあえず明日しようと心に誓い、部活へと足進めるのだった。

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