第51話 おれたちの冒険はここから始まるぜ

 いきなり僕に絡んできた少年アルクは剣士。

 そして彼と同郷で、一緒に冒険者になるためにこの街に来たという二人の少女は、それぞれ狩人とヒーラーらしい。


「私はクーヴァ。残念ながらこいつとは幼馴染よ」

「あ、あたしはコレッタと言います……二人とは幼馴染なんです」


 クーヴァと名乗った少女は年齢の割に落ち着いていて、アルクとは正反対の印象だ。

 コレッタの方はさっきからずっとおどおどしていて、人見知りなのか全然目が合わない。


 聞けば、三人はつい先ほど冒険者登録を済ませ、これから初めてダンジョンに挑もうとしているところらしい。


「性格が三者三様すぎるけど、よくそれでパーティを組もうと思ったね?」

「こいつに熱心に誘われて、根負けしたのよ……」

「おれたちが組めば、きっと世界一のパーティになれると思ったからな!」

「はは……アルクくんは昔から口を開くたびにそればかりだから……」


 僕は訊いた。


「お父さんが冒険者だったんだって? もしかして有名な人なの?」

「全然そんなことないわ。せいぜいCランク止まりの中堅冒険者よ」

「おい、親父のことを悪く言うんじゃない! 確かにCランク止まりだったけど、それはパーティのバランスが悪かったからだ! 本当ならBランク、いや、Aランクにだって到達できたはずだ!」

「……と、当人は息子に言い聞かせてるのよ」


 だからパーティにもう一人、どうしても魔法使いを加入させたかったらしい。


「悪いけど、僕は明日にはこの街を出る予定なんだ。元々この街にはちょっと立ち寄るだけのつもりでさ」

「そこを何とか! 一日だけでもいいから、おれたちの冒険に付き合ってくれよ! 実はお前を見て、ビビビッて来たんだ! もしかしたらこんな出会いから始まって、未来でおれたちは掛け替えのない戦友同士になるかもしれない!」

「……ロマンチストでもあるのよ、こいつ」


 色々と諦めたようにクーヴァは溜息を吐いた。

 止めてくれる気はないらしい。


「うーん……そこまでいうなら……一日だけならいいよ」

「ほ、本当か!? やった! 恩に着る! おれたちの冒険はここから始まるぜ!」

「いや一日だけだからね?」


 幸い〈歩行補助〉のお陰で旅程をかなり短縮している。

 魔境に到着するのが一日くらい遅れたところで問題ないだろう。


 新しく覚えた魔法、〈道案内〉の効果も確かめてみたいしね。


「でも、何か忘れてるような……ダメだ、思い出せない。まぁ思い出せないってことは、大したことじゃないってことかな」


 そんなわけで、早速僕たちはダンジョンに潜ってみることにした。


 冒険者ギルドの中から、すぐ隣にある要塞のような建物に入ることができた。

 いくつか鉄格子の扉を越えた先にあったのは、随分と年季の入った建造物である。


「……遺跡?」

「このラモンの街のダンジョン『埋没遺跡』は、この街の地下にある古代遺跡なんだぜ!」


 こうした長い年月を経た人工物が、ダンジョン化するという例は少なくない。


 内部へと続く階段を下りていくと、荘厳な雰囲気の通路に出た。

 調査によると、この遺跡はかつて神殿だったという。


「外とは打って変わって随分ときれいね?」

「ほ、ほんとだね……てっきり外みたいに壊れてるかと思ったけど……」


 クーヴァのいう通り、風化によってボロボロだった外と違って、内部はあまり劣化が見られない。

 これは建物の内部だけがダンジョン化したことで、魔力による修復を受けた結果だろう。


「い、いよいよだぜ……ごくり」

「何よ、アルク。今さら緊張してるの?」

「ああっ? そんなわけないだろ!? こいつは武者震いだぜ! なにせ幼い頃から親父に鍛えられてきたからな! おれの力を見せてやる!」


 まだ魔物にも遭遇していないというのに、アルクは剣を抜いて構えた。


「あんまりずっと気を張ってると戦う前に疲れちゃうよ?」

「そういうお前は随分と落ち着いてるよな!? もしかしてダンジョンは初めてじゃないのか?」

「うん。先輩パーティに帯同して、何度かね」


 ソロで潜ったこともあるけど。


「そういえば今更だけど、あなたどの系統の魔法が得意なのよ? 魔法使いと一口で言っても、使える魔法によって戦い方が全然違ってくるものね。赤魔法なら火力専門だし、青魔法とか緑魔法なら攻撃力は劣るけどサポートもできる。黄魔法なら防御にも使える。さすがにないと思うけど、白魔法だったらコレッタと被っちゃうわ」

「言われてみたらそうだぜ!?」

「……熱心に勧誘したくせに、大事なことを忘れてるんだから」

「うぐっ……だ、だがおれの勘はこう言ってる! ラウルは火力役だと! つまり得意なのは赤魔法だ!」

「ううん、生活魔法だけど」

「「「生活魔法!?」」」


 三人の叫び声が同時に響いた。


「生活魔法って、それのどこが火力役だよ!?」

「いや、それはあんたが勝手に言ったんでしょうが。でも本当に生活魔法使いなの? だとしたら……ダンジョンじゃ何の役にも立たないんだけど」

「アルクくんの勘って……割といつもあてにならないですよね……」

「そうだね。確かに火力役にはなれないけど……でも、サポートなら任せて」


 そこで先ほどから発動していた〈注意報〉に反応があった。


「ほら、この先の別れ道から魔物が出てくるところだよ」

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