第15話 あくまで生活魔法ですけどね
「私はライルと違ってこの都市と無関係じゃないし、当然、復興に協力するわ。これでもオークくらいならソロで倒せる強さはあるのよ」
シルアも自ら協力を申し出て、オークの討伐チームが結成された。
僕とシルア、それにゼファルさんを含む計八人のチームで、僕らを除く五人は復興隊の中でも特に実力に定評のある精鋭ばかりだという。
「あまり数が多いと動きづらいからな。精鋭で固めてみたんだ。それに魔法攻撃ができるのはお前さんだけだから、バランスも考慮したぜ」
そもそも獣人には魔法を使える人が極端に少ない。
恐らく種族特性として、魔法よりも身体能力の方に才能が振り分けられているからだろう。
前衛ばかりの偏ったパーティになってしまうことも、なかなかオークの討伐が進まない原因でもあったそうだ。
「魔法攻撃と言っても、あくまで生活魔法ですけどね」
僕は念を押しておく。
すると精鋭の一人が不安そうにゼファルさんに訊いた。
「……なぁ、ゼファル、本当に大丈夫なのか? 生活魔法使いなんて、魔物相手には何の役にも立たないはずだろ?」
「確かにそう自称しているが、そんなはずはねぇ。彼の魔法を見れば分かる」
そうして僕たちは拠点を出発し、再びフェリオネアの街中へ。
「ライル、お前さんにはオークが仲間を呼んで増えてきたら、あの魔法で吹き飛ばしてほしいんだ。それで囲まれるのを防ぐことができるはず」
「それより普通に魔法でオークを焼いてもらった方が良いと思うわ」
ゼファルさんの作戦に、シルアが異を唱えた。
「まさかお前さん、赤魔法まで使えるのか!?」
「はは、緑魔法も赤魔法も使えませんよ。でも、生活魔法の〈火起こし〉なら使えます。一応、オークにどれだけ効くか試してみましょうか?」
そんなやり取りをしていると、早速とばかりにオークが現れた。
やはり四体一組のグループだ。
「やってみますね。〈火起こし〉」
あまり魔力を注ぎ過ぎると、周囲の建物にまで延焼しかねないので少し抑え気味にした。
「「「ブヒイイイイイッ!?」」」
四体のオークが火柱に包まれ、絶叫を轟かせる。
そのまま黒焦げになって全滅した。
「ほら、言った通りでしょ。この方が早いって」
「「「……は?」」」
勝ち誇るシルアに対して、ゼファルさんたちは呆然とその場に立ち尽くす。
「これが僕の生活魔法の〈火起こし〉です。見ての通りそこまで強くないですけど、オークくらいなら十分効きそうですね」
「いやいやいや、どこが生活魔法だ!? 普段の生活で、こんな大火力が必要になることあるか!?」
「はは、確かに日常生活で扱うにはちょっとだけ火力が強いかもしれませんけど、間違いなく生活魔法ですよ」
やっぱり獣人のゼファルさんたちは、シルアと同じで魔法にあまり詳しくないらしい。
「だ、だがこれほどの威力だ。そんなに何発も撃てはしないだろう?」
「そうですね。頑張っても二百発くらいが限界だと思います」
「二百発!? 二十発の間違いじゃないのか!?」
「いえ、生活魔法ですし、いくら多めに魔力を込めたからって、そんなに消費しないですよ」
幸い魔力量には自信があるしね。
なぜか肩をすくめながらシルアが言う。
「というわけだから、サポート要員じゃなくて完全に火力役なのよ」
「……間違いねぇな」
火力役じゃないと何度も言ってるのになぁ。
まぁでもオークが相手なら、今みたいに僕の〈火起こし〉で十分倒せることは分かったので、
「そこまで言うなら、火力役的な役割をやってみるよ」
「回りくどく表現しても火力役は火力役よ」
僕たちは街の奥へと進んだ。
すると先ほどの火柱を見たのか、続々とオークが姿を現す。
「〈火起こし〉」
「「「ブヒイイイイイッ!?」」」
「〈火起こし〉」
「「「ブヒイイイイイッ!?」」」
「〈火起こし〉」
「「「ブヒイイイイイッ!?」」」
「〈火起こし〉」
「「「ブヒイイイイイッ!?」」」
そのたびに僕は〈火起こし〉でオークを丸焦げにしていく。
「……俺たち何もしてねぇんだが」
「サポート要員が聞いて呆れるわよね。むしろ私たちこそサポート要員だわ。ライルに万一が無いよう、しっかり周囲を警戒していきましょう」
「そうだな。命を懸けてでも守らねぇと」
――〈修繕〉を習得しました。
――〈雨乞い〉を習得しました。
かなりの数のオークを倒したことで、何度か新しい魔法も覚えたようだ。
やがて五十体くらい倒した頃のことだった。
「……待って。オークが大量に近づいてくるわ。恐らくこっちを早急に排除すべき対象と見なして、総動員しているのかもしれないわね」
「っ……確かに、無数の気配が接近してきてやがる。しかも、逃げ道を防ぐように回り込むつもりだぜ。さすがにここはいったん引き返した方がよさそうだな」
感覚の鋭い獣人たちは索敵能力にも長けているみたいだ。
僕には全然分からないのに。
すぐに踵を返し、元来た道を戻ることに。
だけど統率されたオークの群れは、そう簡単には逃走を許してくれなかった。
「まずい、向こうもこっちの動きに気づいてやがる!」
「両側から挟み込んでくるつもりだわ」
「そうなったらさすがに分が悪い! だがこのままじゃ間に合わねぇ!」
「〈歩行補助〉」
僕は全員に〈歩行補助〉を使う。
歩行というか、すでに駆け足で移動していたけど、それでも魔法の効果があった。
「っ!? な、なんか急に速く走れるようになったぜ!? これなら逃げ切れるかもしれねぇぞ!」
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