第13話普通の少女桜子、学園長室に(無理矢理)行かされる。

私は今、走っている。

でも、いっつも登校する時に走ってるじゃねえか!と言う意見はやめてほしいんだけど。

いや、走らされているが正しいか。

私、別に走りたくて走ってるわけじゃないし。

なんで、走っているんだろ。そうぼんやりと考えて、ため息が出てしまう。

話は、10分前にさかのぼる。

「おはようございますですわー!」

今日もきたか。アキヒメ。最近、毎日くるな。嫌そうな顔を作ってるのに効果なしか、、、最強のバカなのか?あ、バカって言っちゃった。黙っとこ。

「あ、アキヒメ、おっはー」

アキヒメは、一瞬、黙ったあと、まじまじと私のことを見て、嬉しそうに言った。

「だいぶ、緊張がとけてきましたわね!それこそ、友達ということ!」

「今のは適当って言うんだよー。それと、友達じゃないから。」

「またまたー!恥ずかしがって!可愛いですわねーサクラコさんは!」

うざいので早めに話を変える。

「それで?要件はなに?」

私が聞くと、アキヒメは、いつもの満面の笑顔でそれはですね〜と言葉を続ける。

「二度目の、真剣勝負をしましょう!」

「ええ?この前、勝負したばっかじゃん。」

「でも、この前は、引き分けだったじゃないですか。」

そうなのだ。この前の試験の結果は、二人とも同じクラス。同じランク。全く、同じだったのだ。

「勝負するのは、いいけど。なにで、勝負するの?」

「ふふふ。それは、ですね、、、」

ピーンポーンパーンポーン⤴︎

その時、学校の放送のチャイムがなった。

[あー、1年特別クラスのサクラコくんは、同じく、特別クラスのベニ、シンク、アカネと、一緒に、学園長室までくるように。ちゃんと、くるのじゃよ?]

ピーンポーンパーンポーン⤵︎

え?なんで、私が学園長室まで呼ばれるの?私は普通に過ごしてるだけなのに。なにもしてないよ!

「ちょうどいいタイミングですわ!て、いっても、サクラコさんは、、、」

よし、サボろう!

「行く気は、ないですよね。しょうがない。」

ん?ん?なにが、しょうがないんだ?

「サモニング!妖精!マーメイド!」

げ!妖精を召喚しやがった。いやな、予感しかしない。

「どしたのん?アキヒメちゃん。私に誤用かしらん?」

「マーメイド。お願いがあるのですわ。あの、サクラコさんに、学園長室まで、無理矢理行かせる歌を聞かせてあげてくださいですわ。」

「オッケーなのん!よし、いくわん!」

その瞬間、私は、その歌に体をとられた。

「いってらっしゃいですわ!」

アキヒメが手を振っているのを横目に私は走り出していた。

回想終わり。

アキヒメめぇ!変なことしやがって!

私は、アキヒメの思惑通り、マーメイドの、歌の呪文に惑わされて、自分の魔法も使って、全速力で学園長室に向かってるところです。

体の自由がきかないんだよね。

ていうか、学校広すぎなんだけど?!

かれこれ、10分くらい走ってるんだけど。まだ、学園長室につかない。この広大な校庭はやっぱり、訓練があるからだろうか。

ちゃんと、訓練になってるよ、、、

あ、あれなに?

しばらく、走っていると、目の前に一つの家が出てきた。

和風の古民家みたいな家。周りには日本庭園があり、とても綺麗だ。

なんで、こんなところにこんな、家が?

家の前に立ち、周りを見渡すと何もない。

これが、学園長室?かな?探すと表札があった。表札には学園長家と書かれてある。

ここか。

呼び鈴を鳴らすと、奥から「入っていいのじゃよ〜!」という声がする。

扉を開けると、中は外の和という風貌からは想像もつかない、ピンク、ぬいぐるみ、ピンク、ぬいぐるみ、ピンク!

ピンクとぬいぐるみでうめつくされた家だった。

唖然とする。固まってしまった。だって、だって、、、

「か、かわいー!」

私は思わず叫んでしまった。

ぬいぐるみも、部屋の内装も全部全部、かわいい。ゆめかわって感じ。

「桜子、こういうのが好きなんだな。意外だ。」

「目がハートになってるの〜」

「かわいいですね。」

どこからか、声がする。見渡すと、ぬいぐるみが飾られている棚の上に見覚えのある姿があった。

「あれ、これ、猫の姿の三人のぬいぐるみだ。」

「桜子さん、やっときましたか。タンポポ!早く、術を解いてください!」

すると、奥から小さな、子供がてちてちとやってきた。

「しょうがないのぉ。ドールドール!」

ボンッ

タンポポと呼ばれた、子供はそう叫ぶと棚に飾ってあった、ベニ、シンク、アカネが金縛りが解けたみたいに、ぬいぐるみの姿から人間になった。

「いきなり、ぬいぐるみにするとは、いい度胸じゃねえか。タンポポ。」

うわ、ベニが怒ってるよ。でもこれ、側から見るとヤンキーがちっちゃい子を脅してる図だな。

「だって、お前らすぐ、どっか行きそうになるんだもん。」

うるうると涙目で訴えるタンポポちゃんは、とてもかわいい。が、三人はうえーと微塵もかわいいと思ってなさそう。

「もう、年いってんのに、もん、とか、かわいくないんだよ!タンポポ学園長!」

え?この子供が学園長?!私より全然年下に見えますけど?

「とりあえず、わしの部屋に入るのじゃ。」

学園長、私のことわかるんだ!すごい。さすが学園長!

ゆめかわなろうかを進むとこれまたゆめかわな部屋に通された。

「あ、ミソラ先生。」

部屋に一歩入るとひんやりとした冷気が私の体をなでた。

私の言葉に先生は、小さくお辞儀をする。

先生って、体から冷気を出してるのかな?これは、感覚じゃない気がしてきた。

学園長は、自分の体の2倍はある、いすによじ登り机に並べてあったキャンディーを舐めながら話し始めた。

「突然なんじゃがサクラコくん。今日、ここに呼び出した理由は、アキヒメから聞いておるかの?」

「いいえ、私は無理矢理ここに来させられただけで、なにも聞いていません。」

サボろうとしたことは言わないでおこっと。

「そうか、そうか、うん、、、そう、か?」

ん?どした?

「アキヒメが無理矢理するなんて、そんなわけないじゃろう!」

あー。これは、、、

「アキヒメは、天使なんじゃ。産まれた時からそりゃもう、可愛くての!奇跡みたいな子なんじゃ!それが、無理矢理って、、、おい!どうなっとんじゃ!」

「はいはいはい。どーどー。落ち着きましょうか。今の学園長は、ただの老害です。」

よくぞ、言ってくれた!ミソラ先生!さすがです!

でも、学園長の姿と老害って言う言葉は一番かけ離れてるけどね。

「孫バカは、いいから、なんで、ここに私たちを集めたのかいうのー!」

「そうです!朝の貴重な時間を割いて、わざわざきたんですから!はよ!はよ!」

アカネが、キャラ崩壊してるー!タンポポ学園長と、どんだけ仲良いんだ?

「そう、焦らんでも。ミソラ。」パンパン

学園長が手を鳴らすと部屋の電気が消え、ミソラ先生がガラガラとホワイトボードを持ってきた。

「一ヶ月後に魔法祭という行事があります。この行事は、魔戦士育成学園の3大行事だと言われています。サクラコさんにはこの魔法祭に出てもらいます。」

「いや、4大、、、5大行事じゃなかったかのぅ?」

「まぁ、そんなことは、どうでもいいんです。」

仮にもこの学園のトップと教師が忘れちゃダメだろ、、、って、、、

「いやいやいや、、、魔法祭!?それ、ほんとに出なきゃいけないんですか?」

「まぁ、強制じゃないんですけどね。たぶん、学園に通っている全員がでますよ。」

そうか、、、それじゃあ、出ないほうが普通じゃないか。うーん。でもなぁ。魔法祭、、、うーん。

「魔法祭は、地球で言う体育祭のことです。クラスで二人一組になってもらって、そのチームごとに競ってもらいます。」

いや、まぁ、それなら、、、

「悩んでおるようじゃな。ちなみに、サクラコくんには、この魔法祭で優勝をめざしてもらうがの。」

え?は?ゑ?どゆこと?

「いやー!実はアキヒメに「サクラコさんを本気で優勝させるようにやる気を出させてくださいませ!」と言われておってな。」

孫バカ!いや、出る気一気になくなったわ!普通じゃないのは、いやだね!

「えー!しょうがないのぅ。そんな、嫌そうな雰囲気出されたらなぁ。優勝者には、なんでも叶えることを約束しようと思っとったのにな。」

「でます。優勝します。」

「おおー。そうかそうか。頑張るが良いのじゃ。」

やべぇ。思わず、オッケーしちゃった。だって、あんなこといわれたらねぇ。まぁ、言ったからにはやるけど。頑張るか。

「じゃあ、サクラコくんは、もう帰っていいからの。」

「あれ?三人は?」

「三人は違う用事があるのでのぅ。」

「わかった。じゃ、帰ります。じゃね。また、後で。」

三人に軽く挨拶を済ませて、私は学園長室を後にした。

「失礼しました。」

てくてくとゆめかわなろうかを進み、家を出る。

果てしなく続く道をみて、私はため息をつく。

「これ、また、帰るのかぁ。」


「それで、話ってなんだ?」

ベニは桜子が帰った後、学園長タンポポに尋ねた。

「私たちにさっきの会話を聞かせたと言うことは、さくちゃんの魔法祭に関係することなのね。」

シンクもいつもの語尾をつけずに真剣な表情で聞いた。

「僕たちにできることならなんでもしますよ。」

覚悟を決めたように言うアカネ。

タンポポが手をパンッと叩くと窓やドアに厳重なロックがかかる。ドアの外にはぬいぐるみが目を光らせている。

「実は、お前らが倒した、ブラックがな、完全に復活した。」

その瞬間、真剣だった、三人の目に一瞬動揺が浮かんだ。が、すぐに引き締まった。

「そうか。それじゃあ、俺たち、赤色魔戦士の出番ってわけか。」

「「「ストッ「まぁ、まて。落ち着け。」

変身しようとした、三人をタンポポは、とめる。

「わしたち、虹組があやつを倒して、もう、70年も経つんじゃのう。」

「やめてください。僕たちは赤色魔戦士です。」

アカネが嫌そうな顔でそう答える。

「若くして魔法戦士になったお主らも、もう12歳か。いや、地球の年では120歳と言った方がいいかの。」

タンポポは、感慨深く遠くを見て、後ろを向く。顔が見えないが、なんとなく、見たくないような気がした。そのままのテンションでタンポポが続ける。

「70年の間にあやつは、力を取り戻し、ブラックホールという、組織を作り出し、まさかの息子までいると言う。跡取りというやつじゃな。」

冗談っぽく言っているが、真実なのだろう。こういう時、タンポポは、冗談を言う人ではない。そう、三人は思っている。

「あやつらも勢力を増やしている。いま、突撃するのは愚策じゃ。」

くるっとこちらを向くタンポポは、学園長の顔に戻っている。

「私たちは何をすればいいの?」

「三人にはサクラコくんとこの学園の生徒を守ってほしいのじゃ。」

「あやつらは、こちらの情報をつかんでおる。赤色魔戦士に新メンバーが入るというのも、もう知られておるかもしれん。サクラコくんが狙われるとしたら、学園が開く魔法祭じゃ。」

「桜子が、狙われる?そんなの、俺が許すはずないだろ。」

「なんとしてでも守ります。」

「私たちにまかせるの〜!さくちゃんのことも、学園のみんなのことも私たち赤色魔戦士が守ってみせるの!」

桜子とは、違う決意。魔法祭にそれぞれの決意を固めて、四人は進んでいくのだった。

魔法祭で、あんなことが起こるとも知らずに。























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