第9話普通の少女桜子、能力が開花する。

三人が、それぞれ試験を突破しているころ。私たちはまだ、この状況を打破するすべを話し合っていた。

「まずは、それぞれの固有魔法を確認しましょうか。」

アキヒメが、そう言って、みんなに、確認をとろうとするが、私にはひとつの疑問が浮かぶ。

「固有魔法ってなに?」

みんなが、「え?知らないの?」という目でこちらを見てくるが、知らないものは知らないのだ。そもそも、私の地球では、魔法なんてなかったし。

「そうですわね。サクラコさんは地球出身でしたっけ。知らないのも当然ですけど、ベニ様たちは、教えてくれなかったのですか?」

「うん。そんな、単語全然聞かなかったね。」

「まぁ、そういうのはあんまり、教えてくれそうにないですものね。あの三人は。」

脳裏に三人のイェイという笑顔が浮かぶ。はぁー。とため息をつきたくなるが、ついたら、シオンが泣きそうになるのでつかない。

「固有魔法っちゅーのは、自分一人にしか持ってない、世界で1つだけの魔法のことや。自分自身が成長すると、その能力も、一緒に成長する。一心同体の魔法やな。」

「へーそんなものがあるんだ。」

「私の魔法!バルーンです。」

そういうと、パンッと手を合わせて、ひらく。

すると、まだ膨らんでない、風船がでてきた。その、風船にぷーっと息を吹き込むとどんどん大きくなっていく、風船。

「私の魔法、バルーンは、中に入ったら絶対にわれない、バリアになるし、水風船にすれば、爆発するし、飛ぶこともできる、です。」

すごっ!バルーン有能!さすがだな。こんな、試験ちょちょいのちょい、なんじゃ、、、

「わたくしの能力は、召喚ですわ!」

「召喚?」

「霊、精霊、妖精、魔獣、魔動物、魔植物、全部召喚できますわ!」

えぇー!アキヒメって、実はすごかったんだ。ただの、アホかと、、、

「ただ、召喚できる数が1匹しか、召喚できませんけど、、、」

いや、でも、すごい。ただの、バカじゃなかったんだ。

「さっきから、失礼なことを考えてませんこと?」

「いいや?褒めてるよ。」

とっさにすっとぼける。私は表情が変わんないから、わかんないだろ。

「うちは、フラワーアンブレラって、いうねん。」

その手には、ツタがからんでいる、傘があった。

開くと、ツタについていたつぼみが花になり、フラワーアンブレラという名前の通りの姿になった。

「この、傘はアイビーと同じで、飛ぶこともできるんや。雨を降らせたり、ツタをつかって攻撃したりできるし、あとは閉じたら、剣としても、使うことができるんよ。」

これまた、すごい。さすがだなぁ!この学校に入学できるだけあるね。

みんな、強いや。ほんと、なんで、私入学できたんだろ。

私の能力は、わかんないし。まぁ、魔法なんて何にもない世界で育ったんだ。そりゃ、そうだよねー。

「シオンはどうですの?」

「僕は、、、言いたくない。」

「あら。そうなのですか。じゃあ、いいですわ。言わなくて。」

すると、シオンは、びっくりしたような顔をした。

「言わなくていいの?」

「はい。そこは個人の自由ですわ。強要はしませんわ。ていうか、そんなに、そうそういうことしようとする人に見えますの?!」

「この、高貴な顔がいけないのかしら?」と真剣に言う、アキヒメに思わず、笑いがでる。

「大丈夫だよ。私なんて、なにが自分の能力なのかすら、わかってないからね!」

「そこ、自信満々に言うことじゃないですわ!」

「そうだね!じゃあ、俺も言わなくていいかな!」

うわっ!びっくりした。急に話に入ってこないでよ!

「びっ、、、くりしましたわ!スミさんも、言いたくないんですの?」

「うん。ちょっとね。そのかわり、、、」

そう言うと、スミは終わりの見えない壁に近づいて、、、

バゴーン!

と、壁に穴を開けた。

パラパラと壁の破片が散っている。

「俺、こういうのは、できるんだ!」

分厚い壁を開けちゃった、、、のぞくとびっくりするほど、分厚い壁だった。

「いやぁ、、、あまりにも、終わりが見えないから、、開けちゃった♡」

開けちゃったって、、、そんな、いい笑顔で、、、

まぁ、でも、終わりが見えなかったのはほんとだし。逆によかったかも。このままじゃ、試験、終わらないしね。

うん。そう思うことにしよう。

「開けちゃいましたか。それじゃあ仕方ないですね。行きましょうか。」

あれ?シオンはあんまり驚いてない。

「シオンさんは、あまり驚きませんわね。」 

「ああ。僕の地元の人はみんな、強行突破が、普通だったから、、、」

シオンが、遠くを見つめる。

シオン、、、大変だったね。と、ポンと肩を叩くと、「なんですか!」と、涙目になる、シオン。

「おーい!三人ともー!いーくーでー!」

あ、ラピスが呼んでる。もう、あんなところに。

「待ってくださいですわー!」

追いつくと、壁がまた現れる。その壁を触りながら調べてるスミが、突然すくっと立つと、、、

「うん。これは、壊しても大丈夫な、壁だね。」

バゴーン!

また、壊した!一種の芸みたいだな。壊し芸。

すると、遠く遠くまで続く、ひとつの一本道が、あらわれた。

「進んでみます、です。多分、大丈夫、です。」

アイビーの言葉にみんなが、進もうとした時、、、

[あーあー、、、サクラコくんたちのいるチーム!お前ら、遅いのぉ!もう、他のチーム、試験、終わっちまったよ!そんな、お主らにプレゼントじゃ。存分に楽しむといい。]

すると、空から巨大な玉が降ってきた。その玉は、地上に近づいていくたびに、どんどん大きくなっていく。

ひゅー

「大丈夫じゃ、なかった、です!逃げる、です!」

「わー!やばいねー!」

笑ってる、場合じゃない!スミ!逃げろー!

落ちてきた玉は一本道の幅にすっぽりとはいって、こちらに向かってゴロゴロと転がってきた。

「きゃー、です。」

「やばいんちゃう?!あれ、追いつかれたらペシャンちゃう?!」

「わたくしがなんとか、しますわ!」

そう言うと、アキヒメは走りながら、召喚の呪文を唱えた。

「サモニング!いでよ!美しき魂よ!わたくしのもとに舞い降りるがい、、、あー!めんどいですわ!サモニング!」

なんか、ごちゃごちゃ言ってると思ったら、めんどくさかったんだ、、、

ていうか、召喚っていうだけで、いいんだろ。ほんとは。

「ほんとは全部、言ったほうがかっこいいんですけれど、、、めんどくさくなっちゃいましたわ!」

やっぱり!

すると、モクモクとアキヒメの手から煙がたってくる。

「妖精!ジャック.フロスト!」

そう叫び、手を閉じ、開けると、そこには小さな小人みたいな妖精がいた。

「ちっちゃいねぇ。」

「うるさいですわ!わたくしの力ではこの姿が限界なのです!でも、その分、威力に全振りしていますですわ!」

「お前、相変わらず、ですわ、ですわ、うっせぇのな。」

うわ。喋った!

「別にいいじゃないですか!それよりも、あの玉!凍らせちゃってください!」

「む。そんなに焦らず、焦らず。そんなこと、言う人にはもう、能力使わせてあげなーい。」

「すみませんですわ!」

「でーすーわー?」

「すみませんでした!」

小人に怒られてる。なんか、変な光景だな。妖精の姿が子供だから余計に。

「よろしい!じゃ、いきますか。」

妖精、ジャック.フロストは走ってるアキヒメに前を向けと指示して前を向いた、アキヒメの手で思いっきり息を吸い込んだ。

フー!

すると、みるみるあの玉は氷をまとった玉になって、、、そのまま、転がってきた。

「アキヒメ!このあほ!ただの鉄団子が氷団子になっただけやないか!」

「ひぇぇぇぇぇぇぇぇ!ごーめーんーなーさーいですわ〜!」

アキヒメが危険を察知してこちらに猛スピードで逃げてくる。

と、その時、アキヒメがなにかにつまづいて転んだ。

「早く逃げろ!」

見ると、足を捻って動けないみたいだ。

アキヒメの目の前に玉が迫った時、、、私は、、、

走り出していた。

想像しろ、想像しろ。私の体の周りにジェットエンジンを付けているイメージ。

ダダダダダダ!

「アキヒメ!」

飛び出した私は完全にノープランだった。考えるより先に体が動いたんだ。でも、玉の前まで来た時、頭の中にひとつのイメージが、あった。

パワーを腕にまとわせる。ふぅ。正拳突きのイメージ。よし!

私の髪が桜色に染まった。

「桜撃拳!」

バゴォォォォン!

「お見事⭐︎」

思わず、出した、桜撃拳。あっという間の出来事だった。あっという間に私は玉を殴り壊していた。

そんな、私を見て、スミは相変わらずの笑顔で笑っていた。

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