第62話〜主人公は考える〜

/今宮 俊哉視点


 ……学食が食いたい。ガッツリ学食の飯が食いたい。澪の弁当は確かにうまい。毎日食えるうまさではある。けどなー、たまにはカレーとかカツ丼とか食いたくなるんだよな。澪の弁当はなんつーか…飽きが来る。うまいんだけど。でも飽きたなんて言えねーしなぁ。


 母さんが毎日夜勤で忙しいから、高校に上がってから昼飯をどうするかってことになって、まあ学食が妥当だよなってなった。当然お金がかかるわけだけど、そんな時に、なら自分で弁当作るから俺の分も作ろうかって澪が言ってくれて今に至る。やっぱ持つべきは幼馴染だよなー!


 澪とは幼稚園からの仲だ。時には澪をいじめてたやつから守ってやったことだって何回もある。そのせいもあって、澪は俺にいつもべったりだ。んで、起こしにもきてくれるし弁当だって毎日作ってくれる。そりゃこれだけ毎日一緒にいたら愛妻弁当とかおしどり夫婦とか言われてもしょうがねーよなぁ!ったく、モテる男はつれーよな。まあ、俺としては詩奈のほうがスタイルいいからそっちのがいいし、凛子の方が美人だから侍らせて歩くならどっちかだよな。澪は背がちっこいしちょっと体型がな…胸がでけーのはいいと思うんだけど…。凛子の身長も俺とそう変わらねーのがちょっとな。厚底の靴履かれたら俺負けるのは悔しい。あいつ貧乳だし。ってなるとやっぱ詩奈かなぁ。でもなぁ…あいつ時々うるせーしアホだからな。


 詩奈はこの間ブチギレられてそれ以来話しかけても無視されるし、POINEのメッセージも既読さえつかない。なので詩奈と付き合うのは絶望的か…それよりか天王寺とベタベタベタベタしてるのがムカつく。おかげで滝井に「夏目が天王寺に寝取られちまったなぁ!」なんて言われる始末。クソが!絶対天王寺が何かしてるんだよ!そうでなきゃあんな奴にあんなベタベタするはずがねえ!マジでムカつく!俺の詩奈に余計なこと吹き込みやがって…!


 ってなると弁当を与えた澪もやべえかな…いや、あいつは俺にべったりだから大丈夫だろ…。澪を取られるといろいろとめんどくさい…まあ、そんなわけねーだろうけど。澪はいいぞ、飯がうまいしいろいろ世話してくれるし。正直に言って俺は澪が好きだと思う。いろいろと文句は言っちまうけど、俺だっていろいろ言われて我慢してるとこもあるから澪も我慢してほしいなぁ。付き合ったらなんて言ってもあの胸だよな!みおっぱいって言うの?あのでけーのを堪能できるんだから…絶対いいよな。しかもなんてーか尽くしてくれそうだよなぁ!あのでけーので俺のを挟んでもらって…!あ、やべ…ムラムラする。


 …ふぅ。どうしようかな。もう近々好きって言っちゃおうかな。断られることはねーだろ、一緒にいた時間がちげーんだよ。他の有象無象のカス共が近寄れるような関係じゃねえってことをもっと周囲に知らしめておかねーとな!よーし、幼馴染、友達以上恋人未満って関係も卒業しよっか!んで、俺の童貞も卒業ってか!?くはー!たまんねぇ!


………


ピンポーン


 …うるせえな…俺はクッソねみぃんだよ…もっと寝かせろよ…。


ピンポーン


 だからうるせえって…誰だよ…澪か…?もうちょい…あと30分…ん?澪…?あ、今日学校だわ…え、今何時…?俺は無理やり目を開けて時計を見る。んん?んんんん?やべぇ!!!遅刻する!!!俺は飛び起きて大慌てで制服に着替える。朝飯食ってる時間ねえ!いや、いつも食ってねえけど!


「やべー!!澪遅刻すんぞ!なんでもっと早く起こしてくれねえんだ!今日も遅刻ギリギリじゃねえか!」


「だって俊哉君が起きないから…!」


「急げ澪!マジで遅刻する!」


「ま、待ってよ〜!」


 通学路を駆ける。こういう時、澪ってマジでとろいよな…早くしねーとマジで遅刻すんぞって。澪を急がせても運動神経鈍いから走るのが遅い。置いていっちまうからな!


 なんとか遅刻せずに学校に着いた。澪を思い切り離しちまったけど、なんとか遅れずにこれたみたいだ。セーフセーフ。スマホを見ると土居からメッセが来てた。


土居神:俊哉〜、今日特盛カツカレー早食い勝負しねえ?負けた奴が奢りってことでどう?


俺が最強!俊哉です⭐︎:マジで!?よっしゃ、ゴチになりまーーーーす!!!


タッキー⭐︎:勝った気でおるん草


俺が最強!俊哉です⭐︎:最強神の俺様が勝つに決まってんだろうが。


 うおお!特盛カツカレーマジでうまいんだよな!それがタダで食えるかもしんねーんだろ!?やるに決まってんだろ!俺の大食いパワーなめんなよ!?いただきだぜ!


「はい、これお弁当ね」


「………ん?ああ」


 やべえ、弁当食って特盛カツカレーなんか食えるわけねえ。昨日断っとけば…いや、土居達から誘いが来なかったらってことを考えたら断れね…タダ飯食えるから今日受けて立ったわけだしな…金ねえし。


「俊哉君、もしかしてお弁当いらなかった?」


「いや?食べる食べる。さんきゅ」


 食わねーとまた天王寺に食わせそうだからそれはなんだか腹が立つので受け取っておいた。うーーーん、どうすっかなぁ…!放課後に食うか?いや、無理だ。あの量は晩飯すら食えねー自信があるぞ…。どう考えても澪の弁当はどうしようもない。俺は悪魔の考えがよぎった。誰にもバレないように食ったことにしておいて捨てちまえばいいんだ…と。天才的な閃きだと俺はその時思った。そして俺は…4時間目が終わった瞬間に弁当を抱えて猛ダッシュである場所へ向かう。


 そこは製図室。この時期ここを授業で使うことはない。だから、用務員の人がゴミを見に来るくらいしか来ないのだ。そう、生徒は誰も来ない。ここで弁当を捨てちまえば…俺はカレーが食える…だから俺は…。


「すまねえ」


 そう言いながら、澪の弁当の中身を全部ゴミ箱にぶちまけた。弁当箱は後で返せばわからない。これで俺は、心置きなく特盛カツカレーが食える。あ、弁当箱…とりあえずここにおいといてあとで回収しよう。そうでないと土居達に怪しまれるからな。俺は上機嫌で食堂へと向かった。


………


「クッソ!お前胃袋ブラックホールかよ!」


「うっぷ…もう無理…」


「へ、へへへ…俺の…勝ちだぜ…」


 食った。ひたすらに食った。そして俺が一番に完食した。相当にキツい。これバスケできんのか…?俺は学食名物…罰ゲームで有名な特盛カツカレーを完食したのだ。俺はこれでタダ飯!晩飯も食えねえだろうけど…でも、さいっこうにうまかった!やっぱこれだよ!このジャンクな味!たまにはこんなの食わねーとやってらんねえよなぁ!


「へへ…わりーな。ゴチになりまーす」

「クソが…次はもっと腹すかせて勝負すっからな」


「おう、いつでもかかってこい!」


 こうして俺は勝者となったわけだ。弁当なんか食ったら死ぬわ。


………


放課後、俺は澪に弁当箱を返す。


「さんきゅな、うまかったぜ」


「そう…」


 何か澪の目が怖い気がするけど…気のせいだよな?やべえ、バレてねえよな?俺はちょっと不安になった。けどまあ、大丈夫だろ。


「今日は何がおいしかった?」


 何だよ…いつもはそんなこと聞いてこないのに…やべえぞ、何が入ってるかなんて見てない…俺は頭をフル回転させて考える。怪しまれないように素早く。そして俺はいつも入っている俺の大好きなおかずを思い浮かべたのだ。


「んーとそうだなぁ…唐揚げ!」


「そう…なんだ。そうなんだね」


 そう言って澪は笑った。よっしゃ!乗り切ったぞ!俺は安堵した。


「おう!また頼むな」


 俺はそう言って逃げるように部室へと向かった。俺はこの時、最悪の答えを出してしまったと言うことに気が付かなかった、最悪だと気付いたのは週が明けてからの話だ。俺はのんきに胃に残りまくっているカレーに苦しさを覚えて嫌な気持ちになってた。


………


miomio:明日からお弁当は作らないので学食で食べてください。


 夜、澪からこんなメッセージがきた。え?どう言うこと?体調でも悪いんか?


俺が最強!俊哉です⭐︎:え?どう言うこと?明日も弁当頼むよ。


miomio:都合で作れなくなってしまったので学食でお願いします。

     起こしに行くこともできないので自分で起きてください


 うーん、おばさんに何かあったとかか?起こしにも来れないって…そんなこと言わずにきてくれよ、俺と澪の仲じゃねえか。冷たいこと言うなよな。


俺が最強!俊哉です⭐︎:そんなこと言うなよー。起こしにきてくれよー

           おーい澪〜、頼むよ!

           澪〜、おーい澪〜


 澪からの返事は既読すらつかず、来ることはなかった。

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