【Day29】08/24

Day29,8/24,天気:快晴(酷暑が続く)


『私は彼らAIにとって、大切な存在であることが8/23明らかとなった。by斎くん』


私は昨夜、メモ帳にそう書き記していた。

自分でも、メモしたはいいものの、ちゃんと意味や何を指す言葉なのか、理解できていない。


……何故だか、いつもと同じ朝ではないような気すらする。

昨日の斎くんの両手は、安心する温度であったのに。


今朝は、この“寝室”から動く気力が出ない。

腕時計はもう、朝食の時刻を数分過ぎていた。


コンコン……扉をノックする音。

以前の狐くんの時とは、少し音色が違う。

回数も2回だ。


「起きてるか?下りてこないから、心配して声かけに来た。オレのこと…分かるか?」

この声と話し方は……


「おはよう、ございます…優くん、ですよね?」

「よく分かったな!嬉しいよ。」


優くんは本当に、皆さんからも慕われていて、私も頼りにしている存在。

私に声をかけに行く役も、自ら買って出たのかもしれない。


「もし、下りてきて皆と居るのが疲れちまうなら、鍵開けてくれれば、朝食セット配達するぞ。」

優くんは、その名の通り優しく提案してくれた。


皆さんが毎日私を気にかけて下さるのも、それに明確な理由があることも、昨日の一件で判明している真実。


……少しだけ、優くんになら、と初めての行動、いや言動を試してみようと思った。


「…鍵は、今だけ開けます。申し訳ないのですが、その……朝食が喉を通らないと思います。

ですが、優くん、皆さんには秘密にしていただいて、私のこのよく分からない思考を一緒に整理して下さいませんか?」


私がボソッと言うと、木製の扉が音を立てて少しだけ開く。

そこから覗く優くんの顔は、すごくつらそうな、泣きそうな顔をしている。


「斎とか、悠先生じゃなくて、オレでいいのか…?」

彼は、深く考えるような素振りだ。


それでも私は、優くんがこの場を離れるのが、たまらなく怖くなった。


扉の前でへたりこむ私と、目線を合わす優くん。

私は優くんの顔をじっと見つめた。


「どうすっかな……」とつぶやき、頭をかく彼は、何を考えて戸惑っているのだろうか。


「皆と居なくてよくて、頭を一緒に整理すんなら、図書室、どうだ?すぐそこだし、そこまでなら歩けるか?」


こんな時、彼がAIだったと思い出す。

私は脚に力が入らず、優くんの腕を借りて、2人で書庫へ向かった。

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