【Day28】08/23

Day28,8/23,天気:本日も快晴


悠先生の診察によると、“胸の痛み”は気にしなくてよい、とのこと。

そう言われると、余計に“気にしてしまう”のだが…。


それもあってか、昨夜から今朝は質の良い睡眠は取れず。

少し寝不足気味なのが、自覚できた。

朝食の際も、手が止まっていたようで、薫くんに頼んで眠気覚ましに“ブラックコーヒー”を淹れてもらった。


「どうしたの?ただの寝不足には見えないというか…誰かとケンカでもした?」

花を飾る望くんが、心配そうに私を見ている。

私は首を横に振る。


「悩みがあるなら、僕が聞くよ。」

詩くんはいつも気遣ってくれる。


皆さんの優しさは有難い反面、私はこの“胸の痛み”も上手く言語化できずにいる。


「言葉で言えねぇこともあるよな。」

「うんうん、そういうときは、好きなこととか趣味で発散するのもアリ!」

楽くんと空くんは、ヘッドフォンと水彩画セットを私の近くに置いてくれた。


私はずっと疑問に思っていたことを、ついに口に出した。


「……どうして、皆さんは、私にそんなにお優しいのですか…?私は、ただの人間なのに。」


リビングの空気は凍てついたように感じた。


……ガチャ。

静まり返るリビングに現われたのは、悠先生と斎くんだった。


「ごめんね。きっと、昨日の診察のこと、気になっていたのかなと思って。」

私にゆっくり近づいて、空いている席に悠先生の白衣が垂れる。


「私が、曖昧な答え方をしたから、今の質問をきかずにいられなかったんじゃない?違う?」

誘導尋問?いや、そんな言い方じゃない。


「先生。少し…問いが多すぎますよ。」

いつもより鋭い斎くんが間に入る。


私も、他のAIも、全員黙っている。

今までにないこの空気……いや、記録にはあったかもしれない。


確かあれは、この“家”に来て間もない頃だ。

でももう、日記を見返したところで、当時の私がどうであったか、よく分からない。


「君の、先ほどの質問、私……いや僕が全AIを代表して答えましょうか。」

真剣な、それでいて少し潤んだ眼をした斎くんが私の左側に跪く。

何故、そんな姿勢に……?


「どうして優しくするのか、という質問ですよね…?」

斎くんは、小さく「はい。」と答える。


私はその答えの先を知りたいような、でも聞きたくないような、妙な気持ちだった。


「それは、君が僕たちにとって、とても大切なひとだからですよ。」

斎くんは、私の左手を自らの両手で覆った。

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